医療法人社団翠会 和光病院
(埼玉県 和光市)
関根 俊輔 病院長
最終更新日:2026/05/07


地域を支える「ケア」重視の認知症専門病院
2002年の開設当初から認知症を主軸に診療を続けてきた「和光病院」。認知症が疑われるごく初期の段階から、中等症、重度、エンドステージまで幅広く関わり、単に病気を治療するだけでなく、その人の暮らしや家族の思いまで視野に入れた「ケア」を大切にしてきた。外来では物忘れへの不安を抱える人の相談に丁寧に応じ、多職種が関わる「よろず相談」やメモリーワークを通じて早期から支援につなげている。入院では行動障害や介護負担の高まりといった切迫した状況にも向き合い、身体拘束に頼らず、日中の活動やリハビリを通じて生活のリズムを整えながら、その人らしい時間を支えている。患者本人はもちろん、家族や地域も含めて支える認知症専門病院としての役割、そして受け継がれてきた実践と今後の展望について、関根俊輔病院長に聞いた。(取材日2026年4月9日)
病院の特徴と地域での役割を教えてください。

当院は2002年4月の開設当初から認知症を主軸に診療を続けてきた認知症専門病院です。認知症が疑われる段階の軽症例から中等症、重度、エンドステージまで、あらゆる段階にわたって関わり、治療だけでなく、認知症によって生じる生活上の困難や、ご家族を含めた支援まで視野に入れ、「ケア」を重視していることが大きな特徴です。当院では、地域の中で認知症に悩む患者さんやご家族を支える医療機関でありたいという意識を強く持ち、日々診療にあたっています。現在は朝霞市、志木市、和光市など埼玉県南西部からの来院が中心ですが、東京都に近い立地から、板橋区、北区、練馬区のほか、世田谷区や大田区などもから紹介でつながるケースもあります。認知症に関する困り事を抱えたとき、「まず相談できる場」として地域から認識される存在であることを大切にしており、同法人内の関連医療機関とも連携しながら、必要な支援へつなげています。
外来診療と初期支援の特色はどんなところにありますか。

認知症のごく初期段階や「最近物忘れが気になる」「自分は認知症なのでは?」と不安を抱える方にも丁寧に対応しています。大切にしているのは、いきなり治療へ進むのではなく、まず本人やご家族の困り事や不安を聞き取り、その思いを少しでも軽くしながら今後の方向性を一緒に考えていくこと。その入り口となるのが「よろず相談」で、多職種のスタッフが関わり、診療につなぐべきか、地域包括支援センターなどの支援機関へ橋渡しすべきかを考えます。さらに軽症の方には、公認心理師や作業療法士らが関わる「メモリーワーク」も実施。通院しながら記憶を呼び起こすトレーニングに取り組むプログラムで、早い段階から安心して相談できる場になっていると思っています。「認知症かどうかを見極めたい」「どこに相談すればいいかわからない」といった迷いにも応えながら、必要な支援へ無理なくつないでいく外来です。
入院診療や、認知症のケアについての考え方を教えてください。

入院では中等症から重度の患者さんを受け入れることが多く、興奮が強い、行動障害が目立つ、自宅や施設でのケアが難しいといった切迫した状況で紹介されるケースも少なくありません。当院ではエンドオブライフケアの視点を持ち、その人に合った関わり方を探りながら、あらゆるステージで寄り添うケアを心がけています。日中はできるだけ活動的に過ごしていただけるよう作業療法やレクリエーションを通じて生活にリズムをつくり、好みや状態に応じてできるだけ丁寧に患者さんごとにプログラムを組み立てています。体操やパットゴルフなどの軽い運動も取り入れ、こうした関わりが楽しさだけでなく、安心感やスタッフとの信頼関係につながることで、その後の治療も進めやすくなります。身体拘束に頼らず、言葉がけや観察を工夫しながら行動障害に向き合い、生活の場の中で支える発想を積み重ねてきたことが、当院の認知症ケアを支える土台になっています。
ご家族支援とより良い療養環境づくりにも注力していますね。

認知症対応では、ご家族への支援も欠かせません。相談のきっかけはご家族の不安や限界感であることが多く、まずはその思いを受け止めることを大切にしています。話を聞くだけでも気持ちが落ち着くことがありますので、心理的な負担を軽くする意味でも多職種による家族ケアを重視しています。当院では入院中の面会が非常に多く、お一人の患者さんを囲んで複数のご家族が過ごされる場面が日常的に見られるのですが、そうした時間にスタッフが病状をご説明することで、ご家族の安心にもつながっていると感じています。また、病棟はスタッフステーションから全体を見渡しやすいレイアウトで、面会やリハビリに使える広いスペースを確保。死角が比較的少なく、転倒などのリスクにも目を配りやすい構造です。さらに、患者さんのわずかな変化をチームで共有し、介護職の気づきも医師へ直接伝わる風通しの良さが、日々のケアを支えています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

認知症で悩む患者さんやご家族の助けを求める声には、できる限り応えていくことが私たちの使命です。認知症専門病院として、今後も地域の相談の受け皿であり続けることが大切ですし、そのためには長年培ってきたノウハウを若い世代へ継承していくことも欠かせません。また、患者さんのそばで関わるスタッフ一人ひとりの意見や気づきを現場に反映できる仕組みも整えていけたら。高齢の患者さんが多いため身体合併症にも一定程度対応していますが、必要に応じて近隣の医療機関と連携しながら柔軟に支えていく姿勢も大切にしています。お伝えしたいのは「どうか一人で抱え込まないでほしい」ということです。真面目なご家族ほど限界まで頑張ってしまいがちです。病院でも行政でもよいので、まずは相談していただきたいと考えています。認知症は一人で抱えるものではなく、周囲と支えていくものです。当院もその一助でありたいと思っています。

関根 俊輔 病院長
2006年山口大学医学部卒業。救急や身体合併症にも対応する一般精神科病院で経験を重ねた後、2025年より和光病院病院長に就任。現在は認知症専門病院での診療に携わりながら、患者と家族を支える実践を深めている。「認知症は一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら支えていくもの」との思いで、地域に開かれた医療をめざし、若い医師への継承やチーム医療にも力を注いでいる。





