埼玉医科大学総合医療センター
(埼玉県 川越市)
別宮 好文 病院長
最終更新日:2023/11/01
幅広い分野を網羅し多種多様な疾患に対応
埼玉県内のみならず、東京都北部など関東一円から患者が訪れる「埼玉医科大学総合医療センター」。多種多様な疾患に対応可能な“スーパー総合病院(super general hospital)”になることを目標に、救命救急、周産期、小児救急、臓器移植、ロボット支援下手術、災害医療、海外への災害時派遣などあらゆる分野で先端的かつ重要な役割を担ってきた。新型コロナウイルス感染症の流行時には、妊婦や小児の重症患者も受け入れて存在感を示し、広く住民の心のよりどころとなるよう努めてきた。内科と外科を統合した外来のセンター化や、高度救命救急医療に加えて二次救急の拡充にも意欲を見せるなど、さらにスピードを緩めずに進化中だ。そんな豊富な実績の上に、発展を続けていく同病院の病院長に2022年に就任した別宮好文病院長に話を聞いた。(取材日2023年6月16日)
幅広い分野を網羅されていますね。
当センターは1985年に開設。40周年が見えてきました。“スーパー総合病院(super general hospital)”となることを目標に、幅広い分野を網羅する診療科を擁し、高度救命救急センターの指定を受け、埼玉県の基幹災害拠点病院になっています。また総合周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院の指定も受けているほか、すでに稼働していたドクターヘリの基地病院でもあります。また小児救命救急センターも有しており、現在ではがん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、精神疾患の厚生労働省が掲げる5疾病、救急医療、周産期医療、小児救急、災害医療、へき地医療の5事業にも対応し、災害派遣においても、近年はトルコ地震時に看護師を派遣しました。東日本大震災では発生初日に医師や看護師、他の医療職で構成するDMAT(災害派遣医療チーム)を被災地に派遣するなど、有事に備え職員を派遣する体制をとっています。
幅広い医療にも取り組まれる中でも臓器移植の実績が豊富ですね。
当院では肝臓、膵臓と腎臓の移植を行い、これまでコロナ禍で一時減ったものの毎年移植の実績があります。臓器提供件数はここ数年大幅に伸び、今年は倍近い伸び率になっています。しかし残念なことに急増したため提供を受ける能力が限界に達してきています。移植チームが日々熱意をもって取り組んでいますが、こればかりは当院だけでなく国や臓器移植ネットワークなども早急に対応していただく必要があります。また当院は臓器の提供施設でもあります。実は当初、当院には小児からの臓器提供に消極的な空気がありましたが、あるご両親の熱い思いが大きな転換点となりました。すべての職員が心を打たれ院内の空気が変わりましたね。その一方で小児の終末期医療も行っています。地域と連携し患者さんやご家族の思いに丁寧に寄りそっています。
ロボット支援下手術も多く行っていらっしゃいます。
当院には2台のロボット支援下手術の設備がありますがフル稼働しています。泌尿器科の前立腺がんへの適用から始めましたが、現在では膀胱、胃、直腸、肺、子宮といった、消化器、呼吸器、婦人科の領域にも広がっています。ロボット支援下手術の最大の利点は骨盤の奥のような狭い部分で細かい操作ができるということ。人間の手では不可能な手首の360度回転のような動作が容易に可能です。これまで手術に適さずホルモン療法や放射線療法を行っていた症例についても手術が可能になりましたし、入院期間も大幅に短縮でき患者さんへの負担を減らすことができるようになりました。特に高齢の患者さんは入院期間が長いと筋力が落ち、術後のリハビリも大変でしたので良いと思いますね。
現在進行中の診療センター化などについて教えてください。
当院は幅広い疾患の患者さんが来ても診察・治療ができる総合病院です。さらにより良い医療を実現するために複数の診療科とスタッフが協力するさまざまな診療センター化を図ってきました。病棟においても内科と外科がより一層連携して診療にあたれるよう、例えば消化器内科と外科をワンフロアにまとめるなど、次はいよいよ外来のセンター化に着手します。これは外来用の新棟を建設し、順次移設・工事を繰り返す数年計画のものです。病院開設以来、外来患者数は倍増しており、診察スペースも、待合も事務も入退院支援もすべてスペースが足りません。センター化でより一層効率的に、また臨機応変に対応できるようになり、より良い医療を提供できるようになると思います。ぜひご期待ください。また周産期医療においてはハイリスクだけでなく幅広いお産をお任せいただく体制を考えていこうと思っております。
地域の方々へのメッセージをお願いします。
医療は日進月歩。当院も常に進化を続け、地域の皆さまのお役に立っていきたいと考えています。そのためには、病院自体の進化はもちろんですが、職員のモチベーションや教育体制も常に向上をめざしています。例えば三ツ星レポートという良い行動の報告を促し年間表彰をする制度を設けました。また研修医と指導する医師がお互いに評価をし合う制度も構築、評価にあっては多方面からの意見を大切にし公平な評価となるよう配慮するなど、それぞれの立場で懸命に仕事に向き合う姿を評価することで仕事へのモチベーションアップを図っています。最近は初期研修医の志望者数が増え、研修後に当院に残ってくれる学生が増えており、うれしく思っております。今後も教育機関としての側面も充実させていく所存です。当院のミッション「Your Happiness Is Our Happiness(あなたの幸せが私たちの幸せです)」の実践にまい進していきます。
別宮 好文 病院長
1981年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院講師などを経て、埼玉医科大学教授就任。肝胆膵外科グループに所属し、臓器移植の前線でも活躍し続けている。2022年9月埼玉医科大学総合医療センターの病院長に就任。趣味は水泳で、週に2回泳ぎに行くことが目標。何も考えず無心で泳ぐことでリフレッシュできるという。いつか海外の自然豊かな環境でのんびり過ごすのが夢。