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社会福祉法人 石井記念愛染園 附属 愛染橋病院

(大阪府 大阪市浪速区)

西村 匡司 院長

最終更新日:2023/05/15

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周産期医療と回復期医療、2つの柱に注力

昔も今も個性的な店舗が集まり、多くの人でにぎわう日本橋筋。メインストリートの裏手、恵美須町駅からもほど近い一画に「社会福祉法人石井記念愛染園附属愛染橋病院」はある。古くから周産期医療に力を入れ、大阪では「お産の病院」として知られる同院だけに、現在も多数の分娩に対応。充実した産後ケアも特徴だ。また総合周産期母子医療センターとして、大阪府下全域から未熟児やハイリスク妊婦の救急搬送を24時間体制で受け入れ、高度な医療環境で母子の命を支えてきた。その一方、2021年から院長を務める西村匡司先生は、少子化が急速に進む現状を見据え、地域医療における同院の新たな役割を提唱。「急性期治療を終えた患者さんを迎え、しっかりとしたリハビリテーションを提供し、ご自宅へ帰っていただける病院でありたい」と語る。周産期医療という強みは維持しつつ、地域の幅広い世代から必要とされる病院をめざす西村先生に、診療の現状や将来的なビジョンを聞いた。
(取材日2023年2月27日)

こちらの病院は「お産の病院」として長い歴史があります。

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当院の歩みは、「児童福祉の父」と呼ばれる慈善事業家に始まります。彼は明治時代、岡山県を皮切りに孤児院を設立した人物で、「子どもを守るためには母子ともに支える必要がある」という思いを受け継いだ篤志家が、1937年に当院を開設しました。ですから周産期医療というのは当院の根幹ですし、積み重ねてきた歴史そのものでもあります。大阪では「お産の病院」として長く親しまれ、2005年には現在の場所へ新築移転。その際には、さまざまな要件を整えて「総合周産期母子医療センター」の指定を受けました。現在も、大阪府の新生児診療相互援助システム(NMCS)や産婦人科診療相互援助システム(OGCS)の中核的な病院として、府内全域から昼夜を問わず緊急搬送を受け入れています。近年は少子化や新型コロナウイルスの影響もあり分娩数はやや減りましたが、正常分娩を希望する方や外国籍の方も含め、さまざまな方が出産に訪れています。

こちらの周産期医療について、詳しくご紹介ください。

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正常な妊娠経過をたどっていたとしても、何が起こるかわからないのがお産です。「総合周産期母子医療センター」の要件でもありますが、当院では複数人の産婦人科の医師が24時間体制で勤務していますし、分娩には新生児を専門とする医師も必ず立ち会います。母子それぞれに集中治療を行える設備も設けていて、気がかりなことがある妊婦さんにも安全に出産してもらえるよう高水準な医療環境をめざしています。また産前・産後のケアに注力し、出産や子育てについて学ぶ「ファミリークラス」や産後の定期健診、さらに母乳の外来や、生後4ヵ月まで利用できる当院独自の産後ケアサービスなども実施。助産師が中心となり、お母さんの不安や悩みに寄り添っています。なお、近年では無痛分娩を希望される方が増えています。妊婦さんの負担軽減が期待できますが、硬膜外麻酔が必要になりますので、当院では麻酔科の医師が関わり、安全性を保てるよう努めています。

周産期以外の領域で、疾患やケガの治療にも取り組まれています。

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当院には内科、外科、整形外科、形成外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科などがあり、糖尿病などの生活習慣病、循環器疾患、骨折や関節疾患など、日常生活でよく起きる病気やケガの診療を実施しています。もちろんお子さんだけでなく、大人の患者さんも治療しています。今は高齢妊娠の妊婦さんが増えていて合併症などもありますので、総合的な周産期医療を行う上でも、成人疾患への対応は欠かせません。病院の体制上、周産期以外で24時間の救急を行うことは難しいのですが、当院を頼って外来に足を運んでくださった患者さんには、診療科を問わずきちんと応えていきたいですね。それから院内には地域包括ケア病床もあり、高次医療機関で急性期の治療を終えたものの、すぐご自宅に帰るのは難しい患者さんを受け入れています。これからも地域で必要とされる病院であるために、周産期に加え新たな診療の柱が必要になると考えています。

地域に根差した病院になるために、今後力を入れたいことは?

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急性期治療を終えた患者さんに、より質の高い回復期リハビリテーションを提供していきたいと考えています。近隣には急性期や重症例の治療を行う病院も多く、80代前後のご高齢の患者さんでも心疾患などで大がかりな手術を受けていると聞きます。しかし、ご高齢夫婦の2人暮らしや独居の方であれば、ご自分のことが自身でできるようにならないと家へは帰れません。当院の患者さんの大半は浪速区、阿倍野区、天王寺区など近隣の方ですので、ここでしっかりとリハビリテーション医療をして、歩いて退院できるような仕組みを整えていきたいのです。地域の開業医の先生方から患者さんをご紹介いただき、入院治療をしたり、時にはより高度な医療を提供できる病院へご紹介することも必要です。「地域の健康寿命に貢献できるような医療」を提供することが、今後当院に求められる役割の1つだと考え、まずは回復期リハビリテーションに力を入れたいと構想しています。

最後に、読者や地域の皆さんへメッセージをお願いします。

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今は時代の変化が非常に早く、医療の世界でも10年前の「当たり前」がそうではなくなっています。少子化の今、1回のお産の重みはさらに増していますので、安全かつ高度な周産期医療を提供する重要性も、より高まっているでしょう。また、患者さんの利便性や思いに寄り添うことも、もっと大事にするべきだと考えています。外来の待ち時間をコントロールしたり、出産後のお部屋や食事をより良いものにする、患者さんが快適に楽しく通院できる工夫をする、さらに、地域に暮らす幅広い年代の方からも頼られる病院になる、といった取り組みに、本腰を入れる必要があります。今後は「周産期医療」と「回復期を中心とした地域医療」という2つの柱を掲げ、診療科や職種を越えた一体感を育みながら、病院を盛り上げていきたいですね。長い歴史があるからこそ、10年、20年後にも質の高い医療を提供し、地域の皆さんに信頼される病院をめざします。

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西村 匡司 院長

1981年大阪大学医学部卒業。大阪府立母子保健総合医療センターなどで研鑽を積み、1992~1994年にはマサチューセッツ総合病院に留学、帰国後は大阪大学医学部附属病院などで集中治療に従事。2004年には徳島大学大学院救急集中治療医学講座教授に就任、その後同大学ヘルスバイオサイエンス研究部教授等も務め、集中治療の拡充や後進の育成に尽力。2021年4月から現職。徳島大学名誉教授。

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