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独立行政法人国立病院機構 東尾張病院

(愛知県 名古屋市守山区)

田中 聡 院長

最終更新日:2023/08/29

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公益性の高い精神科医療に対応する国立病院

小幡緑地やゴルフ場に隣接する「東尾張病院」は、守山区の緑の中に静かにたたずむ国立の病院。半世紀にわたり、名古屋大学精神医学教室の基幹施設の一つとして、後進の教育・育成を担ってきた実績を持つ。終戦後に設けられた結核療養所を前身とし、現在は233床の精神科専門病院として東海地域の患者を受け入れ、一般の精神医療だけでなく司法精神鑑定も行っている。主な役割は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)」に基づく入院治療。司法の決定により入院が必要となった精神疾患患者の受け入れだ。「福祉の充実や若年人口減少などから精神科病棟への入院患者数は全国的に減少していますが、医療観察法入院は全国どこも満床あるいはそれに準じる状態です」と社会の現状を話すのは、2023年4月に院長に就任した田中聡院長。社会的に必要な医療に奮闘する同院の診療について田中院長に詳しく聞いた。(取材日2023年7月11日)

病院の歴史について教えてください。

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当院の始まりは、第二次世界大戦後に設立された結核療養所でした。当時の建物の一部が今も倉庫として使われていますが、病棟はすべて2000年以降に新しく建てられたものを使っています。結核患者が減少したことを受けて1969年に200床の精神療養所に転換し、1974年には国立療養所東尾張病院と名称も変更しました。2004年からは「独立行政法人国立病院機構東尾張病院」として発足し、全国に140ある国立病院機構の医療施設とも連携を図りながら精神科医療を行っています。他県の国立病院で受け入れることが難しい患者さんについても余裕があれば受け入れてきました。国民一人ひとりの健康と国の医療の向上をめざし、質の高い臨床と研究、後進の育成にも努めています。

国立の精神科病院としてどのような役割を担っていますか?

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最も大きな役割は、医療観察法に基づいた医療です。医療観察法は司法精神医療に関する法律で、心身喪失や心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者に対して専門的な治療と処遇を行う仕組みを定めています。心身喪失というのは、精神障害のために善悪の区別がつかないなどで刑事責任を問えない状態を指します。医療観察法病棟の患者さんは、裁判官と精神保健審判員という役割の精神科医、精神保健参与員という役割の精神保健福祉士の合議に基づき裁判所によってその処遇が決定され、入院します。医療観察法の目的は、「病状の改善と他害行為の再発防止を図り、社会復帰を促進させる」です。このような患者さんには適切な医療を受けることが法律上求められます。同時に、病院は憲法で定められた患者さんの人権を守ります。「患者さまの立場に立ち、基本的人権を守り、より安全な医療を提供します」という基本理念のもと、人権を尊重した医療に努めています。

統合失調症に対する「クロザピン治療」を行っているそうですね。

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「クロザピン治療」というのは、統合失調症で複数の抗精神病薬を十分な量、十分な期間用いても症状改善が見られない、もしくは、副作用でそれらの服薬の継続が難しい、治療抵抗性統合失調症の患者さんに対する治療法です。ただ、有効性が期待できる一方、白血球減少、心筋炎、高血糖などの重い副作用が出ることもあるため、定期的な血液検査が義務づけられています。治療を行うにあたっては、統合失調症の診断、治療に精通し、かつ薬の情報はもちろん、副作用が起こった場合などの緊急時にも対処できなければいけません。統合失調症で長期入院されている全国の患者さんは潜在的に多くの方が適応基準に当てはまると思いますが、この治療法にたどり着いていないことも多いのが現状です。

児童精神科の診療など、他の活動についても教えてください。

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児童相談所とも連携しながら18歳未満を対象とする児童・思春期精神科の診療を行っています。不登校や虐待など社会の問題とも切り離せない医療で、疾患としては、自閉症や小児期からのうつ病、適応障害、PTSDなどが挙げられます。現在は児童精神科を専門とする医師が1人しか在籍していないことから急患対応ができず、外来診療は完全予約制で行い、新患に関しては中学3年生までとさせていただいています。医師の不足で本来の医療が制限されていることが課題ですね。このほか、感染症を合併する患者さんについて、新型コロナウイルス感染症まん延時には個室の陰圧病室を使用して受け入れていましたが、医師不足から、現在は身体合併症・感染症合併病棟50床を閉鎖しており、めどが立ち次第、再開する予定です。

今後、どのように医療を展開していきたいとお考えですか?

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当面は、民間の医療機関では対応が難しい専門医療に主軸を置いていくことが必要だと考えています。加えて、当院の魅力を精神医療関係者、特に若手の方々にも知ってもらい、公益性の高い医療にぜひ参加してほしいですね。もともと、処遇困難といわれた患者さんたちにも対応してきた病院であり、そういった方々と安全に関わるためには働く側への保障や働き方のノウハウが大切であることを意識しています。現在の課題である医師不足を踏まえ、今後は、社会のため地域のために働きたいという思いを役立てられるような環境づくりと、医療人の育成が当院にとっても、患者さんのためにも必要だと考えています。当院では、公的医療機関としての役割を果たすべく、特に医療観察法領域・児童精神科領域ではじっくりと時間をかけて入院患者さんと向き合う医療を行っています。今後も地域医療を支える土台としての医療に努めていきたいと考えています。

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田中 聡 院長

1994年名古屋大学医学部卒業。安城更生病院精神科を経て、名古屋大学医学部附属病院、共和病院に勤務。2020年8月に東尾張病院精神科部長として赴任し、同院副院長を経て2023年4月より現職。医学博士。精神保健指定医。日本専門医機構認定精神科専門医。愛知県出身で、みそは三河の赤みそ派、醤油は知多のたまり派。地元を意識し地域に必要な医療に力を注いできた。

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