国立大学法人 広島大学病院
(広島県 広島市南区)
安達 伸生 病院長
最終更新日:2024/11/11
安全で全人的な医療の提供をめざす
広島県を中心に中四国地方の核となる先進医療の提供に努めているのが、「広島大学病院」だ。大学病院であると同時に特定機能病院や、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、てんかん支援拠点病院の指定を受け、さまざまな先進的な医療を推進している同院。加えて、病気の治療だけに専念するのではなく、社会的な背景や心理的な側面などにも目を向けた全人的な医療を実践することで、患者の包括的な健康と幸福をめざしている。そんな同院の病院長を2024年4月から務め、「安全で安心な先進医療を地域の皆さまに寄り添いながら提供していきたいと考えています」と話す安達伸生先生に、同院の取り組みや病院長としての意気込みなどを聞いた。(取材日2024年3月22日)
最初に病院を紹介していただけますか?
当院は、1945年に設立された広島県立医学専門学校とその附属医院をルーツとする歴史の長い病院です。2003年には、医学部附属病院と歯学部付属病院が統合され現在の形となりました。大学病院には、診療と教育、研究の3本柱があり、「全人的な医療の実践」と、「優れた医療人の育成」、「新しい医療の探求」、これら3つを基本理念としています。全人的な医療の実践では、患者さんの身体的な病気の治療だけでなく、社会的な背景や心理的な側面、生活習慣の改善や予防、心理的サポート、社会的な支援などを含め、患者さん自身の包括的な健康と幸福を探求することをめざしています。また、当院があるのは広島大学の霞キャンパスですが、そこに医学部と歯学部、薬学部が入り、医学部の中に医師を養成する医学科とセラピストや看護師を育成する保健学科があります。それら多職種にわたる医療人の育成にも力を入れているのが、特徴の一つかと思います。
診療で力を入れていることは何ですか?
近年、医療は目覚ましい発展を遂げており、手術支援ロボットなど先進的な機器を用いた手術。細胞や成長因子、新しい医療機器を用いる再生医療分野。がんゲノム医療。AIを活用した早期診断など、高度で複雑な医療が誕生しています。当院では、これらの新しい医療技術を患者さんへ、安全に届けることをめざしています。また、特定機能病院、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療拠点病院など診療拠点としての多くの指定を受けており、それらの各分野で高度で安全な医療を提供できるよう努めています。特に、小児がんについては中国・四国エリア全域から白血病や脳腫瘍などの患者さんが訪れています。また、小児がん診療ではご家族の支援も必要になります。そのため、ご家族が宿泊できるファミリーハウスも用意しています。
先生の専門についても教えてもらえますか?
私の専門は整形外科で、特に膝。その中でもスポーツ医学と再生医療分野に力を入れています。膝の軟骨治療では、保険適用の再生医療である自家培養軟骨移植術あります。その開発には、広島大学長の越智光夫先生がずっと取り組んできて、私はその下で携わってきたこともあって、精力的に取り組んでいます。スポーツ医学では、広島はスポーツが盛んで、当院でもスポーツをする方の治療やメディカルチェックなどをサポートしてきました。また、スポーツは人を幸せにするというか、地元のプロ野球やサッカーのチームが強いと街が活気づきますし、経済効果もすごく高いという研究結果もあります。そういう意味でも、スポーツをサポートすることには大きな意義があると考えています。
病院の運営や診察の際に心がけていることはありますか?
私が病院長になるのは4月からということで、まだこれからというところがありますが、これまで整形外科の教授としては、みんなが一体感を持って、同じ方向を向いて進んでいくことを教室のモットーにしています。今度は組織がすごく大きくなりますが、さまざまな課題がある中でそれに立ち向かっていくには、情報をしっかり共有して、みんなで同じ方向に進んでいくことが大切だと考えています。実際にどのように進めていくかにもいろいろな形がありますが、私は側方や後方から支えるようなリーダーシップが、性格上も向いているかなと思います(笑)。診療では、できるだけ患者さんの方向を向いて、顔を見ながら話すこと。なるべく時間をとって診察したいと思っていますが、なかなかそうもいきませんので、しっかりと顔を見ながら対話をする。加えて、迷ったときには自分の家族だったらどうするか。ありきたりかもしれませんが、それは大切にしています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
今、病院を取り巻く環境はかなり厳しいものがあります。コロナ禍は落ち着きましたが、医師の働き方改革も始まった中で、診療と教育、研究の3本柱をいかにしっかりと続けていくかは、大きな課題です。そのためには、選択と集中を進めることや、経営も安定させていくことが必要だと考えています。また、広島県は中四国地方の中心的なところもありますので、当院が必ずしもリーダーシップを取るという意味ではなく、近県の大学病院ともさまざまな面で連携していくこと。そして、すべてを大学病院でできるわけではありませんから、地域の開業の先生方ともしっかりと連携していきたいと考えています。当院は、大学病院として安全で安心な高度な先進医療を、地域の皆さまに寄り添いながら提供していきたいと考えています。健康に何か問題などがありましたら、まずは地域のかかりつけの先生に相談していただいて、必要なときには、当院も遠慮なくご利用ください。
安達 伸生 病院長
1988年広島大学卒業。同医学部附属病院医員、同大学大学院医歯薬学総合研究科助教、同大学病院講師、同准教授、同大学大学院医歯薬保健学研究院整形外科学教授、同大学病院スポーツ医科学センターセンター長、同大学大学院医歯薬保健学研究科教授、同大学院医系科学研究科教授などを経て、2024年より現職。日本整形外科学会整形外科専門医。専門分野は、膝関節外科、スポーツ医学、運動器再生領域。医学博士。