社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷あびこ病院
(千葉県 我孫子市)
高橋 一昭 副理事長
最終更新日:2026/09/11


救急から在宅まで切れ目なく地域を支える
眼下に手賀沼が広がり、天気の良い日には遠く富士山も望める「名戸ヶ谷あびこ病院」。2012年の開設以来、我孫子市の二次救急医療を担い、「救急は断らない」という方針のもと、24時間365日体制で患者を受け入れてきた。脳神経外科や小児科、整形外科など地域で需要の高い診療に力を注ぐ一方、専門的な治療が必要な患者は法人内外の医療機関へ速やかにつないでいる。法人内では、急性期、回復期、地域包括ケア、在宅医療などの機能分化が進み、患者の状態や治療段階に応じて切れ目なく支える体制を整備。地域の診療所が担う訪問診療を入院機能で支えるなど、地域全体で患者を支える「我孫子モデル」の構築もめざしている。外科医師として長年救急医療に携わり、救急医療の標準化や救急隊、若手医師の教育にも尽力してきた高橋一昭副理事長に、同院の診療や連携の特徴、今後の展望について聞いた。(取材日2026年7月27日)
病院の成り立ちと救急医療への取り組みについて教えてください。

当院は「救急は断らない」を掲げ、我孫子市の二次救急医療を担う病院として2012年に開設されました。当時、市内では受け入れ先が足りず、救急患者さんを市外へ搬送するケースも少なくありませんでした。そこで、法人を同じくする名戸ヶ谷病院で培ったノウハウを生かして体制を整え、24時間365日対応しています。救急では、まず受け入れて重症度を判断し、初期処置を行うことが重要です。専門治療が必要なら適切な医療機関へ速やかにつなぎます。地域の病院が役割を分担し、初期対応から専門治療までつなぐネットワークが、救える命を増やすと考えています。新型コロナウイルス感染症に対して、感染区域を分けて救急診療を継続しました。ワクチン接種では、市に集団接種を働きかけ、当院が医師や看護師を手配。地域の開業医にも協力を求め、大学や企業の職域接種にも対応しました。院内だけでなく、地域全体を見て役割を果たす大切さを感じました。
救急医療の標準化や人材育成にも力を注いでいるそうですね。

救急医療では、限られた時間と情報から患者さんの状態を見極め、必要な処置へつなげる力が求められます。そのため、誰が対応しても一定水準の初期評価と処置ができるよう、考え方や手順を共有することが欠かせません。私は外科医師として救急医療に携わりながら、その標準化と人材育成に取り組んできました。中でも小児救急は、一般の医師や救急科の医師がまず状態を評価し、専門的な診療が必要な場合は小児科や高次医療機関へ速やかにつなぐ役割分担が重要です。当院では毎年研修医を受け入れ、2年間で小児を含む救急患者さんへの初期対応と、専門領域へつなぐ判断力を養っています。さらに、救急隊とも基本的な認識や患者情報を共有し、搬送後の診療を迅速に始められる連携を重視しています。こうした教育と連携を地域に広げ、限られた専門医療を必要な患者さんへしっかりと届けることが、救急医療を持続させる力になると考えています。
救急医療のほかに診療面で力を入れている分野を教えてください。

当院は、脳神経外科、小児科、整形外科など、地域で需要の高い診療分野に力を注いでいます。高齢化に伴い増加が見込まれる脳血管障害に対しては、脳卒中などを迅速に診断し、必要な治療へつなげられる体制を整えてきました。循環器疾患を含め、当院では対応できない専門治療が必要な場合も、まず患者さんを受け入れて状態を見極め、初期対応を行います。その上で、自動車で約10分の場所にある名戸ヶ谷病院など、連携する医療機関へ早急に搬送できることも強みです。一方、整形外科では、高齢者の骨折をはじめとする救急搬送を受け入れ、手術にも対応しています。高齢の患者さんは、骨折そのものの治療に加え、術後のリハビリテーションや退院後の生活まで見据えた支援が欠かせません。急性期治療を終えた後は、法人内の回復期リハビリテーション病棟などへ円滑につなぎ、早期の機能回復と生活復帰を切れ目なく支えています。
法人内や地域の医療機関との連携について教えてください。

法人内には名戸ヶ谷病院、名戸ヶ谷記念病院、当院があり、急性期、回復期リハビリテーション、地域包括ケア、訪問診療、介護・福祉などに連携して対応しています。重要なのは、病床を各病院だけのものとせず、法人、さらに地域全体の医療資源として活用することです。急性期治療を終えた患者さんを回復期や地域包括ケアへ円滑につなぎ、空いた病床で次の救急患者さんを受け入れられるよう、法人を横断して調整します。地域の診療所とは、日常の健康管理や慢性疾患の診療をお願いし、検査や手術、入院、救急対応が必要な患者さんを当院が受け入れ、状態が落ち着けば紹介元へお返しするという役割分担を進めています。在宅療養中の急変時にはバックベッドとして受け入れ、訪問診療を行う先生方と患者さん、ご家族の安心を支えます。こうした循環を築き、地域全体で支える「我孫子モデル」を発展させたいですね。
最後に、今後の展望をお願いいたします。

今後も全人的かつ患者さん本位の医療を基本に、救急・急性期医療を充実させ、発症前の予防から在宅、介護・福祉まで切れ目なくつなぐ体制づくりに取り組みます。中でも重視するのが「救命の連鎖」の最初の輪である予防です。健診や人間ドックの充実により、早期発見と医療費抑制につなげます。小児救急では、保護者に症状の見方や受診の目安、急変時の対応を伝えることも大切です。教室を開き必要な情報を届けることも予防医療の一つ。災害時には交通遮断による職員不足や医薬品・資材不足も想定されます。行政・医師会・医療機関が協議し、人員や物資を補充・分配する体制が不可欠です。病院間の連携、診療所との役割分担、在宅医療を支えるバックベッドを具体化し、限られた医療資源を地域で有効に活用したいですね。急性期から回復期、在宅、介護・福祉まで切れ目なく支え、助けられる患者さんを確実に助ける「我孫子モデル」の構築をめざします。

高橋 一昭 副理事長
1980年千葉大学医学部卒業後、同大学第一外科学教室入局。千葉県がんセンターなど千葉市内の病院で外科の研鑽を重ね、千葉大学で麻酔・救急部に所属する傍ら免疫学教室で腫瘍免疫学の研究にも携わる。1989年より名戸ヶ谷病院外科勤務。2013年より名戸ヶ谷あびこ病院院長。2017年より現職。日本外科学会外科専門医。日本救急医学会救急科専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/4万4000円(税込)~





