社会医療法人真泉会 松山まどんな病院
(愛媛県 松山市)
金子 久恵 院長
最終更新日:2024/01/31
質が高い医療と寄り添う診療で地域に貢献
1936年に松山逓信診療所として開設され、その後NTT西日本松山病院に名称を変更。2021年に「松山まどんな病院」に生まれ変わった同院は、80年以上もの間、地域医療を支えてきた。もともとは職域病院であったため、地域での知名度はそれほど高くなかったが、産婦人科にはたくさんの女性が受診していたという。現在は、産婦人科を中心に、内科、外科、形成外科、整形外科、小児科、放射線科を標榜し、より地域に密着した医療を提供している。2022年に院長に就任した金子久恵先生は、30年以上同院で勤務をし、産婦人科医として、幅広い年齢の女性の体と心の健康に寄り添う医療を実践。その経験を生かして、金子院長による新体制では、二次救急の受け入れや、形成外科の開設、整形外科の充実など、より地域のニーズに応えるための医療の充実を図る。先端の治療の実施とともに長く地域に根差してきた病院だからこそのアットホームさや温かさが魅力の同院について、金子院長に話を聞いた。(取材日2023年11月9日)
開院時から力を入れている産婦人科の特徴を教えてください。
当院の産婦人科では患者さんに寄り添う診療が伝統的に受け継がれています。病気だけではなく、心の問題や家族関係、バックグラウンドなど抱える事情は患者さんにそれぞれですから、いろいろな職種が協力しながら問題解決のため尽力しています。産科領域では立ち会い分娩を早期に取り入れ、今も、妊婦さんやご家族に向き合い、旦那さん、おじいちゃん、おばあちゃんに産前産後の情報を提供し、家族そろって幸せな気持ちで過ごしていただけるようにしています。産後は卒乳までの授乳や育児の相談にも乗れる体制を整えています。婦人科領域では、13、14歳から高齢の女性まで、幅広い年齢の女性を支えるための医療を行っています。最近は思春期の患者さんも多く、お母さんからお子さんのことを相談される機会も増えてきました。ピルの処方のほか、精神的なサポートについても専門家につなぐ前の相談窓口のような機能を果たしています。
形成外科を開設されたそうですね。
これまでこの地域には、大学病院や三次医療施設を除けば形成外科を標榜する病院はほとんどありませんでした。そこで当院では地域のニーズに応えるために、土岐博之副院長による形成外科の診療を開始しました。下肢静脈瘤や外反母趾、巻き爪などのフットケアを中心に、眼瞼下垂、けが、潰瘍、褥瘡(じょくそう)など、診察の結果、対応可能な範囲であればすべて治療をしています。下肢静脈瘤は日帰り入院で対応し、2019年に保険収載されたグルー治療も積極的に実施しています。その他、レーザー治療や硬化療法など複数の治療法に対応し、なるべく切らない治療をめざしています。受診される患者さんの中には、下肢静脈瘤の症状である、下肢のだるさや血管が浮き出ている状態、こむら返りやむくみを年齢のせいで病気ではないと思っている人も。足元から元気に日常生活を送ることが健康寿命にもつながるので、気になることがありましたら気軽にご来院ください。
整形外科でも専門性の高い治療を行っていると聞きました。
整形外科では、変形性股関節症および変形性膝関節症への人工関節置換術や、腰部脊柱管狭窄症、側弯症、椎間板ヘルニア、圧迫骨折などの腰や首の病気を専門に扱っています。脊椎の疾患では、まずは飲み薬やブロック注射、コルセットの装着による保存療法から始め、十分な改善が見込めない場合は手術を行います。手術に関しては、内視鏡手術から、顕微鏡下の手術、インプラントを用いた固定術まで豊富な術式に対応できるのが強みの一つで、患者さんにとってベストな方法を選択しています。また、骨粗しょう症の治療にも力を入れて取り組み、高齢者の骨折予防にも努めています。脊椎外科を専門にする村上貴文先生と日根野翔先生は高校時代からの親友。息の合った両先生が互いに意見を出し合うことで、診断・方針の決定・治療までを最適なルートで提供することをめざしています。
地域との連携体制についてはいかがでしょうか。
当院は2022年10月から救急輪番病院になり、8日間に一度当番の日には二次救急を引き受けています。まだ慣れないこともありますが、地域の先生からたくさんの二次救急の患者さんをご紹介いただいており、地域の在宅医療の先生からも重宝していただけているようです。今後も急な発熱で入院先が見つからないなど、お困りの患者さんの受け皿になっていければと考えています。地域のクリニックの先生方との連携の際には、とにかくどんなことでもお断りせず引き受けるという気持ちでおります。クリニックでは対応が難しい、あるいは判断に迷うような患者さんを私たちがお引き受けすることで、地域の先生方が安心して診療することができれば、地域医療全体の底上げにもつながります。ご紹介いただいた患者さんは治療をして、患者さんに元気をつけてお戻しできるよう努めていますので、どんな些細なことでもご紹介いただければと思います。
最後に、今後の展望や地域の人へのメッセージをお願いします。
新病院を造り、もっと機能的に先進的な医療ができるように質を高めて頑張っていきたいです。新体制になったばかりで、十分ではないことも多いと思いますが、今後はさらに診療体制を充実させていきたいと思います。私自身は産婦人科医として長年、子宮頸部の初期病変の治療を得意としてきました。子宮頸がん検診で異常があったり不正出血があったりしても受診を躊躇する人は少なくないため、そういう人も気軽に受診できる病院でありたいです。また、将来的には子宮筋腫や子宮内膜症の腹腔鏡手術にも対応していければと考えています。できるだけ敷居を下げ、病気を見逃さないように、初期の治療に力を入れていきたいです。受診される患者さんの思いや背景を否定せず、患者さんの思いを受け止められるように職員一同心がけています。人生経験が豊富なスタッフばかりで、温かみのある対応が特徴の病院ですから、安心して心を開いて、相談に来てください。
金子 久恵 院長
1981年宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部) 卒業後、愛媛大学医学部附属病院研修医。四国がんセンター勤務を経て、1989年にNTT西日本松山病院(現・松山まどんな病院)に入職。2022年より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。初期の子宮頸がんの治療や、がんの前段階の、子宮頸部初期病変の治療を得意とする。院長として、職員が楽しく前向きに働ける環境を整えることにも力を注ぐ。