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医療法人優なぎ会 雁の巣病院

(福岡県 福岡市東区)

熊谷 雅之 院長

最終更新日:2021/08/24

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不安を感じる患者の受け皿としてまい進

JR香椎線雁ノ巣駅近くにある「雁の巣病院」は1956年の開院以来、精神疾患の治療に特化した診療を続けている。熊谷雅之院長の父が開業し、現在は精神病床264床、一般病床29床を備えた地域の病院として、さまざまな精神疾患の急性期治療はもちろん慢性期の療養にも尽力。「昼も夜も関係なく不安を感じる患者さんの受け皿に」と24時間365日診療を行い、うつ病など一般的な精神疾患の外来患者をケアする一方、集中的な治療が必要な患者にも対応できる精神科救急医療の役割を担っている。また全身麻酔下で電気的刺激を与え精神的安定をもたらすための修正型電気けいれん療法、アルコールや薬物などの依存症に対しては教育をベースとした一人ひとりの生き方に寄り添う治療に取り組んでいる。「精神疾患の一番の治療者は家族。最初に患者さんの異変に気づく家族が気軽に相談できる病院をめざしたい。それは精神疾患の早期発見・早期治療につながっていく」と意気込む熊谷院長に、病院の歴史をはじめ、診療の特徴や今後の展望などについて話を聞いた。(取材日2021年6月17日)

理念である「納得のいく医療」とはどういう医療でしょうか?

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医療に携わるようになって、医師の思い中心で医療が進められてしまい、患者さんやご家族の気持ちが二の次になっているように感じることがありました。これでは順番が違います。まずは患者さんとご家族に病気のことを説明し納得してもらうことが重要。私たちが考える最善の治療を提供したとしても、患者さんがそれを望んでいなければ幸せではありませんから。そのため理解してもらうまでを説明として、きちんと納得いただいた上で治療を行うということにこだわっています。もう一つ、私は夜間に病院を受診できないことに疑問を感じていました。精神疾患を抱えた方は夜に不安になることが多く、眠れなかったり、自死を考えてしまったりした時に相談できないのは非常に問題ではないかと。そこで救急も受け入れ、24時間365日診療に対応しています。

夜間の突発的な症状には不安になる方もいらしゃいますよね。

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当院の夜間帯は医師2名体制です。1人は病棟の管理、もう1人は非自発的入院にも対応できる精神保健指定医を配置しています。加えて、当直看護師のほか夜間でもすぐに相談できるように精神保健福祉士を、当日精算まで終えられるように医療事務のスタッフも当直をしており、充実した体制を整えています。また、特徴の一つとして、精神科救急入院料病棟、いわゆるスーパー救急と呼ばれる病棟を3病棟144床備えています。スーパー救急病棟の要件には、医師・看護師などの人員を充実させ、措置入院や緊急入院に対応できるなどの基準を満たす必要があります。当院ではこの基準を満たし、基本として入院形態にはこだわらず、原則お断りすることはしないように精神疾患の急性期に対応しています。そのため福岡県内をはじめ、他県や離島などから患者さんを受け入れるケースもあります。

治療法や治療環境における、貴院の特徴を教えてください。

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当院では、薬物療法で副作用が出やすい方や、高齢者への治療の安全性に配慮し、修正型電気けいれん療法(m-ECT)を導入しています。これは、全身麻酔下で脳に電気的刺激によるけいれんを起こさせることで、さまざまな精神症状を改善させることをめざす治療法です。例えば、うつ病で自死を企図した場合や、暴れてしまって手がつけられない場合でも、m-ECTであれば薬物による治療と比べて迅速な治療が望めます。また、環境面では、2021年1月から認知症の方と70歳以上の高齢者が入院できる専門病棟を稼働させました。高齢者の中には認知症による精神疾患の患者さんも多く見られますし、病棟内に年齢差のある患者さんが入院していたり、原因となる病気がまちまちであったりするのは、治療環境として好ましくないと考えたからです。もともと重度認知症治療には携わっていましたので、時代のニーズに応えるためにも改めて注力しています。

依存症治療にも積極的に取り組んでいらっしゃいますね。

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入職する前に働いていた国立肥前療養所でアルコール依存症の専門治療に取り組んでいたので、入職後からは当院でも依存症治療を始めました。単に断酒をするのではなく、アルコール教育プログラムをベースに自己洞察を深める治療を行っています。アルコール依存症は、お酒が好きだから依存してしまうのではなく、生きづらさのためにアルコールに逃げてしまうことに原因があります。それは薬物やギャンブル、ゲームなどへの依存に関しても同じことが言えます。ベースは生き方の問題なのです。ゆえにただ依存してしまうものを禁止すれば良いというものではなく、その人の生き方を支えていくことが重要。そういう意味で個人カウンセリングや集団療法も必要となり、依存症治療には精神科医だけでなく自助グループなどの力が欠かせないのではないかと考えています。

最後に地域の方、読者の方にメッセージをお願いします。

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精神科の疾患に関してはまだまだ偏見があるかもしれませんが、一つの病気に過ぎません。昔は閉鎖されている病院もありましたが、当院は明るく風通しの良い設計にしていますし、地域の方も利用できる売店やレストランも備え、ボランティア活動やイベントなどを通して交流を深めています。それは患者さんが地域で生きていくためにも非常に重要だと考えています。そうして精神科らしくない精神科病院になっていけば、もっと気軽に相談できる病院になるのではないでしょうか。精神疾患の一番の治療者は最も近い存在であるご家族です。ご家族の方たちが、病気への理解を深めるための機会を設ける必要性も感じています。地域において運動療法指導や講演会などを行っていますが、こうした機会を捉えながら、病気の早期発見・早期治療にもつなげていきたいと思います。そして来て良かった、相談して良かったと言ってもらえるような病院をつくっていきたいですね。

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熊谷 雅之 院長

1981年福岡大学医学部卒業。福岡大学病院内科第2局員を経て、九州大学病院精神科へ。国立肥前療養所精神科(現・肥前精神医療センター)にてアルコール依存症の専門治療を学び、1990年に雁の巣病院に入職。2006年から現職に。2008年に医療法人共和会理事長に就任し、2010年からは医療法人優なぎ会理事長を兼任する。

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