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国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院

(千葉県 柏市)

土井 俊彦 病院長

最終更新日:2024/08/23

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治療と研究・開発でがん医療を進化させる

つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅を最寄りとし、公共・民間・大学連携で医療・ヘルスケア分野の進展や新産業創造の拠点をめざすエリアに位置する「国立がん研究センター東病院」。国のがん医療および研究の基幹病院として1992年に開設され、千葉県を中心に埼玉県、茨城県、東京都のほか、全国から患者が集まっている。同院では多様な診療科によるがんの専門的な治療に加え、「新たながん医療の創出と提供をめざした研究・開発も重要な使命です」と土井俊彦病院長は言う。「近年の治療薬開発には多様な分野の知識・技術の集約が必要なため、当院は公・民・学の連携を図る柏の葉キャンパスの利点を生かし、病院完結型から外部と密接に連携した取り組みにも力を入れています」。また、外科分野では多くのロボット支援手術を行うだけでなく、ベンチャー企業と協力して新たな手術支援ロボットも開発。遠隔地の病院と連携して診断・手術の支援も提供している。「患者さんの生活全体をサポートする体制で、治療中もその方らしい生活を送っていただきたい」と話す土井病院長に同院の特徴、がん医療の将来像について聞いた。(取材日2024年7月17日)

がん医療でこの病院が持つ役割などを教えてください。

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1992年に開設された当院は国のがん医療および研究の基幹病院であり、専門的な治療はもちろん、新たながん医療の創出と提供をめざして研究・開発を行い、それらを速やかに患者さんへ提供できるよう努めています。がんゲノム医療の治験や診療などを担うがんゲノム医療中核拠点病院、革新的医薬品・医療機器の開発に必要な研究・治験を推進する臨床研究中核病院などを担い、当病院併設の先端医療開発センターと連携した開発拠点の役割も担っています。近年は海外で開発された新薬が日本への導入が進まない「ドラッグ・ラグ」への対策として、それらを国内で製造できるような開発体制の整備が急務となっています。そのためには多様な分野の知識・技術の集約が必要で、当院では近くにある東京大学や千葉大学の柏キャンパス、産業技術総合研究所のほか、企業、自治体とも協力しながら新たながん治療薬の開発に取り組んでいます。

今後はどういったがん医療が期待できるのでしょうか?

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標準治療を終えたなど対象となる患者さんは保険適用でがん遺伝子パネル検査が受けられますが、検査で変異した遺伝子がわかっても適切な治療薬があるのはその1割程度といわれます。そうした場合により多くの患者さんが治療を受けられるように、強力な薬を特定の分子の異常だけに効くように調整した「武装化抗体」を用いる方法の開発が進んでいます。薬に合う患者さんを治療するだけでなく、患者さんのがんのタイプに合った薬を作って治療する、そうした次世代のがん医療がここ10年ほどで実現するのではと考えています。このほか企業と協力し、当院に隣接する東京大学の研究所が持つ宇宙観測技術を応用されている一般的なCTの約10分の1の放射線量でも高解像度の画像が得られる次世代フォトンカウンティングCTの実用化も進めています。また、当院で開発した血液検査でがんをより早期に発見するリキッドバイオプシーでの診断法は保険適用となっています。

外科的な治療ではどのような特徴がありますか?

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ロボット支援手術は消化器、泌尿器、呼吸器、頭頸部、婦人科などが対応し、現在は3台体制で手術を行っています。ただ、これらはすべて海外メーカーの製品であるため、当院では当院発のベンチャー企業とともに国産の腹腔鏡手術支援ロボットの開発に取り組み、2023年2月には医療機器として承認を受けることができました。将来、こうしたロボットが腫瘍のある部分にピンポイントで注射するなど内科分野で活用できるようになれば、より精密ながん治療が可能になるでしょう。また、当院は山形県の鶴岡市立荘内病院と遠隔医療連携を結び、同院の医師からオンラインでがん治療の相談を受け、手術支援などを行っていますが、遠隔医療連携はがん治療の質の担保に加え、同院にいる若手医師の教育効果にも期待が持てます。連携先を増やし、手術件数の多い地域の病院で当院の知識・技術が学べる環境が整っていけば、若手医師の定着率向上にもつながると思います。

患者の就労や食事提案などもサポートされるそうですね。

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当院のがん医療では、サポーティブケアセンター・がん相談支援センターが中心となり、医師、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカー、社会保険労務士などがチームを組み、多方面から患者さんの生活全体をサポートします。さらに同センターは早期の段階からの緩和ケア・サポートに目を向け緩和ケアにも携わり、病気や治療の痛みに限らず、働けないことも社会的苦痛と捉えて対応。勤務先の担当者と連係して患者さんの仕事と治療の両立を図り、必要なときはご本人から就転職などの相談も受けています。このほか、当院の栄養管理室では患者さんが治療中も食事を楽しめ、しっかり栄養が取れるよう、がんと食事に関する情報や、「吐き気」「味覚変化」など治療中によくある症状に応じたレシピを探せるサイト「CHEER!(チアー)」を開設しているのも特徴です。このサイトへの反響は大きく、当院が発信するがんの情報に対する期待の高さと受け止めています。

そのほか病院としての特徴などをご紹介ください。

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企業との協業によるユニークな取り組み例として、当院敷地内にがん患者さんをサポートするホテルを開設しています。病院と密接に連携したホテルが隣にあることで、当院での治験や治療のために遠方から来られる方の利便性・快適性が向上し、ホテルに24時間常駐する専任のケアスタッフにより急な体調の悪化などの場合も病院との連絡はスムーズです。手術前や退院後に宿泊して体を休める、放射線治療の通院期間に宿泊して治療以外の時間はホテル内でゆっくり過ごす、などの利用も可能です。また、病院、大学、企業が集積した柏の葉キャンパスエリアには新産業育成機能も期待されています。当院は公共・民間・大学が連携して医療・ヘルスケア分野の発展に取り組む柏の葉ライフサイエンス協議会に参加し、柏市や流山市の協力も得ながら、この分野での新たなビジネスモデルの創出にも挑戦し、それが患者さんにも還元できる仕組みづくりも考えたいと思っています。

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土井 俊彦 病院長

1989年岡山大学医学部卒業、1994年岡山大学大学院医学研究科第一内科修了。国立病院四国がんセンター内科を経て、2002年国立がんセンター東病院内視鏡部。内視鏡部消化器内視鏡室医長、病棟部病棟医長を務め治験管理室室長も併任。消化管内科長、副院長(研究担当)兼務。先端医療開発センター長、橋渡し研究推進センター長を経て、2024年4月から現職。医学博士。

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