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国立大学法人 広島大学病院

(広島県 広島市南区)

工藤 美樹 病院長

最終更新日:2022/08/16

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中国・四国のがん医療の中心的役割を担う

大学病院でありながら特定の疾患に限定せず、全人的医療の実践をめざしている「広島大学病院」。その歴史は1945年、広島に原爆が投下される前日に開校式が行われた広島県立医学専門学校と附属医院から始まり、現在はがんゲノム医療拠点病院、小児がん拠点病院として、中国・四国地方におけるがん治療の中心的役割を担っている。また小児の先天性疾患や遺伝子異常疾患にも対応するほか、これまでの被爆者医療に対する経験に基づき放射線災害医療総合支援センターを設置するなど原子力災害医療にも携わっている。工藤美樹病院長は「医療は不確実だからこそ、多様な人材が関わり、多様なアイデアを持ち寄り、それぞれの能力を発揮していくことが重要。これからもワンチームで地域の医療に貢献していきたい」と意気込む。近隣住民からは親しみを込めて“広大病院”と呼ばれ、さまざまな疾患に幅広く対応するスペシャリストと設備を備える広島大学病院について、工藤病院長にその歴史や理念、特徴でもあるがん診療、今後の展望などについて詳しく話を聞いた。(取材日2022年6月27日)

まずは貴院の歴史や理念についてお聞かせください。

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1945年に広島に原爆が投下される前日に前身となる医学学校と附属医院が開校したのですが、多くの教職員や学生は疎開をしていて被害を免れたものの校舎は全焼。そこから当院の歴史が始まり、各地の倉庫や建物を転々としながら診療してきたと聞いています。以降、全人的医療の実践、優れた医療人の育成、新しい医療の探求を理念に掲げてきました。大学病院にはどちらかと言えば高度医療や研究を優先するイメージがあるかと思いますが、現代においては特定の部位や疾患に限定せず全人的な医療を提供することがひとつのミッションだと考えていますし、優れた医療人の育成については教育病院として当然の使命です。また大学病院の重要な役割である高度で先進的な医療の開発にも積極的に取り組み、広島臨床研究開発支援センターや未来医療センターなどを設置。先進的な医療の研究・開発を安全に進めながら、今後診療として提供できるように体制を整備しています。

ゲノム医療などがん治療についてもお聞かせください。

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日本人のうち2人に1人ががんになると言われる時代。専門的な医療技術を持つ中核病院として、患者さんのニーズが高いがん治療は当然注力するべきものだと考えています。ですから都道府県がん診療連携拠点病院の指定を受け専門的ながん医療を提供しているほか、2019年9月にはがんゲノム医療拠点病院となり、遺伝情報に基づいた治療も可能となりました。近年においては若年層の方ががんになった際に、いかに社会復帰を手助けするかという側面も重要になっています。私自身専門が産婦人科なのですが、女性特有のがんの場合、妊娠したり出産したりする能力をどう残すかなど、前時代にはなかった概念での医療も必要です。医療の進歩に伴ってがんは不治の病ではなくなりました。ゲノム医療やロボット手術など先進的ながん治療を提供するということも大切ではありますが、個々人に合った総合的な診断・治療を提供することが求められているのだと感じています。

小児がんに対しても積極的に取り組まれているそうですね。

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当院は小児がん拠点病院です。それぞれの病院で小児がん治療が行われてきましたが、拠点病院として症例を集めることで、さらに高度な医療を提供することを目的としています。そのため中国・四国エリア全域から白血病や脳腫瘍などで受診されるお子さんが増えています。とくに脳腫瘍の場合は小児科と脳神経外科が連携して治療にあたる必要がありますし、さまざまな診療科がそろう大学病院だからこそ対応可能な疾患のひとつだと思っています。一方で小児がん治療においては、ご家族の支援も必要になるため、宿泊できるファミリーハウスを設置しています。ご家族だけではなく、化学療法を受けている患者さんなどにも利用いただいています。また小児については先天性疾患や遺伝子異常の希少疾患の治療にも対応できる専門家がいるのが特徴。当院のがんゲノム医療は、小児の代謝疾患などから発展してきた経緯がありますからね。

被爆者医療など地域医療に大きく関わってきたのも特徴ですね。

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確かに歴史的に被爆者の医療に携わってきたことは特徴的かもしれません。現在は血液内科と腫瘍外科と名前を変えていますが、もともと当院には原爆医療研究所を設置し、血液疾患を診る内科と甲状腺がんなどを治療する外科の診療を行ってきました。また長年被爆者の健康管理に取り組んだ経緯から、広島大学が高度被ばく医療支援センター、原子力災害医療・総合支援センターに指定され、原子力災害医療を担う機関となっています。そうした経験から、福島第一原発事故やチェルノブイリ原発事故などの際にはスタッフを派遣しています。他方で地域に対してはどんな病気にも対応するスタンスで、広島県だけではなく近隣の島根県や山口県など遠方からの患者さんも多くいらっしゃいます。大学病院の高度医療が必要だったとしても、こちらでしっかりと治療したあとは地元に帰れるように、地域の病院と連携して診療を継続できるようなシステムづくりにも取り組んでいます。

最後に今後の展望や読者の方にメッセージをお願いします。

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広島県で医師をめざす人が当院で学びたいと思ってくれるような病院にしていきたいと思っています。そのためには医療機器や設備を整えなければなりませんし、多くの患者さんに来ていただけるような病院にならなければなりません。ですから基本的には紹介いただいた患者さんを断らないことを基本姿勢にしていきたいと思っています。医療というのは不確実ですし、思ったように治療が進まないこともあります。そういった不確実なものに向き合う際には、多様なスタッフが関わり、アイデアを出し合い、一人ひとりが能力を発揮していかなければなりません。これは今後の医療にとって不可欠なこと。新型コロナウイルス感染症は、ひとつのモデルケースになったのではないかと思っています。チーム医療という言葉をよく耳にするかもしれませんが、私たちもワンチームとなった医療を提供し地域に貢献していきたいと考えています。

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工藤 美樹 病院長

広島県出身。1984年、広島大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学などに勤めた後、2004年に広島大学大学院医歯薬学総合研究科(現・医系科学研究科)教授に就任。広島大学病院副病院長などを務め、2022年4月より現職。専門は産婦人科学。

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