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変形性股関節症の人工股関節手術を
ロボット支援手術で行う

岡崎市民病院

(愛知県 岡崎市)

最終更新日:2024/12/13

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  • 保険診療
  • 変形性股関節症

関節の中でも一番大きな股関節。歩くために大事な部分だが、加齢や使いすぎで変形してしまうと、痛くて歩くことができなくなったり、寝返りのたびに激痛が走ったりと、生活に支障を来してしまう。股関節が変形し、軟骨の下にある神経を刺激して痛みが出る病気が、変形性股関節症だ。「変形性股関節症になってしまう原因はさまざまですが、最終的には人工関節に置き換えるというのが主な治療の流れになっています」と教えてくれたのは、岡崎市民病院で整形外科統括部長を務める加藤大三先生だ。同院では、5ヵ月先まで手術予定が埋まっている手術なのだという。変形性股関節症と人工股関節手術について、加藤先生に話を聞いた。(取材日2024年10月9日)

素材の進化と手術支援ロボットの導入でさらなる耐久性や安全性の追求を。痛みの改善に有用な人工股関節手術

Q股関節に痛みが出るのは、どんなことが要因ですか?

A

股関節の軟骨が、加齢とともにやわらかくなって曲がったり減ってきたりして、軟骨の下にある神経を刺激し痛みが出るという原因がまず1つ目。股関節周囲の違和感や疲労感から始まり、歩くと痛い、ゴリゴリと音がする、寝返りのたびに激痛が走る、といったように痛みも進行していきます。2つ目は女性に多いのですが、生まれつきの股関節形成不全の影響で軟骨がすり減ってしまうものもあります。その他、高齢者に多いのですが、軟骨の下にある骨がもろくなることで急激に痛みが出る病態や、アルコールやステロイドの影響から大腿骨頭が壊死し、荷重のたびに股関節に激痛が走る病態もあり、「変形性股関節症」という疾患に含まれます。

Q変形性股関節症の治療について教えてください。

A

変形性股関節症について説明する加藤先生

まずはエックス線検査で、股関節の隙間の状態を確認します。進行期になっていれば明らかに隙間がなくなり、軟骨が下にある神経にぶつかっているかどうかが判断できます。初期の段階で、隙間の狭さを判別しづらい場合や大腿骨頭壊死など明らかな変化が出ていない場合は、MRI検査を追加することで判別します。初期であれば、痛み止めの薬や股関節周囲の筋肉トレーニングなどで対応します。変形が進行して鎮痛薬でも痛みが取れない段階であれば、手術を検討します。変形性股関節症の場合、痛みで太ももやお尻の筋肉の萎縮が進んでしまうので、人工関節の術後を視野に入れて、進行前から水中歩行訓練などの筋トレなどで萎縮を防ぐことも大切です。

Q人工股関節手術と術後のリハビリテーションについて伺います。

A

患者一人ひとりに合った日常生活への早期復帰をめざす

手術前日から入院し、術後翌日からリハビリが始まります。ほとんどの場合、翌日から歩行器を使ってトイレに行くことができ、3日目ぐらいからはつえを使って歩くことができます。5日目ぐらいからは階段などもつえ歩行で上れるようになり、約9日目に退院です。平地はつえで歩ける、手すりを使いながら階段の昇降ができる、自分で爪を切り、靴下が履けるというのが退院の目安。この手術は、自立した日常生活動作を回復するというのが目的なので、寝たきりの方や生まれつき股関節が脱臼している方は別として、一人で日常生活ができている方であれば、ひどく痛みがあって進行しているケースでも可能です。

Q人工股関節手術のメリットやデメリットが気になります。

A

保存療法の場合、痛みに関しては、鎮痛薬を使えばある程度は改善が見込めるかもしれませんが、歩くなどの機能面は改善できません。ですが、根本的な原因にアプローチする人工股関節手術で関節を置き換えれば、痛みと機能どちらも改善が望めます。とはいえ人工関節は工業製品なので、約30年の耐用年数があり、痛みのフィードバックがないというのは課題。例えば、つるつるした路面で滑った場合、通常の人なら痛みに体が反応してひねるなどの動きでカバーしますが、人工関節の場合は痛みがないので、脱臼してしまうことがあります。また、わずかですが手術での感染もリスクになりますね。

Qこちらでの人工関節手術はロボット支援手術で行っているとか。

A

手術支援ロボットを導入し、安全性の高い手術をめざす

先ほどお話しした脱臼についても、どこまで動かしたら危ないかということを術前にシミュレーションできるのは、ロボット支援手術のメリットです。足を曲げるとかねじるなどの動きがどこまでできるのかがわかっていれば、リハビリにも有用ですね。退院後に近隣のクリニックでリハビリを続ける場合でも、術中のシミュレーションで術後可動域の数値が出ているので、クリニックの理学療法士などと情報共有ができます。当院が導入している手術支援ロボットは、患者さん個別の三次元CT画像による術前計画に沿って精密に人工関節を置換しています。正確な位置へ誘導するナビゲーションシステムは、精度の高さや安全性への配慮にもつながっています。

患者さんへのメッセージ

加藤 大三 統括部長

1997年金沢大学医学部卒業。安城更生病院、長野赤十字病院、新城市民病院を経て名古屋大学医学部附属病院の整形外科で研鑽を積み、リウマチ感染症に関連して同院の中央感染症制御部にて4年間、感染症医として勤める。2017年より現職。専門は関節とリウマチで、日本整形外科学会整形外科専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。

変形性股関節症という病気は、過度な負荷がかかるお仕事やスポーツをされている方にも多い病気ですが、よほどの状態でない限り、手術を受けることが可能です。当院整形外科の目標は、患者さんが人工股関節を入れたことを忘れるくらいに日常生活が送れるようになること。人工股関節はチタン製で、昔に比べたら耐用年数も伸びていますし、術後、患者さんにはきっと満足していただけると思います。素材の進化だけでなく、人工関節の位置や角度など計画に沿って実施できるロボット支援手術の精度の高さによって、より自分の関節に近い動きができることも見込めます。低侵襲な手術ですので、痛みを抱えている方はぜひご相談ください。

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