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胸部外科の医師による漏斗胸の治療で
患者のQOLを支える

松山笠置記念心臓血管病院

(愛媛県 松山市)

最終更新日:2022/12/13

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  • 保険診療
  • 喘息
  • 漏斗胸

「漏斗胸(ろうときょう)」という病気を知っているだろうか? 胸が陥没することによって心臓や肺が圧迫される疾患で、1000人に1人の確率で発生するといわれている。「当院には、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地から漏斗胸の患者さんがいらっしゃいます」と話すのは、「松山笠置記念心臓血管病院」の笠置康院長。1976年より漏斗胸の治療に携わり、2000年からは、Nuss法手術の原理を生かした筋層下Nuss法手術を導入。現在では全例、漏斗胸治療をこの術式で行っているのだそう。笠置院長に、漏斗胸の症状や治療方法など具体的に教えてもらった。(取材日2019年4月3日)

胸がへこみ内臓が圧迫されることで、不調を引き起こす漏斗胸。病気を知り、生活の質の改善をめざしていこう

Qまずは漏斗胸の症状について教えてください。

A

遠方からも漏斗胸患者が来院する

漏斗胸は、前胸部が陥凹(かんおう)する、つまりへこむことにより、内臓が圧迫され胸郭内から排出される病気です。赤ちゃんのぽっちゃりとした肉づきがとれた段階や、小学校高学年や中学生・高校生の成長期で身長が伸びてスラッとすると目立ってくるため、そのタイミングで当院を受診されるお子さんが多いですね。胸の陥凹により猫背になるのも漏斗胸の大きな特徴です。漏斗胸は変形した骨により心臓や肺が圧迫されるので、息苦しさや痛みを感じる場合があり、喘息などの呼吸機能障害を起こしている人も少なくありません。また、胃や肝臓が圧迫されるので消化不良を起こし、慢性腸炎の症状を患っている人もいます。

Q漏斗胸の治療方法について教えてください。

A

漏斗胸手術への工夫を凝らした手術室

1987年にDr.Nussが開始したNuss法が代表的な治療法です。これは、体内固定用プレートを漏斗胸の陥凹した部分に通してへこみを矯正していく方法。矯正後にプレートを抜く2度目の手術が必要ですが、2度とも胸の側面に2~3cm前後の小さな手術痕が残る程度です。日本においては1999年に保険適応となり、2000年より当院でも採用。プレートを筋肉と皮膚の間に通す当初のNuss法ではプレートが滑ってずれる可能性があったため、筋肉を剥離して筋肉と骨の間にプレートを通し、肋骨にしっかり固定する方法で手術を行っています。挿入後は経過観察を行い、年齢によって1年半~3年ほどでプレートを抜く手術をします。

Q手術を行う上で、どのようなことに気をつけているのでしょう?

A

前日に入院し、術前検査を行う

現在、当院における漏斗胸の外科治療では、しっかり骨に固定する術式を採用することで、プレートが滑るなどの位置異常を予防しています。また、この治療法を用いる上で気をつけたいのが、体内に異物であるプレートが入ることにより起こる感染症。当院ではその原因の1つとして、漏斗胸による慢性腸炎に関係があると考えています。消化不良で便が出にくくなるとおなかにガスが発生し、それが感染症を引き起こしていることがあるのです。そこで、手術前より内臓を整える対策を講じ、術後も薬物療法を行うなど、感染のリスクを下げるための取り組みを行っています。

Q治療を受けるにはどうしたらいいですか?

A

再発の防止と安全に配慮した治療を行っている

漏斗胸かもしれないと思う方は、まず受診をしていただき、しっかりと検査をした上でご自身の漏斗胸の状態を把握することが治療のスタートです。どちらかわからない場合は、正面と左右斜め45°の胸部写真をメールで送っていただければ手術が必要かどうか診断できます。当院には遠方からも患者さんが来られますので、できるだけ来院されたその日のうちに診察、検査をして治療方針を決定するようにしています。胸部エックス線撮影や心電図、呼吸機能、CTなど細部にわたり検査し、圧迫されている場所や程度を確認の上で手術に臨みます。漏斗胸の治療は、骨がやわらかく処置のしやすい子どもの頃にするのが望ましいですが、大人の方でも可能です。

Q漏斗胸の治療において、大切にしていることは何ですか?

A

数多くの漏斗胸手術に携わってきた笠置病院長

漏斗胸は、まだ解明されていない部分も多い病気ですから、患者さんが教科書です。一人ひとりの症例と向き合う中で、最善の方法を編み出していくしかないからこそ、術後までしっかりサポートしていくことが私たち医師の使命だと考えています。私が特に気をつけているのは、姿勢。漏斗胸の人は、心臓や肺の圧迫から逃げるためにどうしても猫背になってしまう。手術をして胸のへこみを改善するだけでなく、猫背の改善にも同時に取り組む必要があります。手術から2年、3年と長いお付き合いになる病気ですから、患者さん目線で、より健康的に、生活の質が上がるように取り組んでいきたいですね。

患者さんへのメッセージ

笠置 康 病院長

1982年東京女子医科大学大学院卒業。東京女子医科大学第一外科学助手として経皮的冠動脈形成術の施行に従事。東京女子医科大学第一外科学医局長、米国East Carolina大学客員教授などを経て、1991年現職に就く。胸部外科、心臓血管外科、救命救急に長年携わり、数多くの漏斗胸手術を手がける。日本外科学会認定外科専門医、日本胸部外科学会認定呼吸器外科専門医、日本救急医学会認定救急科専門医。

漏斗胸による症状は、息切れ、喘息などの呼吸器疾患や消化不良、慢性腸炎など、さまざまなものが考えられますが、その原因を漏斗胸だと自覚していない患者さんが多いのが現実です。まだまだ認知度の低い病気ですから、長年このような不調を抱えていても「わからない」と諦めている方もいらっしゃいます。健康的な生活を取り戻すために、「もしかして漏斗胸が原因かも?」と思われた方は、ぜひ、医療機関でご相談ください。当院でも外来診療やホームページからもご相談を受けつけています。

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