メリット・デメリットや手術後のリハビリ
肩・膝の人工関節手術
関西医科大学くずは病院
(大阪府 枚方市)
最終更新日:2022/08/24
- 保険診療
- 関節リウマチ
- 膝靱帯損傷
- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
- 脱臼
変形性関節症や関節リウマチ、あるいは外傷によって傷んだ関節の表面を取り除き、人工の関節に置き換える人工関節手術。肩や膝などさまざまな関節に対して行われており、高齢者の増加とともに手術件数は年々増えてきているという。しかし、手術に対する不安から治療に踏みきれない人も多い。「人工関節は1950年代の開発当初より、耐久性はアップし機能も大きく飛躍しました」と話すのは、「関西医科大学くずは病院」整形外科部長の山口拓嗣先生。同院では変形性膝関節症への人工関節手術を中心に、全国的にみても症例が少ないという肩の人工関節手術にも積極的に対応しているほか、整形外科とリハビリテーション科の密な連携で早期回復をめざしているという。今回は、肩や膝の人工関節手術について教えてもらった。(取材日2022年3月29日)
目次
整形外科とリハビリテーション科の密な連携で、早期回復をめざす。膝はもちろん、肩の人工関節手術も実施
- Q肩や膝の痛みには、どのような疾患が考えられますか?
- A
考えられるけがや疾患としては、肩の場合には腱板断裂、骨折、脱臼などの外傷、変形性肩関節症などですね。また、膝の場合には、半月板損傷や膝靱帯損傷、関節リウマチなどが考えられます。中でも多いのが慢性的な肩関節症や変形性膝関節症です。反復作業や加齢などが原因で、関節の軟骨が擦り減ることで変形したり、骨と骨が擦れたりして強い痛みが起こります。また、筋力の低下や体重の増加が痛みを増幅させる場合もあります。特に変形性膝関節症に関しては女性に多く、加齢とともにO脚が進み、それによって膝の内側に負荷が集中してさらに軟骨が壊れていき、歩き始めや立ち上がり時に強い痛みを感じるのが特徴です。
- Q肩・膝関節症に対してどのような治療法があるのでしょうか?
- A
治療には、保存的治療と手術があります。まずは痛み止めなどの投薬治療を行い、その後に運動を行って筋力をつけていく保存療法で様子を見ます。しかし、保存療法で症状の変化が見られない場合や、ご高齢で痛みが強い患者さんの場合には、人工関節手術になることが多いです。手術では、関節のすべてを人工物に置き換えるケースと一部を人工物に置き換えるケースがあるほか、若い方で軟骨が残っている場合にはできるだけ自分の関節を温存するなどさまざまな方法がありますが、患者さんの状態に合わせて術式を選択しています。
- Q人工関節手術のメリットやリスクについて教えてください。
- A
人工関節手術のメリットは、何より痛みの緩和が期待できることです。以前のように歩き、動くことも望めますし、QOL(生活の質)の向上が見込めます。またデメリットは、人工関節はあくまで人工物ですので寿命があり、再置換が必要になる場合があることです。ですが、近年は材質も性能も向上して、これまで約10年といわれてきた人工関節の寿命は、近年は約20年と考えられています。また、術後の合併症を気にされる方もいらっしゃいますが、感染症対策として手術では通常よりワンランク上の防護服を着用しているほか、血栓症対策として術後に血液をサラサラにするためのお薬を用意し、すぐに運動を開始したりして、予防に努めています。
- Q特に肩の疾患に伴う人工関節手術に注力されているとか。
- A
はい。肩のお悩みは高齢化に伴って増加傾向にありますが、全国的に専門とする医師はまだまだ少ないのが現状です。なぜなら、肩疾患の訴えは痛い・動かない・腕が上がらないの大きく3つですが、その症状の出かたは患者さんごとに異なり、治療の選択肢が複雑で治療自体が難しいためです。関西医科大学にある4つの関連病院の中で、肩の外科的治療を行っているのは当院だけです。地域における役割を担うことはもちろんですが、全国の肩疾患に悩まれている患者さんも救いたいと数多くの人を受け入れており、他院では治療が難しいとされた難症例に関しても積極的に治療を行っています。
- Qリハビリテーションの体制も整っていると伺いました。
- A
術後のリハビリテーションは早期に始めることが重要とされています。当院にはリハビリテーション科があり、密な連携でスムーズな治療を提供しているほか、通常の急性期後のリハビリテーションだけでなく、通所型や訪問型など幅広く対応していることも特長です。一般的に3ヵ月ほどの必要なリハビリテーションですが、遠方にお住まいの方や長期治療が必要なケースでも柔軟に対応していますので、安心して通院していただければと思います。また、経験豊富なスタッフはもちろん、関西医科大学リハビリテーション学部からの人財など、質の高い医療に加えてマンパワーにおいても、患者さんをしっかりサポートできる体制を確保していければと思います。
山口 拓嗣 整形外科部長
1987年産業医科大学卒業。大阪労災病院で研修を受けた後、神戸労災病院、信原病院、産業医科大学病院で勤務。南川整形外科病院勤務後、2021年から関西医科大学くずは病院整形外科部長。病院に来る患者の要求を見極め、治療程度や目標に関する要求に応えることを大切にしているという。専門は肩関節、膝関節、スポーツ整形外科。日本整形外科学会整形外科専門医。