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愛知県精神医療センター

(愛知県 名古屋市千種区)

高木 宏 院長

最終更新日:2023/07/10

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急性期患者を救う精神科救急医療の最後の砦

自由ヶ丘駅から南へ5分、緩やかな坂道を上った先に「愛知県精神医療センター」がある。1932年愛知県立精神病院として産声を上げ、約90年にわたって精神疾患を抱える患者の診療を行う歴史ある病院だ。2018年に全面改修工事が完了し、自然の地形を生かした緑豊かで開放的な造りは、一見すると公園のよう。高木宏院長は「近隣にお住まいの方が散歩される様子なども目にしますよ」とほほ笑む。同センターで20年以上精神科医療に従事する、精神科医療のエキスパートだ。高木院長は同センターについて「精神科急性期病院として救急医療の最後の砦を担うとともに、専門性の高い精神科医療を提供するのが使命」と語る。近年は、重い精神障害のある人が住み慣れた環境で望む生活を実現できるよう支援する包括型地域生活支援プログラム「ACT(Assertive Community Treatment)」に取り組み始めるなど、時代とともに移り変わるニーズに応えるべく体制の強化・刷新にも余念がない。そんな同センターが、どのような姿勢で精神科診療を提供し続けているのか、歩みを振り返るとともに、特徴や強みなどを聞いた。(取材日2022年2月15日)

こちらの病院の歴史について伺います。

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当センターは愛知県立の精神科病院として1932年に発足しました。設立当初より掲げる診療のモットーは「時代の先端をゆく精神科医療の実践」。例えば、精神疾患によって不遇な状況に置かれる患者さんを収容し、生活を支援するのが良しとされた時代から、社会復帰を前提とする精神科診療の重要性をうたうことを主流とする時代を迎えた際には、入院患者さんに対する精神科リハビリテーションを充実させることで、退院後の社会復帰を支援してきました。精神科リハビリテーションに力を入れ始めた当時、その先進的な取り組みから医療関係者が全国から視察に訪れていたと聞いています。なお、現在の精神科医療の潮流は、できるだけ早く治療を開始し、退院後は日常生活を通じて社会復帰をめざすこと。そのため当院では救急・急性期医療に積極的に取り組み早期の医療介入を実現するとともに、社会復帰を支援する治療・リハビリテーションの提供に力を注いでいます。

2018年には約4年間に及んだ改修工事が完了したそうですね。

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先進の医療を提供し続けるためにも、ハード面の更新というのは避けては通れません。旧病棟は老朽化が進んでいましたし、救急や急性期に適切に対応するためには、運び込まれた患者さんを適切に保護するための「保護室」の整備などが急務でした。そこで、全面リニューアルに踏み切ったわけです。まずこだわったのが、診療環境の快適化です。患者さんが過ごす病床はゆとりを持たせ、スタッフも扱いやすいよう動線設計にもこだわりました。保護室は模型を作製してもらい、実際にどのように使っていけるかを確認するなど、細部にまでこだわり抜きましたね。そのほか、児童精神科の病床を増床するなど、児童患者の入院受け入れ体制の整備にも力を注ぎました。また、敷地全体では、丘陵地の地形を生かしながら、「開かれた病院」と聞いて納得いくような、都市公園を思わせる開放感のある造りをめざしました。「開かれた病院」の姿を、実際に表したいと考えたのです。

こちらの病院の強み、特徴とは何でしょうか?

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救急および急性期精神科医療の診療が当センターの中核です。保健所や警察、児童相談所からの入院依頼も数多く寄せられ、これらをしっかりと受け止め適切な医療を提供し早期退院をめざすべく対応しています。搬送先が見つからず、複数の医療機関で受け入れを断られた場合には当センターが受け入れに応じます。また夜間休日における救急搬送では、当番病院での受け入れが難しい場合に救急用の病床を確保している当センターが対応します。このように後方支援のような役割を担うことで、愛知県下における精神科救急の最後の砦として地域に貢献していきたいと考えています。ほかにも、幼児や児童、青年期といった若い世代の精神科医療にも長年注力してきました。発達障害の診療にも早くから取り組み、外来やデイケアを利用する方も多いです。治療では統合失調症に対する修正型電気けいれん療法など専門的な診療に常時対応できる体制が整っているのも特徴です。

精神疾患の診療において重視されている点は何ですか?

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いかに進行を抑え再発を防ぐかといった点が、精神疾患の診療では重視されます。そのため、疾患教育には特に注力しています。例えば、どうして処方された薬を飲み続けなければならないのかといった疑問に応えるのも疾患教育の一つ。診療に際し、薬を服用し続けることの有用性や、むやみに治療を中断するとどんなリスクがあるのかなどを詳しく説明します。特に統合失調症は再発するたびに症状が重くなり、治りも悪くなります。そして再発した人の多くが、過去に薬を中断した経験があるといわれています。このことからも薬の中断は再発リスクを高める行為であり、治療を継続する大切さがおわかりいただけるかと思います。病気や治療について患者さん自身が理解を深めることも、治療の一環なのです。また統合失調症の再発を防ぐ手立てとして持効性注射薬を活用するなど、有効性が期待できる治療法があれば積極的に取り入れるようにしています。

今後の展望をお聞かせください。

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救急・急性期医療をベースとする診療にかじを切ったことが功を奏し、「できるだけ早く患者さんを日常に送り戻す」ことは実現できているかと思います。これを基盤に、さらに積極的に救急患者を受け入れることで多くの人に専門的な精神科医療を提供していきたいと考えています。近年は看護師をはじめ、医師や作業療法士、ケースワーカーといった多職種がチームでケアを行う包括型地域生活支援プログラムを稼働し始めるなど、地域で暮らす患者さんの支援体制の強化にも乗り出しました。2022年4月には地域連携室も正式に発足します。当センターのことを知る地域に向けた窓口として機能してくれることを期待します。依存症治療など新たな分野にも取り組むことも視野に入れています。さらなる診療の充実を図るためにも、当センターで患者さんを抱え込むのではなく、クリニックとも連携しながら地域全体で患者さんを支えるような診療を実現したいと考えています。

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高木 宏 院長

大学実習時に精神科に関心を持ったのをきっかけに、1990年岐阜大学医学部卒業後は名古屋大学医学部附属病院で精神科を中心に医療全般の経験を積む。1997年愛知県立城山病院(現・愛知県精神医療センター)に入職。精神病理学・精神薬理学の領域で研鑽を積むほか、司法精神医学にも従事。副院長を経て2021年4月より現職。フルート演奏が趣味の一つで楽器演奏を得意とするスタッフとともに院内演奏会を開催することも。

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