地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター
(東京都 府中市)
山岸 敬幸 院長
最終更新日:2024/10/30


子どものための医療の実践をめざす
府中市武蔵台において、東京都における小児医療の拠点としての診療に取り組んでいるのが、「東京都立小児総合医療センター」だ。カラフルな内装に加え、キツネやタヌキ、フクロウをはじめとするさまざまな動物や大きな木のオブジェ、壁に取りつけられたおもちゃなど、子どもが楽しく通院や入院ができるような工夫がされた院内が印象的な同院。子どものための病院として、心と体を総合的に、成長とともに歩む医療の実践をめざしている。そんな同センターの院長に2024年4月に就任し、「なんでもご相談に乗りますので、困ったら当院に駆け込んできてください」と優しい笑顔と口調で話す山岸敬幸院長に、同院の特徴や抱負などを聞いた。(取材日2024年8月16日)
最初にこちらの病院を紹介していただけますか?

当院は、2010年に東京都立清瀬小児病院と東京都立八王子小児病院、東京都立梅ヶ丘病院の精神科、府中病院小児科が移転統合して開設されました。以来、「東京都における小児医療の拠点」「こころとからだを総合した医療の提供」「子ども中心の医療の提供」「子どもの成長とともに歩む医療の提供」「社会とともに創る医療の提供」の5つを理念に運営しています。私は、2024年4月より院長を務めています。当院は、2年前に地方独立行政法人化したこともあり、初めて院長を公募することになりました。私は、これまで専ら大学病院で勤務してきましたが、廣部誠一前病院長からもお声かけいただき、縁あって院長を務めさせていただくことになりました。
特徴はどのようなところでしょうか?

東京都における小児医療の拠点として、24時間365日体制で救急搬送もすべて断らない医療をめざしています。他院では診ることができないような重症な患者さんも基本的にはすべて受け入れるという、小児医療の最後の砦のような役割を果たすことができる病院です。当院では、日本では珍しい小児専門ERを展開し、あらゆる重症度の急な病気やケガに24時間365日対応しています。加えて、専門の診療科を豊富にそろえ、夜中でもオンコール体制になっていますので、緊急で手術が必要という場合にも対応しています。ただ、軽症の患者さんが多くなりすぎると重症の患者さんを受け入れられないというジレンマも起こる可能性がありますので、近隣の医療機関ともしっかりと役割分担しながら、連携していくことが重要だと考えています。
特に力を入れていきたいと考えていることはありますか?

小児の集中治療を中心に展開する高度な外科手術を含めた専門診療です。小児に特化した30以上の専門部門がそろい、いつでも患者さんを受け入れ、体と心を総合的に診療する体制が整っています。さらに力を入れていきたいのは、医療的ケア児のサポートです。当院にはNICU(新生児集中治療室)もあり、患者さんをしっかり治療できるよう努めていますが、どうしてもある一定の割合で人工呼吸器などをつけながら在宅で療養しなければならない患者さんもいます。そのような患者さんも普段は地域の在宅医療のクリニックに診ていただき、必要なときには当院で受け入れる連携も深めています。もう一つ、医療的ケア児のサポートで大切なのはレスパイトを視野に入れた入院です。医療的ケア児を一定期間当院で預かり、ケアや検査などの間で親御さんには休んだり、ほかのお子さんのケアに時間を使っていただいたりということも、もっと推進していきたいです。
ほかに特徴的な取り組みはありますか?

当院は、国から「小児がん拠点病院」に指定されており、その診療に力を入れて取り組んでいます。その中でがんの治療はもちろんですが、がん患者さんのQOLの向上に取り組んでいます。特に、学校生活や大人になってからの妊孕性の維持など、生活面のサポートに力を入れています。その一つとして、今年から東京都立高校に在学中の患者さんへの入院時学習支援制度を試行し始めました。入院中に、通学できなくても、オンライン授業などにより、都立高校の課程を続けることができる制度です。また、病院内には東京都立武蔵台学園の分教室が併設されており、入院中の小学生・中学生の患者さんの通学が可能になっています。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

当院の機能をこれからもしっかりと発揮していくのと同時に、雰囲気としては職員・スタッフが家族のように明るく、笑顔で、楽しく、やりがいを持って子どもたちとそのご家族のために頑張っていけるような環境を維持していきたいです。100%は難しいかもしれませんし、日々何かしら問題も起こるかもしれませんが、一つ一つを丁寧に解決していくことが、私に求められている役割と考えています。そして、病気のお子さんやそのご家族には、病気に負けずに頑張ってほしい。体や心のこと、ほかにもいろいろな悩みがあると思います。また、親御さんはお子さんに愛情を持って接している中で、どうしても自分で何とかしないと、と思ってしまいますが、あまり煮詰まらないようにして、当院の理念にもある、社会で子どもを育てていくという気持ちも忘れずにいてほしいと思います。患者さん・ご家族の皆さまに安心して受診いただける病院として、頑張ってまいります。

山岸 敬幸 院長
1989年慶應義塾大学卒業。1993年同大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学医学部小児科助手、米国テキサス大学小児科博士研究員、同大学インストラクター、慶應義塾大学医学部小児科専任講師、准教授、教授、同大学予防医療センター特任教授を経て2024年より現職。日本小児科学会小児科専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。専門は小児科一般、小児循環器、臨床遺伝。慶應義塾大学医学部客員教授。医学博士。