社会医療法人社団三思会 東名厚木病院
(神奈川県 厚木市)
北野 義和 院長
最終更新日:2022/08/19
救急とがん医療に注力、地域に安心を届ける
東名高速厚木インターから車で3分、1981年に開院した「東名厚木病院」は、「断らない医療」をスローガンに24時間365日コメディカルスタッフが常勤する地域医療支援病院だ。がん診療に力を入れ、神奈川県央地域では数少ない高精度放射線治療装置を活用し、放射線治療にも力を注ぐ。2022年4月、院長として就任した北野義和先生は循環器内科を専門とし、チーム医療を重要視。「他職種のスタッフが連携を取り、一丸となりサポートしていきたい」と力を込める。臨床研修指定病院として医師の後進育成にも注力しているほか、自身の専門分野だけでなく、急性期医療に興味と情熱を持つ医師やコメディカルスタッフが集まっているのも特徴だ。また、緩和ケア病棟の運営にも力を注ぎ、さまざまな疾患のある患者の心と体のつらさに対して専門的なケアを実践。各スタッフが患者や家族をそれぞれの立場から支えている。地域の急性期病院、地域医療支援病院としての役割を果たすために、さまざまな構想を抱く北野院長から、たっぷりと話を聞いた。(取材日2022年6月21日)
東名厚木病院は、この地域でどのような役割を担う病院ですか?
当院は一般病床200床、HCU8床、地域包括ケア病床60床、緩和ケア病床14床、計282床を有して地域の急性期医療を担っています。特に救急医療で地域に貢献することを、1981年の病院開院以来の使命としてきました。産婦人科、心臓血管外科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科領域以外の疾患なら、三次救急レベルの重症患者も断らずに受け入れています。24時間365日の救急対応は、当直やオンコール待機する医師やコメディカルスタッフの協力があるからこそ成り立ちます。病院全体で救急医療を支える意識が浸透していることと、急性期医療に興味を持つスタッフが集まっているのが特徴です。また、急性期の入院医療の特色を一つ挙げるなら、当院は経験豊富な摂食嚥下チームが、「早く食べられる状態に戻し、早く退院するためのお手伝いをする」活動に十数年前から取り組んでいます。治療だけではなく、あらゆる面で患者さんをチームで支えています。
力を入れていらっしゃる分野は何でしょうか?
現在は、がん治療に最も力を入れています。2017年に化学療法センターを開設、その時に高精度放射線治療装置を導入して放射線療法を開始し、今後は部門化も計画中です。放射線治療は多くの施設は外来でしか行っていませんが、当院では入院して受けることも可能にしています。高齢の患者さん、あるいは進行がんの患者さんで、通院での放射線治療が受けられないという方もいるので、その状態を考慮して入院対応を行っています。放射線治療でがんの痛みや症状の緩和を図ることは、残りの人生を楽しく送ることにもつながり、近年は地域の病院から放射線治療の紹介も増えています。今後も地域で完結できるがん治療をめざし、患者さんやご家族の通院の負担を減らすべく、厚木市内でさまざまな治療が受けられる体制を整えていきたいと考えています。
ほかに、機能を強化された分野はありますか?
がんの治療以外では、緩和ケア病棟の運営にも力を注いでいます。従来のイメージと違って、看取りをするだけの病棟ではなく、痛みや苦しさを緩和する目的のケアを受けて、できるだけ家に帰って充実した時を過ごしていただくための全室個室の病棟です。ご本人が望むなら、できる限りご自宅での看取りを支援し、実際その思いで、緩和ケアチームは活動しています。昨今では、悪性疾患の患者さんだけでなく、非悪性疾患の患者さんに対する緩和ケアも非常に盛んです。例えば、私は循環器内科が専門ですが、心臓の疾患にはどうしても緩和ケアが必要になってくるケースが見られます。このように、疾患を限定せず、心と体のつらさに対して専門的なケアを行っており、医師、看護師、薬剤師、薬剤師、ソーシャルワーカー、リハビリテーションスタッフ、担当ケアマネジャー、訪問看護師などが連携して、患者さんやご家族をそれぞれの立場からサポートしています。
注力されている診療についてお伺いします。
当院では、多くの乳がんの患者さんに治療を提供しています。乳がんは日本人女性がかかるがんの中で最も多く、ほかのがんと比較して若い年齢層の患者さんが多いのが特徴です。加えて、乳がんの治療は非常に複雑であり、手術のみで終わることはほとんどありません。放射線治療や、化学療法・分子標的治療薬・ホルモン療法といった薬物療法の組み合わせによる集学的治療を行います。また近年では、乳房全摘後に再建手術を希望される方も増えてきており、当院でも、乳腺外科と形成外科と連携して乳房再建手術に取り組んでいます。がんの治療と乳房再建を1回の手術で終えることが可能ですから、患者さんの負担をかなり軽減できるでしょう。患者さんの細かな要望にお応えしながら、ますます力を入れていきたい分野です。
今後の展望と、院長としての想いをお聞かせください。
当院は開院以来、一貫して救急医療を中心に地域医療に貢献してきました。日本医療機能評価機構による病院機能評価を受けているほか、神奈川県の地域医療支援病院でもあり、臨床研修指定病院として医師の後進育成にも力を入れるなど、さまざまな取り組みを通してこの地区の基幹病院としての役割を担っています。こうした活動を支えていくために、最も大切にしているのはチーム医療です。病院スタッフは家族みたいなもの。一家をまとめる大黒柱として、コミュニケーションを密にとりながら現場の声を反映し、多職種が助け合い信頼し合える環境づくりをさらに強化していきたいと思っています。また、地域の急性期病院、地域医療支援病院としての役割を果たすために、近隣の各医療機関と連携し、地域全体で患者さんを総合的にサポートしていくことをめざしています。
北野 義和 院長
1991年北里大学医学部卒業後、同大学病院循環器科入局。2010年同院に勤務、2022年院長に就任。日本循環器学会循環器専門医。心筋梗塞や狭心症、不整脈などのカテーテル治療全般に精通するエキスパート。患者一人ひとりに対し丁寧に耳を傾けることを心がける。診療室ではBGMを流すなど患者にリラックスしてもらえるよう趣向を凝らす。趣味は高校時代から続けているバンド活動。