国保中央病院組合 国保中央病院
(奈良県 磯城郡田原本町)
佐本 憲宏 院長
最終更新日:2026/03/05


4町で地域住民の健康を支える自治体病院
奈良県中和地域に位置する「国保中央病院」は、1991年11月、川西町・三宅町・田原本町・広陵町の4町が主体となり医療の空白地域を解消するために設立された組合立の自治体病院だ。開院当初から奈良県立医科大学の協力を得て診療体制を整え、現在は消化器内科を柱とする内科をはじめ、整形外科、外科、小児科など幅広い診療を展開している。中でも整形外科は同院の大きな特徴の一つで、手の外科、足の外科、脊椎外科の3分野を柱に専門性の高い医療を提供。2025年4月には脊椎・脊髄の外来を開設し、これまで大学病院に紹介していた手術を地域で完結できる体制を整えた。また小児科診療にも力を注ぎ、2020年4月には小児アレルギーの外来を開設。県内でも数少ない小児救急を担う医療機関として広域から患者を受け入れている。さらに、奈良県で不足していた緩和ケア病棟のほか、地域包括医療病棟も開設し、病床機能の整備も進めてきた。「地域の方が何かあった時に、まず相談できる病院であり続けたい」と語る佐本憲宏院長に、同院の診療内容や特徴について話を聞いた。(取材日2025年12月22日)
病院の成り立ちや地域における役割について、お聞かせください。

当院は1991年11月、川西町・三宅町・田原本町・広陵町の4町が、「この地域に必要な医療を自分たちの手で守りたい」という思いを共有し、医療の空白地域を解消するために設立した組合立の自治体病院です。開院当初は奈良県立医科大学の医局の協力を得ながら、内科や整形外科、小児科などを中心に診療体制を整えてきました。現在は、消化器内科を柱とする内科をはじめ、整形外科、外科、泌尿器科、麻酔科などを有し、充実した院内体制で診療にあたっています。内科と外科が連携して行う悪性腫瘍を含めた消化器病疾患の診療、消化器関連の外科手術を実施するほか、平日日中は救急医療を幅広く受け入れ、夜間も地域の輪番体制の中で可能な限り対応しています。基本理念である「医療の質を高め、信頼され、愛される心温かな病院」を胸に、これからも地域医療への貢献を続けていきたいと考えています。
中でも注力している診療は何ですか?

特に力を入れているのが整形外科です。着任以降、地域に不足している専門性を補おうと体制を強化してきました。現在は手の外科、足の外科、脊椎外科という3分野を大きな柱としています。手の外科と足の外科はいずれも専門とする医師が常勤し、骨折やスポーツ外傷、関節リウマチによる変形、人工関節や骨切り術など高度な手術にも対応しています。さらに、2025年4月に脊椎・脊髄の外来を開設したことで、これまで大学病院へ紹介していた脊椎手術にも対応できるようになりました。常に医師2人以上の体制で、頸椎症性脊髄症や脊柱管狭窄症、圧迫骨折に対するBKP手術などを行っています。一方で、肩や股関節などについては無理に抱え込まず、大学病院や奈良県総合医療センター、奈良県西和医療センターと連携し、適切な処置ができるようにしています。地域全体で役割を分担しながら、専門的な医療を提供することが大切だと考えているからです。
小児科診療にも力を注いでおられます。

患者ニーズの高い整形外科のような診療に注力する一方で、住民ニーズや採算性だけでは測れない分野にも、地域医療を担う病院として注力しています。その代表が小児科診療です。小児科は開院当初から基幹的な役割を担っており、現在は小児科の医師6人、全員が日本小児科学会小児科専門医の資格を持っています。県内でも数少ない小児救急も行い、医療圏を越えた幅広い地域から患者さんを受け入れています。またアレルギー診療にも力を入れており、2020年4月には小児アレルギーの外来を開設しました。日本アレルギー学会アレルギー専門医の資格を持つ医師を中心に、看護師、管理栄養士、薬剤師がチームとなり、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、喘息などを包括的に診療しています。食物経口負荷試験を入院にて行えるのも当院の強みです。予防接種や腎疾患、てんかん、低身長、肥満などに特化した外来も設け、地域の子どもとそのご家族を支えています。
時代や地域のニーズに合わせた取り組みも行っているそうですね。

奈良県でこれまで不足していた緩和ケア病棟を本館とは別棟に設けています。静かな環境の中で、「治療の場」ではなく「生活の場」として過ごしていただけるよう、中庭や車いすで外に出られるスペース、瞑想室などを整えています。医師に加え、日本看護協会緩和ケア認定看護師や日本看護協会がん看護専門看護師の資格を持つスタッフが診療にあたっています。ご家族向けの宿泊室も用意し、クリスマスコンサートなど季節の集いも行っています。また足のトラブルに対応するフットケアにも注力しています。タコや巻き爪、壊疽まで幅広く対応するだけでなく、日本看護協会皮膚・排泄ケア認定看護師による予防医療にも努めています。さらに、病床機能の見直しにも積極的に取り組み、2024年6月には地域包括医療病棟を開設しました。救急の高齢患者を積極的に受け入れるとともに、早期在宅復帰を支える体制を整え、地域医療の役割をより強化しています。
今後の展望や地域の方へメッセージをお願いします。

今後も当院が大切にしていきたいのは、地域の皆さんにとって「何かあれば相談できる身近な病院」であり続けることです。第1・第3・第5土曜にも外来診療を行い、平日の受診が難しい患者さんにも対応しています。また内科では消化器内科を中心に、内視鏡検査や救急対応など幅広い診療体制を整えており、日常の体調不良から専門的な検査まで安心してご相談いただけます。さらに、健康フェスティバルやロビーコンサートなどの催しを通じて、病気の時だけでなく、日頃から病院を身近に感じてもらえる取り組みも続けてきました。75歳以上の人口増加が進む中、高齢者医療はどの地域でも避けて通れない課題です。今後は認知症の早期気づきやさらなる救急体制強化にも目を向けていきたいと考えています。地域の医療機関や専門病院と連携しながら、皆さまが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる医療を、これからも支えていきたいと考えています。

佐本 憲宏 院長
1989年奈良県立医科大学医学部を卒業。同大学での初期研修後、松阪中央総合病院や米国留学などを経て、奈良県総合医療センターに勤務。市立東大阪医療センター副院長を務めた後、2020年より現職。専門は整形外科、特に足の外科で、日本足の外科学会理事を務める。学生時代から剣道に親しみ、スポーツによるけがの経験が診療の原点となっている。





