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国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院

(千葉県 柏市)

大津 敦 病院長

最終更新日:2023/03/16

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横断的なチーム医療で患者をサポート

先進的な街づくりが進む柏市の柏の葉エリア。その一角にある「国立がん研究センター東病院」は、多様ながんに関する外科、内科、放射線科などの専門科をそろえ、多職種連携でがん患者とその家族を支えている。がんの治療だけでなく、新薬や手術方法、手術機器など新しいがん医療の研究・開発を行っている点が大きな特徴。これまでロボット支援手術やがんゲノム医療などさまざまな実績を残している。2016年から病院長として同院を率いているのが大津敦先生だ。「この5年くらいの間にがん医療は急速に進展し高度化かつ複雑化しています。今後もオンラインやAIによって変わっていくでしょう」と大津院長は話す。同院の特徴や取り組みなどについて話を聞いた。(取材日2023年2月2日)

こちらは開設30周年を迎えられたそうですね。

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はい。当院は新しいがん医療の創出と提供をめざして1992年に開設され、2022年に30周年を迎えました。この間、薬や医療機器など新しい治療法の研究、開発に力を注いできており、さまざまな成果を出しています。かつては不治の病といわれていたがんも、最近では6割以上は治療法があるようになってきています。特にこの5年間の発展は目覚ましく、かなり高度化かつ複雑化していると感じています。ただ、クリニックの先生方や患者さん方が実感するのはまだ数年先のことになると思います。当院では治験を数多く実施していて、保険適用で一般化するまでには厚生労働省の認可などさまざまなプロセスが必要となるからなのです。今、当院に来られる新規の患者さんのうち約6割が千葉県内、あとは埼玉や茨城、東京など千葉県近隣や地方の方々です。

最近の取り組みとしてはどのようなものがありますか。

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重点的な取り組みの一つが、がんゲノム医療の開発プロジェクト「スクラムジャパン」です。がんゲノム医療はがんに関連する多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子の変化に合う薬を選択するがん治療のことで、究極の個別化医療ともいわれています。そのために用いられるのが「がん遺伝子パネル検査」で、2019年からは保険適用になっています。さらに、組織を採取することなく血液検査でがんゲノム診断ができるリキッドバイオプシーと呼ばれる診断法でも実績を上げています。この技術によって大腸がんの手術後の再発リスクを調べて術後の化学療法の必要性を判断することで、より個別的な治療の実現が可能になるのでは、といった内容の研究も行っており、つい先月、科学雑誌に論文掲載されています。また、肺がんに関連する新しい遺伝子を発見するといった研究成果も出ています。

外科的な面では何かございますか。

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外科ではロボット手術に力を入れています。当初は胃外科、泌尿器科が主体でしたが、その後、食道外科、呼吸器科、婦人科など診療内容が広がっています。患者さんも増える中、より多くの方がロボット支援手術を受けられるよう2022年11月に1台増やして、今は3台体制となっています。また、山形県の鶴岡市立荘内病院と遠隔医療連携を結んでいて、同病院のカルテを見ながらオンラインでさまざまながん治療の相談をしたり手術支援なども行っています。昨年の12月には高速通信システムを用いて腹腔鏡によるS状結腸切除手術の支援を開始しました。荘内病院で行っている腹腔鏡手術の映像を当院の外科医師がリアルタイムで確認しながら荘内病院の外科医師をサポートするという方法を取りました。現在、AIによる手術支援ナビゲーションシステムも研究開発中で、今後、がんの手術も変化していくと思います。

診療面の特徴や患者のサポート体制などについて教えてください。

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診療では各診療科や職種間の垣根が低く、横断的なチーム医療を実践しています。また、サポーティブセンターという組織があり、医師、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカー、社会保険労務士などがチームを組み、医療面だけでなく精神面や社会的側面など多方面からサポートしています。がんと診断されると勤め先の企業によっては配置転換や解雇などを余儀なくされるケースも多いです。そういう職場に理解を求めたり、職場復帰の手助けなども含めて、患者さんが社会復帰できるようにさまざまな点から支えています。手術後のリハビリテーションや精神的なケア、緩和ケアなどもこまやかに行っています。また、2022年7月には病院敷地内に連携ホテルが開業しました。ホテル内のワンフロアに当院の外来部門も設置し、通院患者さんやご家族に便利に楽に受診していただけるようになればと考えています。

では最後に今後の展望をお願いいたします。

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2030年に500床規模の新病院を開設する予定で、今、計画を立てている最中です。今後、オンライン診療やロボット支援手術、AIナビゲーションシステムなどの発展に伴い、がん医療の形もかなり変化していくことが予想されます。手術や抗がん剤、放射線治療などを受ける場合は病院に来る必要がありますが、それ以外の場合、例えば、手術後の症状が安定している時などはオンライン診療で済むようになるかもしれません。また、遠隔支援手術の技術が進化して、地域にある病院で当院の支援によって手術が受けられるようになるかもしれません。このようにがん医療が進化していく中、どのような形の病院が求められるのかよく探りながら、より良いがん医療の提供、開発に努めていきたいですね。

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大津 敦 病院長

1983年東北大学卒業。専門は消化器内科。1986年に国立がんセンター病院内科、1992年に同東病院内視鏡部消化器科医員となる。その後、米国短期留学、国立がんセンター病院内視鏡部長、臨床開発センター長、先端医療開発センター長を歴任。新薬の開発などを手がける一方、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)にて日本全体の研究開発サポートにも携わる。2016年に国立がん研究センター東病院院長就任。

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