特定医療法人ダイワ会 大和病院
(大阪府 吹田市)
中村 智香子 病院長
最終更新日:2024/11/11
地域の暮らしと、地域の笑顔を支える病院
大阪メトロ御堂筋線江坂駅から阪急千里線豊津駅方面へ徒歩5分の所にある「大和病院」。1980年の開業後は療養患者の長期入院などを長らく担っていたが、地域住民の医療ニーズに応えながら形を変え、現在は慢性期医療やリハビリテーションに特化した病院として地域医療を支えている。2024年には中村智香子病院長が就任し、今後はさらに患者やその家族に寄り添った医療が期待される。急性期病院から転院して来た患者には早期から積極的なリハビリを行い、自宅や施設に戻った後も訪問看護や訪問リハビリを通して患者とその家族の療養生活を手厚くサポートすることで、医療と介護、入院と在宅療養がつながった地域づくりをめざす。「大和病院に行ってよかったと笑顔になっていただくこと。それが私のめざす病院の形です」と中村院長。現在の病院が担う役割とともに、その温かく力強い瞳が見つめる未来について詳しく話を聞かせてもらった。(取材日2024年6月25日)
まずは地域における貴院の役割をご紹介ください。
当院は古くからこの地に根差し、慢性期医療やリハビリに特化して、地域の皆さんの暮らしとともにある病院です。吹田市は国立循環器病研究センターや大阪大学医学部附属病院をはじめ、市立吹田市民病院、大阪府済生会千里病院や大阪府済生会吹田病院、吹田徳洲会病院など、急性期医療を担う病院が非常に多く、高度な医療を安心して受けていただける街だと思います。しかし、急性期を無事に過ごせたからといってすべての人が安心して日常に戻れるわけではありません。そこで当院の地域包括ケア病棟で急性期病院から患者さんを受け入れ、自宅や施設へ戻っていくまでの橋渡しを担っています。また居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションと連携し、訪問診療や訪問看護、訪問リハビリも積極的に行っています。めざすのは「大和病院に行ってよかった」と笑顔になっていただける病院です。
各診療科や急性期病院との連携についてもお聞かせください。
外来では生活習慣病を中心とした内科診療のほか、脳神経外科、整形外科、循環器内科、眼科、皮膚科などの診療を行っています。膠原病やリウマチ、頭痛、泌尿器、物忘れ・不眠症には専門の外来診療を始め、より専門的な対応ができる体制を整えました。また、高齢の方に多い誤嚥性肺炎や大腿骨頸部損傷の手術も行っていますので、地域の開業医から紹介された急患の患者さんも診ています。急性期の病病連携については、市立吹田市民病院、大阪府済生会千里病院や大阪府済生会吹田病院と、肺炎や尿路感染について地域連携パスをつくり、使う薬剤まで同じ治療を当院で引き継げるようにしました。その他リハビリや療養を必要とする患者さんを幅広く受け入れ、急性期病院からの転院後にはスムーズにご自宅や施設に復帰できるよう、リハビリに注力しています。
リハビリについても聞かせていただけますか?
患者さんやそのご家族と話をすると「住み慣れた場所に帰りたい」という声が非常に多く聞かれます。その気持ちに応えるために必要なのが、リハビリです。当院には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が30人近く在籍しており、入院当日から個々の患者さんの状態に応じたプログラムを実施しています。また、日常生活に必要な動きの再獲得はもちろんですが、高齢の患者さんの場合は食べることもとても大切です。少しでも口から食べられるよう姿勢、介助の仕方の検討も含めて摂食嚥下リハビリに取り組み、摂食機能の回復を図っています。退院後には訪問リハビリやデイケアへとつなげ、さらに暮らしに密着したリハビリも行えます。1日でも長く好きな場所で過ごせるよう、地域連携室とも深く連携することも大切にしています。
訪問看護にも注力されているのですね。
在宅で過ごすためには、往診や訪問看護の介入がとても重要です。特に看護師は患者さんのもとを訪問する回数も多いので、患者さんやご家族とコミュニケーションを取ることも多く、病状の変化に気づくことが多くなります。そこで必要な処置を始める必要があるのですが、投薬や処置には医師の指示が必要です。そこで当院では、チーム医療の一環として、看護師自身の判断で手順書により投薬や処置といった特定行為ができる看護師の育成に努めてきました。現在では特定行為を行う看護師が多く誕生し、すでに現場で活躍してくれています。また地域連携室とも密接に連携し、患者さんや地域が本当に必要としているケアについても検討し、積極的に動いています。現在、副院長も看護師長も地域連携室長も女性。実際に介護や在宅療養のリアルな大変さについてもよく理解していますから、患者さんやご家族の不安に耳を傾けて心から寄り添おうと尽力してくれています。
それでは最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いいたします。
院長に就任するにあたって、社会が高齢化していく中で大和病院にできることはなんだろうと考えました。そして出た結論が「大和病院に行ってよかったね」と地域の方々に笑顔になっていただくこと。患者さんとそのご家族を笑顔にするために、急性期から慢性期、更に介護に至るまでのきめ細かいサービスを提供していきたいと思います。私たちは最新の設備がそろったピカピカの病院というわけではありませんし、手術件数をどんどん増やしていく先進の病院でもありません。そんな病院だからこそできることがある。私はそう信じています。今後も病院だけが患者さんの世界にならないよう、私たちが積極的に地域へ出て訪問看護や訪問リハビリを行い、住み慣れた自宅や施設で過ごせる人を増やしていくと同時に、ワクチン接種や健康診断も実施して来院する機会を増やし、医療と介護、入院と在宅療養がつながった地域づくりの一助となりたいと思います。
中村 智香子 病院長
1999年兵庫医科大学を卒業後、同大学病院で内科医として研鑽を積む。妊娠をきっかけに退職し、子育てに追われる日々の中で一度は医師として働くことの難しさを痛感するが、医師である両親の勧めもあって大和病院で復職。診療を通して病気を患った人やその家族が抱える不安に触れ、その人らしい暮らしをサポートできる病院を作るべく2024年に院長に就任。医療人としての心を大切に、笑顔になれる病院づくりに邁進している。