社会医療法人 志聖会 総合犬山中央病院
(愛知県 犬山市)
齊藤 雅也 院長
最終更新日:2025/10/22


現代社会のニーズに応えた医療にも注力
犬山城の城下町として歴史を重ね、今は観光地として栄える犬山市。この歴史ある街で、民間医療機関でありながら市民病院の立ち位置の医療提供を担うのが、「総合犬山中央病院」だ。1982年の開設以降、救急医療体制の整備や各診療科の充実を図り、急性期医療において第一とされる「病気の治療」のために尽力してきた。一方で、患者が退院後の生活に困ることのないよう、「生活力の回復」にも力を注ぎ、2000年代以降、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟も開設。急性期から回復期、その先にある生活まで、満遍なくフォローできるケアミックス型の医療を提供している。齊藤雅也院長は、前職で25年間にわたり病院運営において実績を重ねてきた経験豊富なドクター。「経験を生かし、当院においてもより良い病院運営を図っていきたい」と穏やかな笑顔で思いを語る齊藤院長に、病院の機能向上や新しく開設された専門の外来について話を聞いた。(取材日2025年8月29日)
病院の特徴について教えてください。

急性期から回復期までを一つのまとまりとして捉え、治療やリハビリテーションの内容に落とし込んでいく、いわゆるケアミックス型の診療体制であることが、当院の強みです。「治す」ことを第一とする急性期医療は、あくまで医療の一部に過ぎません。当院では、治療後の患者さんが元の生活に戻るために、歩く・食べるといった生活力を回復させることも必要と考えてきました。例えば、大腿骨頸部骨折の手術後の機能回復などですね。地域包括ケア病棟もありますから、長期入院の筋力低下による歩行困難や摂食障害などの患者さんも、引き続き入院しながら栄養管理のもとでリハビリを継続できます。また、健診部門を充実させ、予防医学にも注力しています。脳ドックや内視鏡検査など、各専門の医師が精密な検診をめざします。
昨年、ウーマンライフサポートセンターを開設されたそうですね。

2024年4月に立ち上げ、動画配信サービスでのスタッフによる詳しい解説のかいあって、広く認知されました。患者さんのニーズも高まっています。内容は、女性の生活の質を上げるために複数の診療科が連携してサポートするもの。今のところ、泌尿器科と婦人科の医師をはじめ、排尿機能検査について専門性を持つ看護師、理学療法士、管理栄養士など多職種が連携し、尿漏れや神経性膀胱炎、骨盤臓器脱などの排尿とデリケートゾーンの困り事などに対応しています。それらの悩みはさまざまな症状が重なっていたり、肥満を伴っていたりと、複数の診療科の領域となるため、泌尿器科だけで診療するよりもより有用な治療が見込めます。治療に伴って行う、骨盤底筋体操や食事指導などの生活全般に関わる助言にも対応しています。スタッフもほぼ女性ですし、患者さんも受診しやすいのではと思います。将来的には、美容皮膚科や乳腺外科などとの連携も考えています。
この数年、病院の改善策にも取り組んでこられたそうですね。

数年前、「医療の質の担保」を目的に、病院機能評価を受けました。その際、さまざまな場所の整理整頓がおろそかになっていることに気づかされました。そこで、改善策に取り組むようになったんです。一般の製造業では当たり前の取り組みですが、職場環境の改善で効率化や安全性を高めるための「5S活動」があります。整理、整頓、清潔、清掃、習慣のSで、医療界でもそれは重要です。例えば、注射薬や消毒薬が同じ場所に雑然と置いてあれば、間違える可能性もあり、医療ミスにつながりますよね。そういったことがないよう、整理整頓を習慣化するのです。全スタッフで5S活動を徹底し、不要なものをたくさん廃棄しました。取り組んでいくうちに患者さんからもお褒めの言葉をいただき、その有用性や意義をみんなが実感するようになったのです。2024年に公益財団法人日本医療機能評価機構の認定をいただき、今も継続の励みになっています。
貴院の地域における役割を教えてください。

地域の医療機関との病診連携と病病連携はさることながら、行政との連携もたいへん重視しています。例えば、退院後の患者さんの生活を身近に支える開業医の先生方の存在は、私たちにとっても欠かせません。入院やリハビリが必要となった場合、すぐに当院の受け入れ体制が整っていれば、開業医の先生方にとっても心強いものと思います。地元医師会を通じて、顔の見える連携を心がけています。また、近年では犬山市の要請を受け、市内6ヵ所にある介護保険相談センターの1つを運営することとなり、医療だけでなく介護分野に関する窓口の一つとして、当院が立つこととなりました。機能分化が進む中、医療・介護において多様な連携が取れていることも当院の強みであり、大きな責任であると感じています。
患者さんや地域の方へのメッセージをお願いします。

現在、駐車場に新病棟を建設中で、駐車場が狭くなりご迷惑をおかけしていますが、2027年1月完成を目標に工事を進めています。病室は、288床から223床に減らし、ゆとりを持った設計です。現代では、避難所でもプライべート空間が重視される時代ですので、そのほとんどを個室としました。完成を楽しみにしてください。公共施設で市民講話を行うなど、啓発活動にも取り組んでいます。こうした取り組みを通して市民の皆さんに病気について知っていただき、早期に治療を開始できるようにしていくのも、私たちの大切な役割。これからも病気の早期発見や予防に努めつつ、患者さんのニーズに応えた医療を積極的に提供していきたいと考えています。また、病院はホテルなどのサービス業と似ているといわれることも多いのですが、病院は不安や苦しみを抱えて来られる方を対象としています。ホテル業以上に言葉や優しさなどの接遇にも注力していきたいですね。

齊藤 雅也 院長
岐阜県出身。1978年岐阜大学医学部卒業。同大学付属病院第一内科に入局後、消化器内科を専門に研鑽を積む。その後国立療養所岐阜病院(現・国立長良医療センター)赴任に際し、呼吸器内科に転向。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医。関中央病院の院長を25年間務め、2018年3月より現職。日本品質管理学会代議員、日本医療バランスト・スコアカード研究学会理事。
自由診療費用の目安
自由診療とは脳ドック/5万5000円、内視鏡検査/1万4300円





