特定医療法人一輝会 荻原記念病院
(兵庫県 神戸市長田区)
荻原 徹 理事長
最終更新日:2024/06/17


地域に開かれたフレンドリーな病院へ
荻原みさき病院と荻原整形外科病院の統合により、2023年4月に誕生した「荻原記念病院」。JR神戸線と神戸市営地下鉄山手線・海岸線の新長田駅から徒歩圏内という、荻原徹理事長がこだわり抜いた便利な立地に移転、開院した病院だ。病院と住居の一体型という建物の構造もさることながら、患者の心の健康まで考えた同院の取り組みは独創的で興味深い。荻原理事長から次々と飛び出すアイデアは斬新なものばかりで、つい時を忘れて話を聞いてしまう。同時に、院内が明るく穏やかな雰囲気である理由の一つである荻原理事長の人となりにふれ、取材後には心が温かくなっていた。「あなたの未来に笑顔を届ける存在となる」という存在意義のもと、同院に関わるすべての人間の幸せを願う荻原理事長に、統合後の診療体制や強み、現在の思いなどを聞いた。(取材日2024年5月16日)
初めに病院建設までのお話や、新病院の特徴をお聞きします。

統合自体はかなり前から検討していたのですが、しばらくは土地探しに苦労しました。高齢の患者さんや付き添いの方などが来院しやすい駅近の立地で、かつ適当な広さのある物件になかなか巡り合えなかったんです。それでも何とか土地を見つけ、さらにハウスメーカーさんとのご縁もあって、病院と分譲マンションが一体化した複合施設を建設するに至りました。この建物の大きな特徴は、病院からマンションの住人に対してメッセージを届けられること。予防接種や健康イベントなどの案内を各部屋のインターホンから流せる仕様になっています。先日は病院の1周年記念イベントにもご招待し、近隣の中学校の吹奏楽部による演奏などをちょっとしたお祭りのような感じで楽しんでいただきました。このように、地域に根差すという意味で「かかる」ではなく「病気でなくとも訪れる」場所をめざし、誰でも入れる病院づくりに取り組んでいます。
統合後はリハビリも一層強化されたのですか?

リハビリスタッフが70人から90人ほどに増え、患者さんの在宅復帰率や身体の回復率の向上もさらに望めるようになったなど、さまざまな面で進化しています。また、退院後のフォローアップとして外来リハビリや訪問リハビリも実施できる体制も整えています。あとは、1周年記念イベントの会場にもなった庭園も特色ですね。こちらはリハビリの患者さんの歩行訓練ができるよう、わざと傾斜をつけたり高い段差のある階段を設置したりと工夫がなされています。また当院は「リハビリで選ばれる病院」を目標に、他院の回復期リハビリテーション病棟で診るのが難しい重篤な方も受け入れています。そうした患者さんの入院にも対応できるのは、内科の医師が多くいるからこそ。当院には脳神経内科の常勤医師が3人在籍しているほか、神戸大学からリウマチ科や糖尿病内科など幅広い分野を専門に持つ先生方に診療にお越しいただいています。
ぜひ、内科など他科の診療体制についても教えてください。

当院では先に述べた領域に加え、曜日ごとに呼吸器内科、ペインクリニック内科、循環器内科の外来を複数開設し、一般内科の併診もできる体制を整えています。いずれも専門性が高く、急性期に近い状態の方も診療できるのが強みです。内科の充実が最終的にリハビリの患者さんの受け入れにつながっており、回復期・亜急性期を担う病院でこれだけの専門家がそろっているところは少ないのではないでしょうか。同じく、歯科医師が常駐しているのも珍しいかと思います。当院では統合時から歯科専用の外来ブースを設け、私の同級生でもある歯科医師が歯科衛生士とともに入院・外来患者さんの診療を行っています。近年は食事や栄養の観点から回復期における歯科連携が重視されていますので、歯科が活躍してくれるのはとてもありがたいですね。さらに耳鼻咽喉科や精神科の先生も毎週病棟を回り、患者さんの耳のお悩みや精神的なお困り事に向き合ってくれています。
そのほか、多彩かつ珍しい取り組みも多いそうですね。

入院患者さんに自宅にいるのと同じように過ごし、時には楽しいことも経験していただくため、いろいろなアイデアのもとリハビリや催し物を実施しています。昨年には園芸を通した支援活動に精通するスタッフを採用し、庭に花を植えたり生けたりする園芸を通し不調を抱える患者さんへの支援を始めました。花というのは人の心を和らげるものですよね。年に数回動物と触れ合う機会も設けており、皆さんにはこうした楽しい経験を通して穏やかな気持ちになってもらえたらと思っています。ちなみに、当院ではペットの面会が可能です。そして私個人の取り組みとして、朝食の時間に全病棟を回ってあいさつをする「おはよう回診」を長く続けています。「今日退院ですね」などと話しかけた際に、患者さんからも明るくあいさつを返していただけたらうれしいですね。服装も患者さんとの関係性や距離感を考え、白衣ではなくポロシャツを着ています。
最後に今後の意気込みと、読者へのメッセージをお願いします。

リハビリスタッフは体の外側の動きが回復するようサポートし、看護師は体温や血圧といった体の内側の状態を管理します。そうやって多職種が一人の患者さんを各視点からサポートするチーム医療、言い換えるならば「人の和」が診療で最も大切だと考えています。「この方が良くなるように」というぶれない共通目的のもと、それぞれの立場でできることをする。そして情報をしっかり共有しながら退院をめざす動きがここ1年で確立されてきました。もう一つ、当院ではケアワーカー部という、一般的には看護助手にあたるスタッフが患者さんのお世話を行う部署をつくりました。看護師から指示を受けるのではなく独自に動いているのが特徴で、病棟でのイベント企画や食事の準備など、少しでも入院生活が充実したものになるよう取り組んでいます。今後もスタッフ一丸となり、地域の皆さんにご満足いただける病院をめざして誠実に医療に取り組んでまいります。

荻原 徹 理事長
1982年川崎医科大学出身。同大学大学院修了後は整形外科の医師として研鑽を積む。現代医療におけるリハビリテーションの重要性を早くから認識し、患者の社会復帰に向けたリハビリができる施設の実現に取り組む。1995年に荻原みさき病院院長に就任。「神戸屈指のリハビリ病院」をめざして患者に寄り添い、医療を通して地域へ貢献するために尽力している。日本整形外科学会認定整形外科専門医。