社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス 海老名総合病院
(神奈川県 海老名市)
服部 智任 病院長
最終更新日:2024/11/19
50年後も地域に貢献できる病院をめざす
小田急小田原線や相鉄本線、JR相模線の海老名駅が最寄りの「海老名総合病院」は、地域に根差した急性期医療を提供する基幹病院。神奈川県の県央医療圏では貴重な存在だという救命救急センターでは、「その責任を果たすため救急科の人員や設備の充実を図り、『断らない救急医療』をめざしています」と服部智任病院長は言う。「2023年に完成した当院の西館は救急医療や高度医療に必要な設備を集約し、50年後の地域医療に向けて新たな一歩を踏み出しました」。脳卒中や心疾患には救急科と連携して24時間対応し、がん診療では低侵襲な治療で患者の早期回復をめざすだけでなく、治療を続けながら地域に暮らす患者のサポートも検討中だ。「コロナ禍を経て、より地域貢献の大切さを実感しました」と話す服部病院長は、今後は地域への情報発信や地域住民との触れ合いにも力を入れていく。「皆さんと力を合わせてもっと暮らしやすい地域へと進化させ、『ここに住んで良かった』と思っていただけるようにしたいですね」と、地域医療への想いを強める服部病院長に同院の特徴や今後の展望を聞いた。(取材日2024年9月17日)
この病院の特徴や地域での役割を教えてください。
地域の皆さんに専門的な医療を提供する急性期病院で、地域の医療機関から紹介いただいた患者さんを治療する地域医療支援病院の役割も担っています。479床すべてが急性期の治療に充てられ、ICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)、SCU(脳卒中集中治療室)も備えます。診療面では、当院創業者の想い「救急こそが医療の原点である」に基づき「断らない救急医療」をめざしてきました。2017年に神奈川県の承認を受け救命救急センターを設置し、重篤・重症な救急の患者さんを中心に24時間365日対応で治療にあたっています。海老名市と周辺の自治体を含む神奈川県の県央医療圏で当院の救命救急センターは貴重な存在で、その責任を果たすべく人員を増員、設備も拡充しました。また仕事・生活との両立を図るがん診療、脳卒中や心筋梗塞などの血管内治療や外科治療にも特徴があり、ロボット支援手術は2023年から泌尿器科・外科で行っています。
救急医療の取り組みについて詳しく伺えますか?
当院の救命救急センターは本館から2023年に完成した西館1階に移り、同じく1階に移設した救急専用病床は20床から30床へと拡充しました。2024年には救急科専従の医師を15人に増やし、うち日本救急医学会救急科専門医12人、集中治療を専門とする医師4人と専門性も高まっています。さらに集中治療の領域も救急科が担い、救急専用病床とICUを管理することで、多発外傷や心肺停止など重篤で全身管理が必要な患者さんを一体的に治療できる体制を整えました。医師、看護師、救急救命士が専門のチームとして救急と集中治療にあたることができます。以前は救急の初期治療を各診療科の医師にサポートを仰ぐこともありましたが、近年は救急科が初期治療すべてに対応し、必要なときに各科と協力することで、患者さんにより適切な医療を提供でき、救急科と各科の医師・スタッフがそれぞれの専門性を十分に発揮できる診療体制になったと思います。
がん診療、脳卒中や心筋梗塞の治療ではどんな強みがありますか?
がんの治療は外科手術と抗がん剤治療が可能で、胃がんや大腸がん、肝臓胆道膵臓領域の消化器がんをはじめ、乳がん、肺がん、泌尿器がんなど広く対応します。いずれも患者さんの体への負担軽減を図る低侵襲治療を心がけ、内視鏡治療や腹腔鏡下手術も多く行うほか、泌尿器科では前立腺がんを対象にロボット支援手術がスタートしています。また、地域に根差した急性期病院として、がんの治療を続けながら仕事や家庭との両立を図る患者さんを積極的にサポートする方法も検討中です。脳卒中は脳神経外科、心筋梗塞のような心疾患に循環器内科と心臓血管外科がチームとなった心臓血管センターが治療を行います。いずれも救急科と連携して24時間対応が可能で、脳神経外科では薬による血栓溶解やカテーテルでの血管内治療、循環器内科は心臓カテーテル治療の他、不整脈のアブレーション治療にも力を入れています。心臓血管外科は低侵襲な心臓外科手術を得意とします。
2023年完成の西館のコンセプトや特徴を教えてください。
本館、東館に次ぐ西館は地上6階建てで、1階は高度検査室および救急医療用の外来と病室で、2階には手術室11室、血管造影室3室、ICU、HCU、SCUがあり、救急医療や高度医療がスムーズに行えるよう配置されています。手術室は高度な機能を備えた医療機器を導入するため広く造り、一部は血管造影と手術が同時にできるハイブリット手術室に変更可能です。3〜5階は当院の病室を集約したフロア。病室は広く、以前は8人だった定員を4人にして、個室も増やすなど快適性の向上をめざしました。私は新棟建設に際し「50年後も建物は残る。病院の50年後を考えていますか?」とのアドバイスを参考に、院内で当院の将来構想を明確にした上で、それに合った設計を専門家に依頼しました。これにより患者さんの増加が見込まれる救急医療は施設を1階に集約して対応を図り、病室は急性期以外の医療に対応できる可変性を備えるなど工夫されています。
地域との連携など今後の展望をお聞かせください。
地域の医療機関とは患者サポートセンターを窓口に連携を図り、空きベッドの状況をリアルタイムに把握するなどスムーズな対応を心がけています。また、当院でも多くの患者さんを診てきたコロナ禍を経て、地域貢献の大切さを改めて感じ、地域の方への情報発信にも力を入れたいと考えるようになりました。「食事と健康」「嚥下について」といった医療関連の情報提供のほか、例えばお祭りのようなイベントで親しみを持っていただけるといいと考えています。そして一緒にもっと暮らしやすい地域へと進化させ、「この地域に住んで良かった」と感じていただけるのが理想です。加えて職員の人間力アップをめざした人材教育も重視し、2024年に設けた人材教育センターを中心に職員研修を一層充実させる予定です。各自が自主的にスキルアップに取り組んだり、院内の課題解決に目を向けたりする中で、医療の質を高め、それぞれの人生も豊かにしてほしいと考えています。
服部 智任 病院長
1985年滋賀医科大学卒業。日本医科大学付属病院に入局、同大学泌尿器科学講座助手。1992年より米国ブリガム・アンド・ウィメンズ病院留学。帰国後に北村山公立病院泌尿器科医長、日本医科大学泌尿器科学講座講師、2000年より仁愛会(現・社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス)。海老名メディカルプラザ院長、海老名総合病院副院長を経て、2015年より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。医学博士。