歩き方がおかしい原因は?
認知症と間違われやすい水頭症
医療法人春秋会 城山病院
(大阪府 羽曳野市)
最終更新日:2026/07/30


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「歩き方が変わった」「物忘れが増えた」「反応が遅くなった」そんな変化を、“年齢のせい”と考えて見過ごしてはいないだろうか。その背景には加齢だけでなく、水頭症などの病気が隠れている可能性もあると南大阪地域の脳疾患治療を支える「城山病院」脳・脊髄・神経センター長の島野裕史先生、顧問の梶本宜永先生は話す。「水頭症は認知症とよく似た症状を示すため、診断されないまま過ごしているケースが少なくありません。しかし、適切な診断と治療によって症状の改善が期待できる病気なのです」。同センターでは、脳神経外科の専門的な視点から認知症と水頭症を丁寧に鑑別し、患者や家族の小さな違和感にも耳を傾けながら診療しているという。そこで、水頭症と認知症の違いや、早期受診の重要性について話を聞いた。(取材日2026年5月18日)
目次
脳神経外科の視点で認知症と水頭症を鑑別。違和感を診断につなげ、その後の暮らしに安心を
- Q歩き方に違和感を覚える原因はどんなことが考えられますか?
- A

認知症に造詣が深い島野裕史先生
歩き方の異常は、単なる加齢現象だけではなく、脳や脊髄、末梢神経の異常が関係していることがあります。特に「足が出にくい」「小刻みになる」「転びやすくなった」といった変化は、神経系の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。原因としては、脳梗塞やパーキンソン病、脊柱管狭窄症、末梢神経障害などさまざまな疾患が考えられます。その中で、見逃されやすい病気の一つが「水頭症」です。高齢になると、「年齢のせいだから仕方がない」と思われがちですが、実際には治療によって改善が期待できる病気が隠れている場合があります。特に歩行障害は、水頭症の初期症状として現れることが多く、早期発見につながる重要なサインです。
- Q水頭症とはどのような疾患か教えてください。
- A

水頭症に高い専門性を持つ梶本宜永先生
水頭症は、脳の中を循環している「脳脊髄液」が過剰にたまり、脳を圧迫してしまう病気です。中でも高齢者に多い「特発性正常圧水頭症」は、歩行障害、認知機能低下、排尿障害といった症状が特徴です。症状の一つ一つは決して珍しいものではなく、加齢に伴って誰にでも起こり得る変化でもあるため、認知症だと誤診されることがありますが、緩やかな変化ではなく、ある時期から症状が進行している場合には、水頭症が隠れている可能性があります。水頭症は珍しい病気だと思われがちですが、実は12人に1人が水頭症ともいわれており、決してまれな疾患ではありません。「もしかして水頭症かも」という視点を持ち、早めに相談してほしいと思います。
- Q診断するのが難しいと聞き、不安を感じます。
- A

見逃されることも多く、専門家による診断が欠かせない
水頭症は症状が認知症や加齢変化と似ているため、専門的な知識や経験がないと診断が難しい場合があります。画像検査だけでは判断が難しいこともあり、歩き方や反応、生活状況なども含めて総合的に評価していく必要があります。当院では脳神経外科を専門とする医師が診察を行い、MRI検査や髄液検査なども組み合わせながら丁寧に診断しています。また、認知症診療にも対応しているため、「認知症なのか、水頭症なのか」といった鑑別も含めて総合的に判断できることが特徴です。ご本人だけでなく、ご家族からのお話も診断の重要な手がかりになりますので、気になる変化があればぜひ詳しく聞かせていただきたいと思います。
- Qもし水頭症だった場合、どのような治療が必要なのでしょうか。
- A
代表的な治療は、脳にたまった脳脊髄液をおなかなど別の場所へ流す「シャント手術」です。頭を大きく開く手術とは違って、比較的体への負担を抑えながら行える治療ですので、高齢の方にも対応可能なことが多いです。もちろん、すべての方に手術が必要というわけではなく、検査結果や全身状態を丁寧に確認しながら、安全性と効果を十分に考慮した上で治療を進めます。当院では検査から手術、術後のフォローまで一貫して対応しており、リハビリテーションスタッフとも連携しながら回復を支えます。不安を抱えたまま過ごされている方も多いと思いますが、まずは「治療できる病気かもしれない」ということを知っていただきたいですね。
- Q認知症の治療にも対応しているそうですね。
- A

認知症や水頭症を専門とする医師が在籍する医療機関に相談を
当院では認知症診療にも力を入れており、アルツハイマー型認知症をはじめ、さまざまな認知症の診断・治療を行っています。近年は新しい治療薬も登場し、早期に診断することで治療の選択肢が広がる時代になってきました。そのため、「少し物忘れが増えたかな」「以前より反応が遅くなった気がする」といった段階でも、一度検査を受けていただくことが大切です。結果として水頭症が見つかる場合もあり、水頭症であれば治療による症状改善が期待できます。また、認知症であっても早めに原因を知ることで、その後の生活や治療方針を考えやすくなります。ご本人だけでなく、ご家族が「少し気になる」と感じた時点で相談していただければと思います。

島野 裕史 脳・脊髄・神経センター長
1996年に大阪医科大学医学部卒業後、同大学附属病院(現・大阪医科薬科大学病院)脳神経外科学教室へ。2002年に同大学大学院医学研究科を修了。大阪医科大学附属病院、畷生会脳神経外科病院などを経て、2008年城山病院脳神経外科入職。2017年脳・脊髄・神経センター長就任。副院長も兼任し、幅広い脳神経疾患に対応。特に片側顔面けいれんや三叉神経痛の治療に注力。患者の対場に立った誠実な医療にこだわる。





