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日本赤十字社 福岡赤十字病院

(福岡県 福岡市南区)

中房 祐司 院長

最終更新日:2023/12/12

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急性期の治療を担う街と一体化した医療拠点

福岡市南区を中心に急性期医療を担う大規模病院として、70年以上の歴史を持つ「福岡赤十字病院」。災害医療や国際医療の志を掲げながらも地域密着の姿勢を強調し、中房祐司院長がモットーとするのは患者やその家族が求める“最良の医療”の提供だ。虚血性心疾患、不整脈、心不全の3つの柱から成り立つ循環器診療、安全性を重視したロボット支援手術、腎疾患を高度な専門性で診療する腎部門、地域がん診療連携拠点病院を担うなど高度医療を追求する一方で、院内コンサートや市民公開講座の開催といった取り組みを通して地域に開かれた病院をめざしている。加えて病院には壁がなく周囲には遊歩道が整備され、“街と一体化した病院”を体現。「気兼ねなく来ることができる病院で、優しく丁寧な医療を提供したい」と話す中房院長に、めざす病院の姿をはじめ、循環器医療の取り組みや腎部門の機能、今後の展望などについて話を聞いた。(取材日2021年11月15日/情報更新日2023年12月7日)

まずは病院が掲げる理念についてお聞かせいただけますか?

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私たちは理念として「信頼と調和に基づく最良の医療〜地域を尊重、世界を視野に」という言葉を掲げています。赤十字病院には災害救援や国際救援の志がありますから世界を視野に入れているものの、地域のクリニックの先生方、そして地域住民の皆さんと信頼関係を結びながら、最良の医療を提供していきたいと考えています。最高の医療、最善の医療と言葉はさまざまありますが、レベルの高い知識と技術を提供するだけではなく、患者さんやその家族が求める医療こそが最良の医療だと思っています。そのためには医師同士はもちろん、看護スタッフ、事務スタッフなどとの連携は欠かすことができません。例えば医師だけでは患者さんがどういう生活環境で、どのようなことを求めているかすべてを把握することは困難ですし、患者さんに近い位置にいるスタッフの持つ情報は非常に重要です。だからこそあえて調和という言葉を使っています。

循環器疾患や糖尿病、腎不全の患者さんが多いとお聞きしました。

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循環器領域では狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、不整脈、心不全の3つの柱があります。虚血性心疾患の患者さんも多いのですが、3年ほど前から不整脈の治療にも力を入れ、カテーテルアブレーション治療を行う専用の血管造影室を新設しました。そのため非常にスムーズに処置ができるようになっています。以来、循環器疾患を持つ患者さんの来院が増えています。もちろん約40年前から腎部門を設置しているため、腎不全や透析を必要とするような重度の糖尿病の患者さんも多いです。ワンフロアを透析室にして50台の機械が稼働しています。また透析の患者さんは併存疾患を持っている方が多いので、ほかの外科の部門と連携して手術を行ったり、周辺の施設で維持透析されている方のトラブル時の受け皿としての役割を担ったり、腎移植にも対応するなど、腎部門としてさまざまな機能を持たせています。

ロボット支援手術にも対応されているそうですね。

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専門の施設があるわけではないのですが、外科の副院長を中心として、胃のグループ、直腸のグループ、肺のグループ、泌尿器科や産婦人科のスタッフを含め、2018年に低侵襲手術部門を組織しました。そこではロボット支援手術を中心に、腹腔鏡や内視鏡の手術に取り組んでいます。ロボット支援手術の適用は胃がん、直腸がん、前立腺がん、腎臓がん、肺がんですが、安全性にも配慮しており、希望される方も増えています。がんで言えば当院は2021年4月から地域がん診療連携拠点病院となりました。これは私の念願でもあり約10年かけて実現したものです。当院に足りなかった放射線治療が充実し、緊急の緩和照射治療などにも対応できるようになりました。加えて悪性リンパ腫や白血病などの治療も可能ですし、今後は内科的治療も強化するためがんゲノム医療連携病院の申請をめざしています。さらに治療の選択肢を増やしていきたいですね。

患者支援や地域イベントなどの取り組みも特徴的ですね。

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患者さんが安心して治療できるように2021年4月に設置したのが、患者サポートセンターです。外来では時間がなく、診療以外の説明はどうしても薄くなってしまいます。そのため薬や入院中の過ごし方、退院後の回復期のこと、あるいは社会復帰支援を、薬剤師、看護師、ソーシャルワーカーといった専門家がそれぞれ説明できるようにしました。診療の効率化という側面もありますが、患者さんの満足度にもつながっていくのではないかと思っています。いずれは専任の医師も配置し、検査などにも対応できるようにしたいですね。また地域に対しては敷地内に交番を誘致することで、病院一帯を困り事対応の拠点にしています。さらに地域交流を目的に、院内でのコンサート、敷地内での産直マルシェ、市民公開講座なども開催しています。当院の周囲には壁がないのですが、これも街との一体化が目的。地域の方にも親しまれる存在になりたいと思います。

最後に今後の展望と地域の方にメッセージをお願いします。

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福岡市は人口が増えており、高齢人口も増えるにつれて医療ニーズも高まっていくといわれています。そうした中、私たちとしては診療科を拡充していくために、スタッフを増強し診療機能を高めていきたいと思います。それが今後5年、10年の目標です。また地域の方々に対しては、医療機能を充実させること、医療レベルを高めるということはもちろんですが、安心を提供するための急性期医療を継続しながらも、医療の快適性も追求していければと考えています。例えば現在、外来のコンシェルジュという形でキャビンアテンダントの方にお手伝いいただいています。こうやって外部の力も参考にしながら、患者さんへの配慮や接遇を学び反映させていくことで、病院にいらっしゃる皆さんが快適に過ごせる環境をつくれるはず。ゆくゆくは病棟にまで拡大し、快適な環境の中で、優しく丁寧な医療を提供し続けていきたいと思います。

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中房 祐司 院長

宮崎県出身。1983年に九州大学医学部を卒業。専門は外科。約15年にわたり臓器移植の研究や臨床に携わった後、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医を取得。2009年4月に福岡赤十字病院に外科部長として赴任し、大腸がんや乳がんの診療を行いながら、2012年に副院長に就任。2020年4月から現職。

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