特定医療法人ダイワ会 大和病院
(大阪府 吹田市)
谷浦 武仁 院長
最終更新日:2021/12/06


急性期医療から介護へ手厚い橋渡しを実現
大阪メトロ御堂筋線江坂駅から阪急千里線豊津駅方面へ5分ほど歩いたところにある「大和病院」。1980年の開業後は療養患者の長期入院などを長らく担っていたが、2014年頃からは谷浦武仁院長のもとで「急性期医療と介護の連携」をめざし、病院改革を進めてきた。地域包括ケア病棟を設け、近隣の急性期病院から連携パスを介して患者を積極的に受け入れるほか、地域の開業医からの紹介やレスパイト入院にも対応。また入院患者には早期から積極的なリハビリテーションを行って回復を促し、自宅や施設へ戻った後も訪問看護や訪問リハビリで手厚くサポートしていく。今日の高齢者医療に重要なこれらの取り組みを同院で明るくパワフルにリードするのは、看護師や言語聴覚士などの多職種であり、「同じ理想を思い描くスタッフたちと前へ進んでいます」と谷浦院長も全幅の信頼を寄せている。「さらに地域とつながり、地域医療の新しい形をつくっていきたい」と語る谷浦院長に、同院ならではの取り組みの様子や今後の展望を詳しく語ってもらった。(取材日2021年10月25日)
最初にこちらの病院の歩みや地域における役割をご紹介ください。

吹田市は、国立循環器病研究センターや大阪大学医学部附属病院をはじめ、市立吹田市民病院、大阪府済生会千里病院や大阪府済生会吹田病院、吹田徳洲会病院など、急性期医療を行う病院が非常に多い地域です。そんな中、当院はかつて高齢者施設からの長期入院を多数受け入れていましたが、私は院長に就任するにあたって地域でより必要とされる医療を提供したいと考え、病院内のスタッフや職員から話を聞いたのですね。その結果、同じような思いを持つスタッフが院内各部署にいたこともあり、慢性期医療やリハビリテーションに特化して、地域や暮らしに密着した病院をめざすという方向性を定めました。そして新たに地域包括ケア病棟を設け、急性期病院から患者さんを受け入れ、自宅や施設へ戻っていくまでの橋渡しを担っています。また居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションと連携し、訪問診療や訪問看護、訪問リハビリも積極的に行っています。
では診療内容や、急性期病院との連携について教えてください。

外来では生活習慣病を中心とした内科診療のほか、膠原病やリウマチ、また生活習慣病と関連する眼科や皮膚科などの診療も行っています。高齢の方で多い誤嚥性肺炎や大腿骨頸部損傷などでは手術も行いますので、地域の開業医から紹介された急患の患者さんも診ています。また最近では、認知症や不眠症の診療も始めました。それから、私自身は血管病変や心臓カテーテルを専門としてきましたが、もっと早い時期に病気を見つけてほしい、予防をしてほしいという思いがあるので、人間ドックや健康診断にも力を入れています。急性期の病病連携については、大阪済生会千里病院と肺炎や尿路感染について地域連携パスをつくり、使う薬剤まで同じ治療を当院で引き継げるようにしました。転院後は当院でリハビリもできますので、急性期から回復期、そしてスムーズな在宅復帰へつなげていきたいと考えています。
こちらのリハビリにはどのような特徴がありますか?

高齢の患者さんが体調を崩すと、多くの場合まず食べられなくなります。点滴と絶食で回復を待つことが多いのですが、当院では入院当日から摂食嚥下リハビリを開始します。きちんとした食事ではなくお楽しみでもよいので、何が食べられるのか、またどのような姿勢や介助があれば食べられるか、嚥下機能などを評価し、摂食機能の回復を図ります。言語聴覚士である千代松亜季係長が率いるリハビリ部門では、理学療法・作業療法も含め個々の患者さんに応じたプログラムを実施しています。当初は数人であったリハビリ部門も今は20人近くになり、訪問リハビリにも取り組んでいます。在宅でのリハビリが強化できれば入院期間も短縮できるでしょうし、暮らしに密着したリハビリを行えますので、今後はより提供数を増やしたいですね。
訪問看護にも力を入れているそうですね。

在宅での介護では往診や訪問看護が重要となります。中でも訪問の機会が多く、患者さんの変化を早期に知ることができるのは看護師と言えます。ただ投薬や処置が必要であっても、現在は医師と連絡を取り指示を受けなければなりませんが、これからは看護師自身の判断で処置を始める必要があると考え、特定行為に携わる看護師の育成を始めました。それから、当院の源野幸世看護部長は介護支援専門員や看護師としての専門的な知識を有しており、訪問看護も経験していますので、当院の地域包括ケアで不足している点を見極め、対応してくれています。また彼女は地域の看護職や介護職とのネットワークを通じて、認知症カフェや新型コロナウイルスワクチンの即日接種といった地域のニーズも把握してくれます。事務部や薬剤部にも彼女と同様に積極的に動いてくれるスタッフがいて、当院の大きな財産だと感じています。
今後の高齢者医療について先生の思いをお聞かせください。

現在、慢性期病院や介護施設には90歳を超える高齢の方も非常に多いのですが、コロナ禍の影響もあり、ご家族が普段の様子を知ったり今後について考えたりする機会が限られています。「縁起でもない」と思われがちですが、体調が突然悪化したときに後悔しないよう、ぜひお元気な時期に「最期をどう過ごしたいのか」「医療行為はどこまでするのか」といったお話を、ご本人やご家族としてほしいですね。またこれからは、自宅や施設で高齢の方を介護することもさらに求められますので、当院のスタッフはより積極的に地域へ出て、訪問看護や訪問リハビリを展開していきます。同時に、地域の皆さんには当院のことを知って気軽に頼っていただけるよう、認知症カフェやワクチン接種などを実施して来院してもらえる機会も増やしています。医療と介護、入院と在宅療養が隙間なく連続する新たな高齢者医療をこの地域で提供できるよう、病院全体で頑張っていきたいですね。

谷浦 武仁 院長
1981年関西医科大学卒業。大阪警察病院、北大阪病院、上田病院などで循環器診療に従事した後、2013年に大和病院へ移り、2014年より院長を務める。専門は心血管病変。院内各部署の声に耳を傾け、地域の医療機関や高齢者施設との連携を深めながら新たな病院づくりにまい進。また母校の内科と連携し医学生の実習や後期臨床研修を受け入れるなど、後進の育成や看護師の教育にも注力している。日本循環器学会循環器専門医。