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医療法人陽善会 坂之上病院

(鹿児島県 鹿児島市)

小城 卓郎 病院長

最終更新日:2026/02/18

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地域と共存しながら温かく支える医療を

精神科を軸に3歳の子どもから高齢者まで幅広い世代に寄り添う診療で、これまで多くの心の声と向き合ってきた「坂之上病院」。3代目病院長を務める小城卓郎先生は「挑戦せずに諦めることはできない」というスポーツ選手の言葉に深く共感し、医療においてもその精神でさまざまな挑戦をしてきた。近年では漢方に特化した外来も設け、多種多様な症状に多角的なアプローチができる環境を整えている。病床は140床。根気強く患者に寄り添い、ときに家族の声にも耳を傾けながら、一人ひとりに適した社会復帰へのプログラムも実施。近年では子どもの発達に対する療育支援に取り組むなど、患者が生活する上でステップアップできるようなシステムを構築しているのが同院の特徴だ。年代関係なく、それぞれに合った環境調整に重きを置く一方で、風邪や腹痛といった一般内科診療でも地域の健康を支える。「偏見なく接してくれる地域の温かさが、躊躇しがちな精神科受診へのハードルを下げることにつながりました」。地域と共存できている今があるのは地域住民のおかげだと目を細める小城病院長に、病院の歴史や取り組み、今後の展望など幅広く聞いた。(取材日2025年11月21日)

開院から60年以上の長い歴史がある病院だそうですね。

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もともとは1956年に祖父が小城医院を開院したのが始まりなのですが、医療法人として開院したのは1964年。昨年で60年を迎えました。祖父は産婦人科の医師でしたが内科診療も行っていましたので、医療法人を設立してからも精神科の医師の父と診療を行っておりました。私が物心ついた頃から病院がありましたので、患者さんに遊んでもらっていたことをよく覚えています。自転車の乗り方も教えてもらいましたし、患者さんと過ごすのが生活の一部でしたので、自然と精神科の医師になりたいという気持ちが芽生えました。当時は患者さんの病気のことなど何もわからずに遊んでもらっていましたが、医師としての勉強をする中で、あの患者さんはこういう病気だったんだなと理解できたことも多かったです。ただ、小さな頃からさまざまな症状の方を見てきましたので、医師になってからも患者さんの様子に戸惑うことなく、すんなりと向き合うことができました。

これまでの取り組みについても教えていただけますか。

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当院は治療だけでなく、法人内の関連施設と連携し、その後の社会復帰に向けた支援まで一貫して行える体制を構築しています。特に父の代から就労支援には注力していました。現在、関連施設には就労継続支援B型事業所があり、時代の流れに合わせた変化も取り入れながら、継続的な支援を行っていきたいと考えています。また、当院の外来は3歳のお子さんから対応しており、入院も小学生から受け入れています。近年ではお子さんの発達に関する療育支援も実施。年齢関係なく治療を受けられる環境調整はとても重要なので、多職種と連携し一人ひとりに合った環境づくりに力を注ぎます。

幅広い患者層ですが、各年代、どのような主訴が多いのでしょう。

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副院長である妻が児童精神科の診療を担っておりまして、近年は特に発達障害のご相談で来られるお子さんが増加しています。自閉スペクトラム症やADHDなどの情報がインターネットなどを通じて広がっていることも要因の一つで、それは大人の方も同様。自分もそうなんじゃないかと受診される方が増えました。また、不登校のご相談も多いです。朝起きられない、動悸がするといったお悩みでは、受診をきっかけにうつ症状がわかるケースもありますので注意したいですね。一方、大人の方は眠れない、やる気が起きないといった症状や職場での人間関係に悩まれて来院されるケースが多いです。一般的に「こんなことで受診してすみません」とおっしゃる方ほど、うつ症状が進行していることが多いんですよね。心身ともに疲弊しているのに頑張って仕事をされているわけですから症状は悪化して当然。休養が必要です。そして高齢になるとやはり認知症のご相談が急増します。

睡眠の悩みも多いのでしょうか。入院についても教えてください。

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睡眠は非常に重要なバロメーターなんです。眠れない、もしくは寝すぎるというのは体と心からの大切なサイン。迷わず受診されてください。どのような場合に入院となるかは年代で背景が異なりますが、お子さんの場合は家族からの性的虐待など家庭環境に問題があったり自傷行為があったりするケース。中高生では摂食障害も見られるようになるため、栄養状態が非常に悪い場合は入院をお勧めします。自傷行為や摂食障害はそこに至った原因を探っていかなくては根本的な改善にはつながりませんので、根気強く寄り添うことが重要。そうならないためにはどうしたら良いかを患者、主治医、心理士、ソーシャルワーカー、看護師などチームで考えサポートします。そのプロセスは大人の患者さんも同じですが、快方に向かった後も大事。退院後は社会復帰に向けてのサポートに移行します。就労支援の前にまずは生活訓練を実施し、生活の土台を形成していくこともあります。

今後の展望と地域へのメッセージをお願いします。

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当院には認知症治療病棟もあるのですが、退院後の生活の場がなかなか見つからないことが少なくありません。そんな方々が安心して過ごせる高齢者施設を今後立ち上げられたらと考えています。私たちの仕事は患者さんの声にしっかり傾聴し、患者さんが求めていることをすくい上げて治療につなげていくこと。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることもあります。しかしながら、まだ受診に至っていない方もたくさんいらっしゃいます。私の大好きなスポーツ選手の「挑戦せずに諦めることはできない」という言葉は医療にもつながると思っていますので、地域支援センターとも積極的に連携し、なかなか受診に至らない方に適切な医療を届けることができたらと考えています。精神科は怖いところではありません。自分らしさを取り戻す場所だと思っていただけたらうれしいですね。私たちが足を運んで診療を行うこともあります。元気になることを諦めないでください。

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小城 卓郎 病院長

祖父が1964年に開院した「坂之上病院」を2代目の父から継承し、2014年に理事長兼病院長へ就任。精神科を軸とした同院を母体に、発達支援施設、就労支援施設、生活訓練施設なども運営し、患者の生活をさまざまな方向から手厚くサポートしている。治療後もステップアップできるようなシステムを構築するほか、受診しやすいようにと地域住民との交流も積極的に行う。日本精神神経学会精神科専門医。

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