全国の頼れる病院・総合病院・大学病院を検索
病院・総合病院・大学病院7,983件の情報を掲載(2024年4月28日現在)

  1. TOP
  2. 兵庫県
  3. 西宮市
  4. 武庫川駅
  5. 学校法人兵庫医科大学 兵庫医科大学病院
  6. 阪上 雅史 病院長

学校法人兵庫医科大学 兵庫医科大学病院

(兵庫県 西宮市)

阪上 雅史 病院長

最終更新日:2024/01/19

Main z52682 20230818 0039Main z52682 20230818 0039

地域医療で大学病院ならではの役割を果たす

武庫川のほとりで歴史を刻む「兵庫医科大学病院」は、このほど開設50周年を迎えた。地域に密着した医療を展開しながら、大学病院として高度で先進的な治療や研究、人材の育成にも力を入れる同院は、阪神間で親しまれ信頼を寄せられる医療機関だ。阪上雅史病院長は「新型コロナウイルス感染症流行下においても、これまで培ってきた“オール兵庫医大”の精神で、感染制御部を中心に病院を挙げて診療にあたり、多くの重症患者を診療してきました」と穏やかな口調で振り返る。阪上病院長は耳鼻咽喉科において約25年にわたり診療をけん引し、2019年からは病院長に就任、2026年に運用開始が予定される新病院棟の建設プロジェクトも取りまとめてきた。「新病院棟では、患者さんの療養環境の良さや利便性が飛躍的に高まります」と展望し、同時に心理的安全性が高く、風通しの良い多職種連携に基づいたチーム医療にも注力する。取材では、ハード、ソフト両面からさらに安全性と質の高い病院をめざす同院の診療理念や、特色ある取り組みについて聞いた。(取材日2023年8月18日)

最初に、貴院の歴史や診療の理念をお聞かせください。

1 47678 20230817 %e5%8a%a0%e8%97%a4 %e5%a4%96%e8%a6%b34

当院は1972年、大学の開校とともに開設されました。創設者の森村茂樹先生は精神科の医師で、太平洋戦争中は軍医として戦地へ赴き、終戦後は戦争のストレスで増加していた薬物やアルコール中毒患者の治療に取り組みました。父から継承した精神科の武庫川脳病院や、新たに設けた社会福祉施設で診療に尽力されましたが、患者を本当に治療するためには、より総合的で高度な医療技術や医療人材の育成が必要だと考え、大学や当院の開設に奔走。このため、大学の建学の精神では「社会福祉への奉仕」が筆頭で、3番目に「人間への幅の広い科学的理解」が挙げられていますし、当院の基本方針にも「患者さんの立場に立った医療の実践」や「人間性豊かな優れた医療人の育成」があります。このような歴史をもつ当院だけに、地域と密着した医療が特色ですし、患者さんから「医師やスタッフが優しい、親しみやすい」と言っていただける機会も多いですね。

では、診療の概要や特色ある治療についてご紹介ください。

2 22 03 ivr

人口の多い阪神間には、高度な診療を行う大規模な急性期病院が各地域にあります。その中でも当院は大学病院として、41と幅広い診療科を設けて高度な医療を提供し、さらに研究や人材育成にも取り組むのが当院の役割です。ニーズの高いがん診療では地域がん診療連携拠点病院やがんゲノム医療連携病院の指定を受け、手術治療、化学療法、IVR(interventional radiology)や放射線療法、免疫療法、さらに光免疫療法も含め、先進的な診断・治療が可能です。特に消化器がんでは豊富な治療実績があり、難症例の多い肝胆膵のがんにも対応。血液腫瘍ではCAR-T細胞療法など新しい治療も積極的に実施しています。また、地域の事情から中皮腫の診療や病態解明に注力しており、中皮腫センターには全国から患者さんが来られています。私の専門である耳鼻咽喉科でも、高難度の手術を含めQOLに配慮した総合的な治療を提供しています。

チーム医療もこちらの特色だそうですね。

3 21 03 %e7%b7%a9%e5%92%8c%e3%82%b1%e3%82%a2%e3%83%81%e3%83%bc%e3%83%a0

現在は感染対策や認知症ケア、褥瘡(じょくそう)対策、栄養サポートなどの分野で、多職種のスタッフからなる15の医療チームを結成。より患者さんに近い立場で、あるいは各部署をつなぐような活動をしています。当院では歴史的な経緯もあり、以前から職種を問わず患者さんに寄り添う医療が行われていました。阪神淡路大震災では医学生まで加わる「オール兵庫医大」の体制で、また2007年のJR福知山線脱線事故では救急救命センターに各部署から応援を出して、でき得る限りの対応を行ってきました。こういった経験は新型コロナウイルス感染症にも生かされ、感染制御部や救急救命センター、看護部が中心になり、流行早期から重症例を中心に多数の患者を受け入れて感染症の外来も開設。また院内では感染対策を徹底し、診療機能の維持に努めてきました。今後も多職種連携チームによるきめ細かな医療で、患者さんやご家族の満足度を高めていきたいですね。

地域との連携に関しては、どのように取り組まれていますか?

4 14 03 dsc 0485

地域からのニーズが高い救急診療に関して、当院は兵庫県の三次救急医療機関であり、救急救命センターでは阪神間の消防隊と連携して多数の救急搬送を受け入れています。また診療とともに、救急隊や外部医療機関などと情報をスムーズに共有できるシステムの構築に向けた研究も進めています。院内には複数のDMATチームがあり、災害医療への備えも日常的に行っています。それから、地域医療機関との窓口となるのが「医療支援センター」で、病診・病病連携や、患者さんの入退院支援を一手に担当。近年では、地域の先生方を対象とした「サタデーモーニングセミナー」を月1回、オンラインで開催しています。各科の医師が先進のトピックを30分程度で解説しており、視聴数は増えていますね。さらに予防医学やへき地医療など、今後の地域医療に不可欠な領域での研究や臨床にも力を入れることで、研究教育機関としての役割を果たしたいと考えています。

新病院棟のスタートに向けて、今後の展望をお聞かせください。

5 n0282150 20231219 1

2013年には救急医療・手術・周産期医療・災害医療に特化した急性医療総合センターを開設しましたが、初診の患者さんが訪れる1号棟は老朽化が進み、デジタル環境への対応も不十分です。そこで2023年5月から建設が始まった新病院棟では「Human Centered Hospital」、人が主役の未来型スマート病院をめざします。内科の外来と外科の外来の間の階に検査部門を配置して移動の負担を軽減するほか、個室の増加やデジタル設備の充実などで患者さんの療養環境を高めますし、職員や実習生が過ごすスペースも拡大します。地域の先生方からの紹介予約をオンライン化できるよう改善を進め、外来の時間や場所を柔軟に設定して、外来患者さんの待ち時間軽減を図ります。2026年春からの運用に向けて、ハード、ソフト両面をより充実させ、これからの時代において、高度な医療を安全に提供できる患者さんに優しい病院でありたいですね。

Main z52682 20230818 0039

阪上 雅史 病院長

1980年大阪大学医学部卒業、1984年同大学院医学系研究科卒業後、香川医科大学等で勤務し、1987年よりミネソタ大学Research Fellow。大阪大学医学部講師を経て1994年より兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授、2012年より兵庫医科大学病院副院長、2019年には同病院長に就任。専門は難聴の診断、中内耳や人工内耳の手術。病院長として心理的安全性の高い職場づくりにも注力する。

access.png