関西医科大学香里病院
(大阪府 寝屋川市)
岡崎 和一 病院長
最終更新日:2024/04/17
地域に愛される「敷居の高くない」中核病院
「関西医科大学香里病院」は、関西医科大学付属の4病院間で役割分担をしながら、7つの市で構成される北河内医療圏を支える地域の中核病院。2005年に一度は閉院するも、寝屋川市民の声を受け、再開院した歴史を持つ。乳腺・骨粗しょう症・人工透析・消化器内視鏡診療など専門部門を立ち上げ、がんや難治性疾患の診療など大学病院らしい専門性の高い医療を提供する一方で、大学病院では数少ないといわれる夕方診療の実施や受診の際には紹介状を必要としないなど、その受診しやすさも特徴だ。同病院のある寝屋川市の地域性、病院の特色、「総合診療」を担う人材の育成、各専門部門やがんの早期発見・治療への取り組みなど、岡崎和一病院長に話を聞いた。(取材日2022年3月3日/情報更新日2024年4月12日)
地域の特性や、その中での貴院の役割・特色を教えてください。
当院のある北河内医療圏は、寝屋川市をはじめ守口市・枚方市・大東市など7つの市で構成されており、圏内の人口はおよそ120万人です。しかし、多くの住民を抱える医療圏でありながら、市民病院をはじめとした「公立・公的病院」は枚方市の3病院のみであり、残りの6市は当院を含む民間病院が中心となって医療を支えているという全国的にも特殊な状況下にある地域です。そのため市民病院のように親しまれてきた歴史があり、本学の方針により当院は2005年に一度閉院したのですが、寝屋川市民の方々からの存続運動を受け、2010年に改築を経て再開院に至りました。現在も大学病院としてがんや難治性疾患に取り組むのはもちろん、働き世代も通いやすい夕方診療の実施、紹介状不要、駅直結徒歩約1分の立地などを特徴とした敷居の低い地域密着型の中核病院として「断らない病院」を理念に診療を行っています。
全人的医療の提供をめざし、人材育成に注力しているそうですね。
本学では各臓器の領域疾患の専門家を育てると同時に、「総合診療」として全人的医療を提供できる人材の育成にも積極的に取り組み始めました。というのも、高齢患者さんの疾患は一つと限らず、糖尿病と骨粗しょう症など複数の疾患を持っていることが多く、超高齢社会の医療を担うには視野の広さが求められているためです。当院では2021年10月より本学付属4病院の総合診療専門人材の育成拠点として、内科と連携する総合診療部門をスタートしました。従来から循環器・消化器など各専門家がチームを組んだ総合内科ともいえる診療体制を敷いてきましたが、今まで以上に全人的医療を提供できるよう診療を強化しました。また、2022年1月から二次救急診療を開始し、かかりつけ患者さんを中心とした救急受け入れを拡大しました。総合診療専門の医師の育成を目的とした教育的ERと位置づけており、教育機関としての使命と捉えています。
乳腺や骨粗しょう症、透析など各専門診療部門も充実しています。
綿谷正弘教授がセンター長の乳腺センターは、乳がん検診に力を入れており、年に数回ほど公開講座とともに無料相談なども催しています。当院ではマンモグラフィ・超音波各検査の女性技師を採用しているほか、グレードアップした検査機器も導入しました。乳がん手術は形成外科も参加し再建術を行っていることに加え、リハビリテーション科や婦人科なども含め複数の科がチームで取り組んでいます。上田祐輔整形外科部長がセンター長となった骨粗しょう症センターは、整形外科、放射線科、リハビリテーション科、内科など領域横断的に構成されます。当院で骨密度を測った患者さんが万一、自宅で転倒・骨折したときは、24時間体制で受け入れる準備を整えています。また高橋延行教授がセンター長の腎臓病センターでは、人工透析30ベッドを擁するとともに、透析治療が必要になる前の状態で悪化を食い止められるよう、多職種によるチーム医療を大切にしています。
がんの早期発見・治療へのお取り組みもお教えください。
寝屋川市は大腸がんや胃がんなどの検診受診率が大阪府でも低い状況です。当院はがんの早期発見のため、消化器内視鏡部門では先進の機器を採用するなど、力を入れて取り組んでいます。また糖尿病との関係も深い膵臓がんは、自覚症状がほぼなくても「見つかったら手遅れ」ともいわれる予後の悪い疾患ですが、早期発見へ向け2021年に膵臓がんの超音波内視鏡のスペシャリストである高岡亮教授を内視鏡部門の部長にお迎えしました。また本学の消化器内科の専門医師が中心となって地域の糖尿病を診ておられる先生方に働きかけ、気になる患者さんをご紹介いただく「すい臓がん早期発見プロジェクト」も行っています。さらに2024年4月には化学療法センターを設置し、関西医科大学附属病院がんセンター部門長を務めてこられた杉江知治先生がセンター長に着任されました。働く患者さんがより気軽に化学療法を受けられるよう、今後さらに体制を強化していきます。
今後の展望とメッセージをお願いいたします。
当院では訪問看護ステーションやデイケアセンターなど介護福祉部門も有しており、コロナ禍においても感染症防止対策を徹底して規模を縮小することなく、またオンライン診療なども導入しながら継続してきました。今後も当院だけでなく本学のコンセプトである「シームレスな医療と介護」を提供し、さらに進む高齢化にしっかりと対応していきたいと考えています。そして総合診療へ向けた教育を軌道に乗せ、地域の医療を担う人材を育てていくことも当面の目標です。今後も敷居の低い、親しみやすい大学病院として、ますます地域の皆さんに親しまれて愛される病院をめざしたいと考えています。
岡崎 和一 病院長
1978年京都大学医学部卒業。米国2大学で客員研究員を務めた後、高知医科大学助教授、京都大学医学研究科助教授などを経験後、2003年関西医科大学内科学第三講座主任教授に就任。同大附属病院副病院長を経て、2020年4月より現職。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本超音波医学会超音波専門医。医学博士。