日本赤十字社 京都第二赤十字病院
(京都府 京都市上京区)
魚嶋 伸彦 院長
最終更新日:2025/05/16


地域からの信頼に、良質な医療で応える
1926年に日本赤十字社京都支部療院として開設され、来年100周年を迎える「京都第二赤十字病院」。現在では他の医療機関では対応が難しい症例やまれな状況についても、設備とスタッフを充実させて対応し、667床を有する病院として地域の高度急性期医療の役割を持ち、各診療科が先進的で専門的な医療を提供している。理念に「歩み入る人にやすらぎを帰りゆく人に幸せを」を掲げる同院では、医師をはじめ多職種のスタッフが、患者や家族と一緒になって健康をめざす医療を提供することを目標とする。高度急性期医療を担う病院としての役割を果たしながら、地域のクリニックや他の病院などとの密接な連携を生かして、 さまざまな疾患に悩む患者、家族に長く寄り添う姿勢を大切にしている。また開業医向けの広報誌の発行や地域の医師会との症例検討会など、各医療機関と「顔の見える関係づくり」にも熱心に対応し、地域の病院として親しまれている。「信頼される病院として、これからも歩み続けたい」と語る魚嶋伸彦院長に、地域における役割や特色ある取り組みなどについて話を聞いた。(取材日2025年4月9日)
地域における病院の位置づけや役割を教えてください。

昭和初期から救急医療に取り組んできた歴史があり、1978年に救命救急センターが設けられた医療機関です。2024年4月には高度救命救急センターの指定を受け、地域はもちろん京都府民にとって「医療の最後の砦」として三次救急を担っています。救急科の特徴として自己完結型救急を実践しており、重症外傷手術、血管内治療、集中治療に関しては、それぞれの救急科医員がサブスペシャリティーを持ち、その治療を行っています。また包括的脳卒中センターを設置し、脳梗塞や脳出血など脳血管疾患の救急搬入を数多く受け入れています。さらに循環器内科、心臓外科では対応が難しいような心筋梗塞などの循環器系の疾患に関しても、カテーテル手術をはじめ緊急手術に応じています。また三次救急を担うからこそ小児救急に応えることが大きな役割と捉え、夜間や休日の救急診療や入院を含めた受け入れなどにおいて、他病院と連携しながらこの地域を支えています。
「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。

救急とともに重点を置くのが、がん診療です。当病院では消化器や呼吸器のがん患者さんが多いのですが、急性白血病や悪性リンパ腫など血液のがんにも注力しています。ロボット手術も力点を置く分野で、前立腺がんや胃がん、大腸がん、呼吸器系がんなどの手術で生かして患者さんに低侵襲な治療を提供しています。また前立腺の生検ではMRIと超音波検査を融合させた画像ガイド下で針生検を行うための機械を導入し、採取すべき細胞の部位の精密な特定が望めるようになりました。また複数の診療科を統括する「がん診療推進室」を設置し、連携して診療にあたっているほか、臨床倫理委員会を立ち上げてガイドラインをもとに終末期医療についての対応を検討したり、がん相談の専門窓口を設置して経済的な問題や社会的課題をサポートしたりと、さまざまな専門スタッフが協力して、患者さんやご家族のために多様な取り組みを行っています。
ほかに、どのような診療に注力していますか?

クローン病や潰瘍性大腸炎など自己免疫機能が関わる病気については、専門の医師を中心に多職種でチームを編成して積極的に対応しています。専門的な治療を望まれる患者さんは多く、遠方からもお越しになっています。また整形外科の膝や股関節の手術については、より精密な施術が行える支援ロボットを導入しています。以前は医師の経験を頼りに行っていた手術も、支援ロボットを活用することで施術の誤差をより少なくし、術後のスムーズな機能回復がめざせるようになっています。さらに耳の手術に関しても先進のナビゲーションシステムを導入しました。より安全性に配慮し、内視鏡下による精度にこだわった手術を実施しています。ほかに、リウマチや膠原病をはじめとする自己免疫疾患も力を入れている領域です。SLEなどの指定難病にも対応し、自己免疫に関する専門部門を設けて、膠原病部門の医師を中心とした看護師や薬剤師などのチームが対応しています。
診療以外で力を入れていることはありますか?

災害救助は、当院の所属する日本赤十字社でも大きな取り組みの一つとして行っています。年に数回、定期的に大規模な災害訓練を実施するだけでなく、実際に国内や海外でも医療活動を行い、能登半島地震の際には早期に救護班を派遣しました。またそういった活動を知っていただきたいと「赤十字フェスタ」も開催しています。そもそも当院は高度急性期医療を担う病院として救急医療を行うと同時に、地域医療機関を支援する病院としても尽力してきました。最近では「いつでも頼っていただける病院でありたい」と、京都第一赤十字病院、京都府立医科大学附属病院と共同で、地域のクリニックと病院とをつなぐウェブ予約システムを導入しました。地域医療機関からの依頼に15分以内に返答することを原則としているため、スムーズな診療が提供できています。地域の開業医の先生方と地域の基幹病院が協力することで、地域により一層の安心を届けたいと考えています。
読者や地域の皆さんのメッセージをお願いします。

このたび、院長に就任して改めて感じたのは、地域との絆でした。長きにわたり高度急性期医療を提供し続けてきたからこそ、地域の皆さまとの信頼関係が構築できたのだと思います。今後もこうした地域との結びつきを大切に、良質な医療を提供し続けたいと考えています。そのために「選ばれる病院、働きたい病院をめざす」というスローガンを掲げました。各医療機関と情報共有・交換しながら、患者さんに「第二日赤病院なら安心」と思っていただける医療体制を構築していきます。また、継続的に質の良い医療を提供するためには、全スタッフが生き生きと働ける職場づくりも重要です。なぜならそれが患者さんの満足度につながると考えるからです。患者さんにとってより診療を受けやすい病院となるために、近く病院の建て替えも検討されています。地域の皆さまにとって「なくてはならない存在」であり続けられるよう、これからも歩み続けてまいります。

魚嶋 伸彦 院長
1987年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学第一内科に入局。大阪国際がんセンターやパナソニック健康保険組合松下記念病院でなどを経た後、2014年より京都赤十字第二病院血液内科に勤務。2025年4月より現職。多発性骨髄腫をはじめとする血液疾患の治療に関してオールラウンドに対応できることをめざし、造血幹細胞移植にも数多く携わる。趣味はラグビー観戦。