独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院
(愛知県 名古屋市南区)
後藤 百万 院長
最終更新日:2021/07/05
幅広い診療科を備えニーズに応え続ける
名古屋市南区、名古屋港に流れ込む堀川のすぐ東側に「中京病院」は立つ。昭和初期に開設されて以来、豊富な人材を抱え、比較的早い時期から多分野において難度の高い治療を行ってきた歴史がある。現在も多くの診療科を有し幅広い診療を実践、特に腎移植、新生児を含む小児の心疾患、熱傷の治療などにおいては県下で数多くの実績を残している。「当院に赴任してきた時、ほとんどすべての領域を高い専門性でカバーしていることに驚きました」と穏やかに語るのは後藤百万(ごとう・ももかず)院長だ。名古屋大学医学部附属病院において専門の泌尿器科疾患の治療、手術に長らく携わり、2020年、院長に就任した。同院では4年後の2025年、救急部門やがん医療部門など高度な医療を集約化した新棟が完成予定である。「これを大きな節目として、持続的に時代のニーズに応え続ける病院でありたい」と未来を見据える後藤院長に同院の特徴や理想について詳しく聞いた。(取材日2021年6月8日)
貴院の歴史や特徴について教えてください。
当院は1947年、健康保険の福祉施設として旧・厚生省が開設したことが始まりです。時代に合わせて増床を繰り返し、平成になって新しい病棟が順次完成、2014年に「独立行政法人地域医療機能推進機構(JCOH) 中京病院」として新たなスタートを切りました。多くの科が先進的な医療を行っており、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院として、救命救急センターを抱え、高度急性期医療を担う中核的な病院としての役割を担っているといえるでしょう。名古屋南部から知多半島北部にかけての地域を診療圏としていますが、県内各地から患者さんが来られています。2025年に救急部門や心疾患部門を核とする新棟が完成予定で、より一層専門的で高度な医療に特化した病院をめざす所存です。一方でJCHOの理念に「地域に必要な医療や介護を提供する」とあることから、当院も老人保健施設を持ち、地域包括ケアシステムに参加しています。
先生のご専門は泌尿器科だそうですね。
はい。当院の泌尿器科の特徴は、腎移植を非常に多く実施していることです。もともと日本の腎移植において重要な役割を担った先生がいらしたこともあり、早い時期から取り組んできました。平成になってからは体外衝撃波結石破砕術、腹腔鏡下手術、前立腺がん密封小線源治療、ロボット支援手術と次々新しい治療法を導入してきています。小児の泌尿器科疾患の治療、手術を多く行っていることも特徴です。大学病院と比べても遜色ないレベルの診療を行っているのではないでしょうか。私自身は排尿障害の診断、治療が専門で、名古屋大学医学部附属病院ではロボット支援手術に初期の頃から数多く携わりました。また尿失禁に対する再生医療の研究にも関わったほか、当時あまり認識されていなかった高齢者の排泄ケアの問題にも積極的に取り組みました。現在では社会的関心も高まりましたが、排泄ケアについてはライフワークとして今も活動を続けています。
貴院ではどの科も幅広く専門性を持って診療されています。
私が赴任して驚いたのは、まさにその点で、この病院でほとんどすべての領域がカバーされているということです。しかもそれが平均的ではなく、高い専門性でなされています。多様な専門性を持つ先生方が多く集まり、脈々と実績と残してこられた歴史があってのことでしょう。いくつか挙げるとすれば、小児の心臓や血管の病を専門に診る部門では県下でも数多くの手術を担当しており、先天性心疾患のある新生児を受け入れるNICCU(新生児心臓治療室)があるなど小児の心疾患治療の専門性は高いといえます。膠原病やリウマチ治療においては合併症を有するケースや難症例が多いことから多職種連携で専門的かつ総合的な治療を行っています。さらに熱傷部門も歴史があり、私が若い頃からその名は全国に知られていました。今もドクターヘリで遠方から患者さんが搬送されてきます。眼科も重症疾患を多く診療しており、全国的な独自のネットワークを持っています。
たくさんのスタッフさんがおられますね。
患者さんの医療やケアについては医師だけでなく看護師はじめ多職種のスタッフの横のつながりが大切です。それぞれの分野においてスタッフが最高のパフォーマンスができるような環境をつくることが管理者の務めだと考えています。昨今は、働きやすい職場環境づくりが重要視されていますが、当院でも「夢の職場づくり」というキャッチフレーズを掲げ、「10年後には日本一働きやすい病院にしたい」と職域を超えて協力し、勉強しているグループがあります。私個人のことでいいますと、少しでもスタッフとの風通しを良くしたいとの思いから、毎月、全員に向けてメールを送っています。なかなか直接話をする機会がないため、自分の考えていることを伝えられればいいなと思いました。実はそれぞれの給与明細にも短い文章ですが、感謝の気持ちを書いています。いずれも読んでもらえているかどうかわかりませんが(笑)、続けています。
今後についてお考えをお聞かせください。
2025年に完成する新棟は、当院の未来に向けた一つのマイルストーンです。救急医療や心疾患医療、がん医療といった部門を集約することで、高度急性期医療をより極めた、新しい先進的な治療に取り組んでいきたいと考えています。今後も患者さんや時代のニーズに合わせてどんどん進化していく病院でありたいですね。これらは病院のハード面の進化の話ですが、人材育成や職場環境の改善などソフト面も良い方向に進化をしていきたいと思います。新棟の完成はゴールではなく、10年先20年先も持続的に発展を続けていくための基盤であるというのが今の思いです。もちろん地域の基幹病院ですのでこれまでどおり地域の開業医の方々との連携を保ちつつ、愛知県だけでなく、日本中から患者さんに来ていただける高機能な総合病院にしていきたいというのが私の夢です。
後藤 百万 院長
1980年三重大学医学部卒業、1984年名古屋大学大学院医学研究課程修了。カナダ・モントリオールのマクギル大学留学を経て碧南市民病院に勤務、泌尿器科部長を務める。1998年名古屋大学に戻り、再生医療やロボット支援手術、さらに排泄ケアなどの分野でも活躍。同大学大学院医学系研究科泌尿器科学教授、同附属病院副病院長などを経て2020年から現職。