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独立行政法人国立病院機構 三重病院

(三重県 津市)

谷口 清州 院長

最終更新日:2024/06/03

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小児医療の基幹的病院として専門医療を提供

緑が広がる広い敷地に立つ「三重病院」。全国に展開する国立病院機構の一員として、長く地域医療に貢献してきた。小児の急性疾患、慢性疾患、小児救急、さらに重症心身障害児・者の医療とケアに幅広く対応しており、三重県内の小児医療を担う重要拠点となっている。中でも患者数の多いアレルギー疾患に関しては、臨床と研究に積極的に取り組んでおり、先進の治療を導入してきた実績がある。谷口清州院長は感染症が専門で、WHOや国立感染症研究所にて新興感染症やワクチン戦略など感染症対策にも従事してきた人物。同院の研究・検査体制について「原因がわからない発熱に対しても迅速に専門的な検査ができ、小児感染症専門家による治療につなぐことができることが強み」と話す。小児の内科的疾患だけではなく、外科疾患、整形外科疾患、耳鼻科疾患に対しても専門的な医療を提供しており、心に課題を抱える子どもたちにとっても小児心療内科を専門とする医師が対応し、隣地の三重県立子ども心身発達医療センターとの連携も強い。そんな同院の特徴や小児医療の実情について聞いた。(取材日2024年3月13日)

幅広い小児医療を行っておられます。成り立ちを教えてください。

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当院は1939年、傷痍軍人三重療養所として創設されたことが始まりです。1975年国立療養所三重病院に改称、2004年独立行政法人化に伴い国立病院機構三重病院となりました。地方にあって一つの病院ですべての医療を完結するのは困難なことから、先々代の院長の時代に三重こども病院群として、小児医療における役割分担を行いました。大学病院は多くの医療資源を必要とする小児白血病などの血液悪性腫瘍や先天性心疾患を、三重中央医療センターはNICUや新生児救急車を備えた新生児医療を担当し、当院は感染症や自己免疫疾患など急性に発症する疾患と救急対応、神経疾患やアレルギー疾患など慢性的な疾患に対応することとなりました。その後、小児整形外科、小児外科、先天性難聴などの小児耳鼻科、そして近年小児心療内科が加わりました。一方では病院統廃合に伴い重症心身障害児・者、神経難病や成人糖尿病に対する医療も行っています。

小児の総合的な診療を行うという重大な役割をお持ちなのですね。

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小児医療の各分野のエキスパートがそろっています。中でも患者さんの数が多いのはアトピー性皮膚炎や喘息、食物アレルギーなどのアレルギー疾患で、医師も7人在籍しています。30年来、臨床と研究に積極的に取り組んできており、先進の治療を含めさまざまな治療法を導入していることが強みです。また伝統的に感染症とワクチンの研究が盛んで、多彩な臨床疫学的な研究を行っており、これらは診療にも生かされています。例えば熱が続いているがインフルエンザも新型コロナウイルス感染症も陰性で原因がわからないという場合、当院では全自動遺伝子解析装置により21種類の呼吸器病原体の核酸を45分で検出することが可能です。これらの先進的検査を合わせて鑑別診断を行うことによって、川崎病や小児リウマチ性疾患など感染症以外の発熱性疾患の診断につながり、最も心配な「熱が下がらない」ことに対し、早期の診断と治療につなげています。

小児に関して他にはどのような科がありますか?

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小児科としては、てんかんや神経筋疾患、糖尿病など内分泌代謝性疾患やネフローゼ症候群を含む腎臓疾患や肥満症など小児の生活習慣病、また小児心療内科では、不登校や自閉症、ADHDなどの発達障害、摂食障害のお子さんを診療します。異常行動が強く対応困難な症例の場合は隣地にある「三重県立子ども心身発達医療センター」と連携しています。外科的な領域でも小児特有の対応が必要であり、外科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科がそれぞれ小児に特化した診療をしています。小児整形外科では先天性股関節脱臼、ペルテス病や先天性内反足などに対し手術とともにリハビリテーションまで行います。これらの疾患の入院治療は長期間に及びますので、隣地の特別支援学校に通うことができます。さらに重症心身障害児・者については長期入院のみならず、療育や生活に関する支援やデイサービスも提供しており、レスパイト入院にも対応しています。

先生やスタッフの方々が日々心がけておられることは?

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子どもの診療は医療だけでなく心のケアも大切で、医師、看護師に加えて、理学療法士などのリハビリテーションスタッフ、児童指導員、保育士、心理療法士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど多くのスタッフが一丸となって、子どもや障害者に優しい医療、ケアを心がけています。このためには多くの人手も必要なのですが、国家として医療費削減に向かっている現状では難しいことも多いです。神経難病病棟では、発語ができず意思疎通が難しい患者さんに対しても、視線で操作する装置や、まつげの動きに反応するセンサーによるコールなどを介してよくコミュニケーションを取ってくれていますし、重症心身障害のお子さんでは日頃の表情やバイタルサインなどから状態の把握に努めています。将来のあるお子さんたちですから、現状のみならず先の見通しまで含めて親御さんに丁寧にわかりやすくお話しすることで、少しでも安心していただけるようにも努めています。

今後の課題や展望について教えてください。

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慢性疾患や重症心身障害の患者さんも当然のことながら成人になりますので、小児期疾患ともに生活習慣病や悪性腫瘍など成人期特有の病気が出てきます。小児科医はこれらには詳しくありませんし、先天性疾患や重症心身障害がある患者さんの診療は成人の内科では一般的ではありませんので、より良い医療のためには小児科と成人の内科が協力していく必要があります。この移行期医療をどのように整備していくかは今後の課題の一つです。政府が医療費削減へと動き、地方では医師が足りない中で、不採算部門である小児医療と移行期医療を維持するのは困難なこともありますが、私たちは今後もより良い医療を実践し、その礎となる臨床・研究を推進し、地域の方々の協力を得ながら、行政や他の医療機関とも連携して小児医療の中核的存在として地域医療に貢献したいと思っています。

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谷口 清州 院長

1984年三重大学医学部卒業、同大学小児科学教室および関連病院小児科にて研鑽を積み、1992年ガーナ国野口記念医学研究所プロジェクトリーダーとして国際共同研究を行う。国立三重病院、国立感染症研究所感染症情報センターに勤務後、世界保健機関(WHO)本部感染症対策部にて国際的な感染症サーベイランスとアウトブレイク対応を行う。国立感染症研究所感染症情報センター第一室長を経て2021年より現職。

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