独立行政法人国立病院機構 奈良医療センター
(奈良県 奈良市)
永田 清 院長
最終更新日:2026/02/25


独自の強みや機能を生かして地域社会に貢献
奈良市の西ノ京エリアで75年の歴史を刻む「奈良医療センター」。薬師寺の双塔をはじめ古都の景観を一望できる、小高い丘の上にある。開設当初は結核の療養所として、その後は国立病院として政策医療である重度心身障害や筋ジストロフィーといった神経・筋難病、さらにてんかんや機能的脳神経外科の診療にも注力する同院。中でもてんかんやパーキンソン病では、特殊な検査や外科的治療も実施するなど高い専門性が特色だ。また結核診療の流れから呼吸器領域の診療体制が充実しており、近年は脊髄損傷患者の呼吸リハビリテーションをもチーム医療で厚くサポート。さらに、近隣にある奈良県総合医療センターとは良好な連携関係を築き、同センターから急性期の患者を中心に積極的に受け入れ、地域医療において、在宅医療や回復期への橋渡しの役割も担っているという。2024年から院長を務め、「当院の特徴を生かして、社会に貢献できることをいっそう増やしていきたい」と話す永田清先生に、同院の歩みや詳しい診療内容、院長としての思いもじっくりと聞いた。(取材日2025年11月20日)
最初に、こちらの歴史や診療内容をご紹介ください。

当院は1950年に、結核診療を行う国立の療養所として開設されました。現在、数は減少していますが、一定数の結核の患者さんがいらっしゃいますので、当院では入院治療を行っています。また、政策医療として結核に加え、重度心身障害や筋ジストロフィーなど神経・筋難病の治療や療養も行ってきました。さらに脳神経外科では、てんかん外科および機能脳神経外科と呼ばれる領域に力を入れています。これらの病気を専門的に診る医療機関は限られるため、患者さんは県内全域から来られますし、他府県から受診されることもあります。地域の医療機関として、かつては当院も急性期医療にも取り組んでいましたが、2018年に当院から700mほどの距離に奈良県総合医療センターが移転開院しました。ですので、近年はそちらで急性期治療を終えた患者さんや、当院でも治療できる軽症から中等症の患者さんを受け入れ、回復に向けた医療を行う役割も担っています。
てんかんについては、専門的な診療を行っているそうですね。

当院は2021年から、奈良県のてんかん支援拠点病院に指定されていて、てんかんを専門とする医師が多数診療に携わっています。てんかんは発作と脳波から診断し、一般的には長期間にわたる薬物治療を行います。しかし、まぎらわしい病気があったり、てんかんの発作かどうかを見極めるのが非常に難しいこともあります。当院では入院による長時間ビデオ脳波モニタリング検査が可能で、正確な診断につなげています。また薬物治療に加え、てんかんの病巣を突き止めて切除する、機器を埋め込み電気で刺激して発作を抑制するといった外科的な治療も行っています。このような検査や治療を行う医療機関は限られますので、薬物治療で思うような改善が見られない難治性のてんかんの場合には、ぜひご相談いただきたいと思います。
そのほかの診療についても詳しくお聞かせください。

機能脳神経外科領域ではパーキンソン病や振戦、ジストニアといった不随意運動を起こす病気に対して脳深部刺激療法や電気凝固術などの外科的治療に取り組んでいます。外科的治療という選択肢があることも広めていきたいですね。また脊髄小脳変性症や筋ジストロフィーを含め神経・筋難病全般に注力し、治療とともに全身管理やリハビリ、福祉面も含めたトータルな支援が可能です。重症心身障害者には通所支援事業、居宅訪問型児童発達支援事業も行っています。呼吸器内科には7人の医師がいて、結核に加え喘息などアレルギー疾患、COPD、睡眠時無呼吸症候群の診療も行います。呼吸リハビリも充実していて、呼吸器内科では脳神経外科や整形外科、看護師、リハビリスタッフ、管理栄養士といった多職種のチームで対応。呼吸障害や神経症状のある脊髄損傷の患者さんも急性期病院から受け入れ、長期にわたる継続治療とリハビリで呼吸器離脱や在宅復帰を支援します。
地域医療においては、新たな役割も担うようになっているとか。

奈良県総合医療センターは三次救急を担う奈良県北部の大規模中核病院ですが、患者さんや救急搬送が集中し、ベッドが不足するタイミングもあります。私自身も、2018年に当院に赴任するまでは市立奈良病院で脳神経外科の手術を担当しており、急性期病院の現状はよく知っています。そこで、2018年以降は同センターからの「下り搬送」、つまり、あちらで急性期治療を終えた患者さんや、軽症から中等症で当院でも治療可能な患者さんを積極的に受け入れ、症状が安定するまで入院治療を行うようになりました。特に新型コロナウイルスの流行時は、この連携が役に立つことがわかったので、新たな役割分担でも地域医療に貢献したいですね。もちろん、近隣の開業医院からのご紹介や軽症の救急搬送は、今後も直接受け入れます。また当院は広大な敷地や美しい景観に恵まれていて、療養に適した環境でもあり、緩和医療にも今後力を入れていく考えです。
最後に、今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

当院は小規模な病院ですので、医療スタッフも職員も皆顔見知りで、風通しの良い風土があります。また、敷地内は世界遺産を借景とした桜の名所で、春には近隣にお住まいの方がお花見をされるなど、地域からも親しまれています。私自身もさまざまな診療を担当したり、過去に手術をした患者さんと当院で再会したりする中で、患者さんの人生や地域医療についてより広い視点で捉えるようになりました。今、国立病院の経営は厳しい状況にありますが、患者さんに寄り添い支え続けていこうという当院の雰囲気は、これからも大事にしたいですね。一方で、神経系や呼吸器系では独自の強みもあります。特に脳神経外科の先進的な技術は、今後の医療の進歩と結びつく可能性も秘めていますので、引き続き意欲的に取り組んでいきます。当院ならではの特徴を生かして、地域社会に貢献できる機会をいっそう増やしていきたいと思います。

永田 清 院長
1987年奈良県立医科大学を卒業後、同大学第二外科(脳神経外科)に入局。同助手を経て奈良県立奈良病院救命救急センター(現・奈良県総合医療センター)、大阪警察病院、奈良県立三室病院(現・奈良県西和医療センター)、市立奈良病院で手術を中心に急性期治療に従事。2018年奈良医療センターへ入職、統括診療部長、特命副院長を経て2024年より現職。脳神経外科外来や機能脳神経外科の手術にも参加している。





