緑内障手術は日帰りか入院か?
病院で手術を受けるメリットとは
医療法人湘山会 眼科三宅病院
(愛知県 名古屋市北区)
最終更新日:2023/09/20
- 保険診療
高眼圧などが原因で視神経が障害され、その結果視野が欠けていき、更に進行すると視力が低下するといった症状が現れるのが緑内障である。手術は失われた眼機能の回復をめざすものではなく、眼内の過剰な水分を排出させるなどして眼圧を下降させ、見る機能をできるだけ長持ちさせることをめざすのが基本方針となる。現在、日帰り手術で対応する医療機関もある緑内障手術だが、「眼科三宅病院」の加地秀院長は、「術後翌日、翌々日の診察はとても大切。もし何かあっても病院ならすぐに対応できますし、何より患者さんにはゆっくり安静にしていただきたいと思います」と入院の利点を話す。同院で行う緑内障手術や、術後の病院ならではの配慮などについて加地院長に教えてもらった。(取材日2023年8月24日)
目次
術後翌日、翌々日の診察は重要。万一のトラブルや感染のリスク対応など入院のメリットも
- Q緑内障の治療にはどのようなものがありますか?
- A
閉塞隅角緑内障には白内障手術が有用ですが、正常眼圧緑内障や開放隅角緑内障の場合は目薬が基本になります。目薬の目的は、眼内で水が作られるのを抑える、もしくは水の流出を促すことで眼圧を下げること。種類はたくさんあるのですが、今は複数の成分が入った合剤もあります。1本から始めて経過を見つつ目薬の追加や変更を行うことも。喘息や不整脈に影響する薬もあるので、全身状態を把握した上で慎重に決めていきます。さし方もとても大事で、目薬の先がまつ毛に触れない、あまりまばたきをしないなど、看護師が丁寧に細かくアドバイスをいたします。点眼を続けても眼圧が下がらない、視野障害の進行が止まらない場合は手術となります。
- Q手術にはどのような方法があるのでしょうか?
- A
一つには、ろ過手術といって眼内の過剰な水を眼外に流すバイパスを作る方法があります。水を流出させるチューブを目の中に留置するチューブシャント術という方法もありますね。また目の中にあるフィルターのような線維柱帯という組織を切開して「目詰まり」の解消を図り、水の排出力を回復させる目的の流出路再建術という方法もあります。目標とする眼圧や目の特徴、視野欠損の程度などを考慮して手術法を選択します。術後翌日、翌々日も診察が必要で、入院は多くの場合3日間、ろ過手術の必要な場合は4~5日間になることもあります。
- Q日帰り手術、入院手術それぞれのメリットを教えてください。
- A
日帰りの最大のメリットは当日家に帰れることでしょう。ただ退院しても、翌日、翌々日は状態確認のための受診が望まれます。入院のメリットは、術後、もし著しく眼圧が高い時や反対に低い時、点滴や薬の処方や処置ができること、確率は低いものの眼内炎など感染のリスクにも対応できることです。また、ろ過手術の場合は低眼圧を避けるために比較的きつめに縫合し、術後に眼圧を検査し、レーザー光線で糸を切りつつ眼圧をコントロールしていくことが大事になります。流出路再建術の場合は術後、上体を起こした体勢を保つことが必要となることも。入院ではそうしたサポートが可能ですね。術後の目薬が、看護師主導で適切にできることも良い点です。
- Qこちらで治療を受けるメリットはどんなことでしょうか?
- A
今お話ししたように、常に医師、看護師の目が行き届き、万が一どのようなトラブルが起きたとしても素早く対応できることです。先進の医療機器が整っている環境や、常勤医師15人、非常勤医師5人が在籍しており、緑内障だけでなく幅広い眼疾患に対応できるという点もメリットです。中には緑内障だと思われても、調べると神経の病気のこともあります。当院には県内でも数少ない神経眼科の専門家である医師がいることも強みですね。また、当院は、糖尿病網膜症などに伴って起こる血管新生緑内障という重症な状態など、困難な症例の手術を行うことも可能です。
- Q術後の過ごし方について注意点はありますか?
- A
術後は見づらいことも考えられるので、車の運転は控えましょう。2週間ほどの間は保護眼鏡をかけていただきますが、温泉などはリスクがあるので控えていただきたいです。激しい運動は1ヵ月ほどやらないことが望ましいです。特にろ過手術を受けた場合は注意して目を守ってほしいですね。退院後の通院は1ヵ月の間は1週間ごと、その後は2週間後、1ヵ月後と徐々に間隔を空けていきます。患者さんによっては手術時に縫合した糸を切ったり眼球マッサージを指導したりします。当院は遠方の患者さんも多く、退院後の通院先は基本的に、かかりつけの眼科クリニックとなりますが、交互に通院していただく場合もあります。
加地 秀 院長
1994年名古屋大学医学部医学科卒業。2000年同大学大学院卒業。同大学医学部附属病院、半田市立半田病院眼科などを経て2003年米国ジョンズホプキンス大学眼科研究員。2006年名古屋大学に復職し、眼科医局長を務める。2014年松浦眼科医院副院長。2017年7月眼科三宅病院副院長となり、2023年4月に院長就任。専門は網膜硝子体手術、緑内障手術、白内障手術、角膜内皮移植など。日本眼科学会眼科専門医。