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独立行政法人労働者健康安全機構 大阪ろうさい病院

(大阪府 堺市北区)

樂木 宏実 院長

最終更新日:2023/09/15

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高度専門医療の提供と勤労者医療が使命

労働災害に対応する病院として設立されるも、時代のニーズに合わせながら半世紀を超える歴史を積み重ねてきた「大阪ろうさい病院」。現在は治療と就労の両立支援をはじめ「働く人々に対応する病院」と同時に、高度専門医療を提供する地域の中核病院としての役割を担っている。2022年1月には新病院へ移転。手術件数の多い病院としてより多くの患者の受け入れをめざしながらも、医療者が患者一人ひとりと向き合えるよう“壁”を感じにくいオープンな設計を採用。高度専門医療を提供するための知識や技術以上に「地域のニーズを察知して時代に合った医療を提供していくことが大切」と話す樂木宏実院長に、病院の成り立ちや特色、注力している診療、新病院への思いなどを聞いた。(取材日2021年9月10日/再取材日2023年6月26日)

こちらの成り立ちと特色を教えてください。

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高度経済成長期に全国で労働災害事故が多発したことを契機に、当時の労働省が労働福祉事業団を設立し、その傘下に労災に対応する病院を全国につくりました。その一つである当院は1962年、堺臨海工業地帯の労災問題を背景に設置された病院です。現在は労働者のメンタルヘルスの不調や生活習慣病への対応がメインとなってきています。政策医療だけでなく、同時に求められているのは、地域の中核病院としての役割です。堺市は救急医療から入院治療が完結する2次医療圏を単独で形成しておりますので、当院では大学病院同等の「高度専門医療の提供」をコンセプトに、日々診療にあたっています。

高度専門医療について教えてください。

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当院の基本理念は「誠実で質の高い医療を行い、すべての方々から選ばれる病院に」。患者さんの体への負担が少なく、できるだけ短期間で退院できるような“質の高い”治療をめざし、低侵襲の内視鏡治療、ロボット支援下手術、より精度を高めるためのナビゲーション手術など高度専門医療に取り組んでいます。ただし、医療者側の勝手な思いで行うのではなく、患者さんとご家族に十分ご納得・ご理解いただいた上で先進的な医療を提供すること、その思いが“誠実”という言葉に込められています。高度専門医療とは、単に先進の医療技術を用いた診療というのではなく、例えばがんを例にとると、他科との連携により治療の順番や治療法の選択などチーム医療で適切なコースを選ぶことができる体制をも指します。当院のがん治療は内科・外科系の各科だけでなく、放射線診断科、放射線治療科、緩和ケア科などさまざまな分野の医療者が関わり高度専門医療を実践しています。

注力している診療や取り組みについて教えてください。

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2020年4月に地域がん診療連携拠点病院となり、先進のがん治療を提供するのはもちろん、周辺の病院とも連携を取りながらその知識・技術を伝え、当院以外のどこででも同水準のがん治療が受けられる「均てん化」を図るための取り組みも行っています。また若いがん患者さんが治療のために働くことを諦める、働くためにがん治療を中断・中止することがないよう、治療と就労の両立支援を行うのも労災病院として大切な使命。法律的なバックアップもできる専門のコーディネーターを配置し、主治医と勤務先の間に立って患者さんをサポートします。循環器領域では内科・外科の医師を中心に、南大阪地区内でも規模が大きく、実績を積み上げている「ハートチーム」を結成し、チーム医療にも積極的に取り組んでいます。また、整形外科、眼科をはじめ耳鼻咽喉科・頭頸部外科、泌尿器科など多くの科が、それぞれに大阪府の中でも数多くの実績を残しています。

2022年1月からは病院を移転オープンされました。

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新病院では特に「高度専門医療の拡充」と「救急医療を含む急性期医療の充実」を図っています。手術室は13室から16室に増やし、集中治療室はICU12床、HCU・CCU・SCU16室と倍増させました。救急部門では、放射線部門、内視鏡部門が隣接し、救急用エレベーターで3階の集中治療室や心臓カテーテル室、手術室への迅速な搬送を実現しました。さらに心臓カテーテル室や内視鏡検査・治療室も増設し、回復室も9床設けることで麻酔下内視鏡の充実もめざしました。がん治療の化学療法室は一般の外来から独立させ、21床から31床に増床しています。これだけ大きな病院を支えていくには人材育成も欠かせません。各診療科単位だけでなく、統合的に指導できるシステムを採用して後進の育成に努めています。すべての完成は2024年12月を予定しており、駐車場拡充やバスの院内乗り入れなど、より通いやすく利便性の高い病院をめざしていきます。

地域の方々にメッセージをお願いします。

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私は2023年4月から院長に就任しましたが、当病院のすべての職種の方々からこの病院で働く誇りとこの地域に対する愛情を感じました。堺市は医師会と行政の結びつきが強く、何か問題があれば全体でカバーできる環境が整っています。高齢化による複数疾患患者の増加、生活様式の変容など、社会情勢はますます地域医療連携ネットワークの構築を必須としています。当院でも少子化対策としての産科・小児科診療の充実、介護・福祉も合わせた地域医療機関との多職種連携、市民向け啓発活動などのヘルスケア支援など、さまざまな形で力を注いでいきたいと思っています。私はこれまで高血圧治療ガイドラインの作成や老年医学研究、フレイル対策などの高齢者医療に携わってきました。これまでの経験を生かし、高度専門医療機関だからこそ実現できる地域のニーズに合った医療を、地域の患者さん、そのご家族の方、開業医の先生方に届けていきたいと思っています。

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樂木 宏実 院長

1984年大阪大学医学部卒業。1989年米国ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院内科、米国スタンフォード大学心臓血管内科研究員、2007年大阪大学大学院医学系研究科内科学講座教授などを経て、2023年4月現職。老年医学や高血圧学を専門に研究し、高血圧治療ガイドライン作成やフレイル対策、老化の研究に従事。「元気な高齢社会」への展開をめざす。日本老年医学会理事、日本高血圧学会理事。

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