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公益財団法人柏市医療公社 柏市立柏病院

(千葉県 柏市)

田邉 稔 院長

最終更新日:2024/08/15

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柏市の発展とともにある地域の中核病院

2031年の新病院グランドオープンに向け、着々と準備が進む「柏市立柏病院」。2028年にはその皮切りとなる新病棟の開設が迫っている。東葛北部二次保健医療圏の人口の多くを占め、かつ近隣の開発で若い世代の人口流入が進む柏市において、同院が果たす役割は大きい。2018年に市が公表した資料によれば、24時間365日の救急医療や、一般病院で受け入れにくい高度専門医療、小児救急医療の充実を同院に望む市民の声は多く、建て替えによる地域医療のさらなる充実に期待がかかる。柏市が地域としての力を高め、ブレークスルーするための鍵をも握っているといっていいだろう。この重要な変革期を担うキーマンとして白羽の矢が立ったのが、肝臓・胆道・膵臓外科を専門とする田邉稔院長だ。「柏市とスタッフのポテンシャルに魅力を感じて大役を引き受けた」と話す田邉院長に、同院の歩みと今、そして見据える未来を聞いた。(取材日2024年5月24日)

1939年に、陸軍病院として創設された病院だそうですね。

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そうですね。非常に歴史がある病院で、戦後は国立療養所柏病院、国立柏病院と名を変えながら地域に医療を提供し続けてきました。国立病院統廃合計画によって廃止が予定されていた国立柏病院を柏市が引き継ぐかたちで、1993年から現在の「柏市立柏病院」として開院しています。開院以来、公設民営方式で運営されており、当初は柏市医師会、4年目からは柏市医療公社が運営を担うようになりました。開院当初は、高齢化社会における医療福祉の拠点となるべく、内科、外科、整形外科、理学診療部門による100床の病院としてスタートしたと聞いています。地域ニーズに応えて急性期医療を軸とする病院へと転換した現在では、病床数200床の地域の基幹病院へと成長しました。

新病院への建て替え計画も進んでいると聞きました。

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長く親しまれてきた病院ですが、施設の老朽化が進んでいることから現地建て替えが決まりました。東京医科歯科大学大学院肝胆膵外科学分野教授として肝臓・胆道・膵臓外科を率いていた私に市長自らお声がけがあったのは、再整備計画が取りまとめられた後のことです。柏市の飛躍を支える病院をつくりたいとの熱い思いを受け、実際に病院周辺を自らの足で回りました。その時実感したのが、柏市は歴史と改革が同居する町であるということです。長く市内にお住まいの高齢の方、市内で進む街づくりに伴って他地域から流入してきた働き世代やその子どもたちなど、幅広い世代が暮らしている様子を目の当たりにして、地域ニーズに応えられる病院づくりに貢献したいとの思いを強くしました。現在は新病院の設計を進めるとともに、東京医科歯科大学のバックアップを受けて各診療科の強化を進めているところです。

具体的に、力を入れている診療についてお伺いしたいです。

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一つは、働き世代のニーズも多い消化器内科と外科です。胃・大腸がん検診などの二次精査を多くお受けし、内視鏡的粘膜切除術(ESD)や腹腔鏡下手術といった低侵襲治療につなげています。消化器内科のトップの2人は肝臓内科が専門ですし、私も肝臓・胆道・膵臓が専門ですから、今後は肝がんや膵がんの手術も多くお受けできるようになると思います。高齢者が急速に増えつつある東葛地域において、循環器内科や糖尿病・代謝内科は今後ますます存在感を発揮してくれるでしょう。また、働き世代が育てる子どもたちのため、小児医療の充実も図っています。入院体制を徐々に強化しており、365日の軽症入院を受けられるようになりました。鎮静下の頭部MRI、食物アレルギー負荷試験、低身長か否かを調べる内分泌負荷試験といった検査のための入院も可能です。

高齢者のための医療についてはいかがですか?

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柏市立介護老人保健施設「はみんぐ」との連携を含めて、こちらも主要な診療科の強化を図っています。特に高齢者のニーズが多い整形外科については、リハビリテーション科とも連携しながら、年齢とともに増加する脊椎の変性疾患や大腿骨骨折などの治療に注力していく予定です。また、高齢者に多い肺炎に代表される呼吸器感染症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんなどを診る呼吸器内科、白内障手術を多く手がける眼科なども、高齢者医療とは切り離せない領域です。今後は、脳卒中を中心とした脳血管障害の治療を担う脳神経外科や、パーキンソン病などで需要が高い神経内科に注力するなど、地域のニーズに応えていきたいですね。泌尿器科についても、新病院ではロボット支援手術も導入し、前立腺がんの治療を増やしていく計画です。

最後に、読者にメッセージをお願いいたします。

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私が赴任して最初に取り組んだのは、スタッフに声をかけ、目を合わせて病院の現在と未来について話をすることでした。今足りないものは何か、何のために新病院をつくるのかといった話を一人ひとりとすることで志を一つにしてきたのです。皆が真剣に話を聞いてくれたおかげで、次第に「患者さんのために一生懸命働き、良い病院をつくろう」という気運が高まってきたのを感じています。今後は地域の医療機関との連携をさらに強化し、新型感染症の流行拡大によって停滞していた住民向け講座を通して地域との交流も復活させながら、地域のためにある病院としての立ち位置を確立していきたいと考えています。新病院は、柏市の都市計画の一部として進み、地域の景色をより良く変えることができると確信しています。救急の受け入れ強化や、診療科の拡大、ロボット支援手術といった新しい医療にも積極的にチャレンジしてまいりますので、どうぞご期待ください。

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田邉 稔 院長

1985年慶應義塾大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学外科で研鑽を積んだ後、慶應義塾大学外科准教授。2013年より東京医科歯科大学肝胆膵外科教授、同大学では副病院長を務め、2024年4月より現職。日本肝胆膵外科学会、日本内視鏡外科学会では理事を務める。消化器外科、肝胆膵外科のスペシャリストであり、がん治療や低侵襲手術に精通する。学生時代は競技スキーに打ち込んだスポーツマン。

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