医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院
(福岡県 北九州市小倉北区)
梅津 祐一 病院長
最終更新日:2025/11/28


地域の回復期リハビリテーションを担う
回復期リハビリテーション病棟158床と障害者施設等一般病棟40床を備える「小倉リハビリテーション病院」は、1962年に精神神経科医療を提供する「南小倉病院」として開院した。その後、精神神経科医療にリハビリテーションの考え方を導入し、高齢者医療にも目を向ける中、2001年に現名称に改称。病院・施設・在宅での総合的な活動を、一貫した組織体制の中で体系化してきた。「個人の尊重」「健康の増進」「生活の創造」を理念に梅津祐一病院長をはじめとする各専門家が連携し、障害された機能の回復だけでなく、障害を残しても豊かな生活が送れるよう、チーム一丸となり取り組んでいる。めざすのは一人の患者を「地域で支えていく」こと。保健・医療・福祉・介護および地域住民を含め、生活に関わる人々が協力し合って行う地域リハビリテーションを推進。同院には、急性期病院などからの紹介で来院する患者の回復期から生活期のリハビリテーションを、病院、施設、在宅と、総合的に担う環境が整っている。「職員の志と情熱はどの施設にも負けていないと自負しています」と話す梅津院長に、病院の特徴や取り組みなどを聞いた。(取材日2025年8月21日)
まずは病院の成り立ちについて教えてください。

当院は、1962年に「南小倉病院」として開院。当時は精神神経科のみでスタートしました。それから10年ほどたった頃に、東京慈恵会医科大学ご出身で精神科の医師の矢内伸夫先生が病院長に招聘され、これからは地域に開かれた精神科医療を提供しなければならないと方針転換。地域住民も参加できる運動会を開催するなど、近隣の方たちと溶け込みやすい環境づくりに取り組んでまいりました。その一方で、地域の高齢化も少しずつ感じられるようになり、先を見据えた高齢者医療へと軸足を移していくようになったんです。さまざまなかたちで高齢者医療に取り組む中でも、私たちは「自宅での生活に戻ることをめざす医療」を当初から目標に掲げてきました。例えば、高齢者のデイケアに関しては地域を巻き込んださまざまなケアを実施。また、介護老人保健施設も全国的にも早い1987年に開設した歴史があります。
先を見据え、早い段階から高齢者医療へとシフトされたのですね。

超高齢社会の到来に備える中、1998年に現会長である浜村明徳先生が病院長に就任。2001年の病院棟新築にあたり「小倉リハビリテーション病院」に改称し、地域を基盤としたリハビリテーションを柱とする病院、高齢者ケア施設、住宅医療といった総合的な活動を一貫して行える組織体制を構築し体系化していきました。当院は198床のうち回復期リハビリテーションのために158床備えています。頸髄損傷や脊髄損傷、重度の頭部外傷など、それぞれ多種多様なアプローチが必要となった方へ専門的なリハビリテーションを提供しています。私自身、産業医科大学のリハビリテーション医学講座に入局した後も久留米大学などで研鑽を重ねてきましたので、矢内先生や浜村先生のことは存じ上げていました。お声がけいただいたのをきっかけに2007年入職。副院長を経て現職に至ります。歴史が長い病院ですので、多くの思いとご尽力によって今があると感じますね。
地域における役割、リハビリテーションの特徴を教えてください。

当院は回復期のリハビリテーションを軸としておりますので、急性期病院からの紹介で来院される方もたくさんいらっしゃいます。そのため、まずは目標を見出せる環境の提供が当院の地域における役割だと考えています。患者さんは、心にも痛みを感じている方がほとんど。その目に見えない部分にアプローチする診療科が当院の始まりでしたから、職員たちもその意識を持っています。そして、医師の多くが日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医の資格を取得。リハビリテーションに精通した医師がかじを取って専門性に基づいた医療を提供しているのが、特徴であり強みだといえるでしょう。各専門家たちと多職種連携によるチーム医療を実施しています。当院は昭和の時代から地域とのふれあいを大切にしてきました。そのDNAは現職員にも受け継がれています。先人が築いてきたものを次の世代へ引き継いでいくこともわれわれの使命だと思っています。
多職種連携と人材育成はどのように行われているのでしょう。

医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、管理栄養士、歯科衛生士、リハビリテーションに関する各専門職というように、多くの専門職が一つのチームとなり患者さんを支えています。とはいえ、入職してすぐに何でもできるわけではありませんので、人材の育成にも力を入れています。1年目、2年目というように、段階ごとにキャリアを重ねていく教育システムを構築。例えば看護師でいうと、リハビリテーション看護を軸にした教育体制を導入するなど、リハビリテーションのセラピストと同じような環境を看護にも取り入れています。そして、看護部、リハビリテーション部といった枠を取り払い「臨床サービス部」という部門を設置。看護とリハビリテーション部門を同じ組織にし、各フロアごとにリーダーを立てて取り組んでいます。これはお互いの仕事を尊重しながら、チームとして支え合っていくことが目的。その実現に向け、壁を取り払う組織づくりを実施しています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

看護と介護では、より生活の質の向上に向けたサポートを。介護の視点を看護にも取り入れ、ご自宅での状況を踏まえてご家族へ向けた介助指導にもさらに取り組んでまいります。次に口腔ケア。現在も各病棟に歯科衛生士が常駐し、口腔環境の維持に注力。食事面では管理栄養士によるサポートが重要ですから、「リハビリテーション」「口腔管理」「栄養」が三位一体となり、リハビリテーションの質の向上につなげています。これら以外の専門分野のスタッフに関しては、相談援助や法的支援を通じて生活をサポートするソーシャルワーカーも各病棟に2人常駐しています。退院後のフォローも、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、訪問看護など、介護保険を中心としたサポートを実施。患者さんが生活しやすいと思える環境づくりを。時には楽しいイベントも企画し地域全体で患者さんを支えていく一方で、次世代にもしっかりつなげていきたいと考えています。

梅津 祐一 病院長
1986年産業医科大学医学部卒業。臨床の傍らリハビリテーション科学と福祉工学の研究も行い、リハビリテーションに関する幅広い研鑽を積む。2007年「小倉リハビリテーション病院」に入職。副院長を経て、2013年より現職。地域活動を通じて、同院が担う役割を広め、今後の発展につなげるべく尽力するとともに、患者一人ひとりが自分らしく生きられる環境づくりに力を注ぐ。





