独立行政法人国立病院機構 三重病院
(三重県 津市)
菅 秀 院長
最終更新日:2026/04/06


小児から高齢者まで、地域に安心を届けたい
三重県の小児医療を支える拠点病院として、小児の急性期医療から慢性疾患、重症心身障害児・者のケアまで幅広い役割を担う「三重病院」。小児二次救急医療機関として24時間365日体制で受け入れを行い、地域の医療機関と連携しながら県内全域の重症例に対応している。小児科では、てんかんなどの神経筋疾患、糖尿病などの内分泌代謝疾患、腎疾患など多様な疾患を診療。中でもアレルギー疾患では30年以上にわたる臨床実績を持ち、先進的な治療にも取り組んでいる。整形外科や耳鼻咽喉科でも小児医療のエキスパートが対応。さらに小児心療内科では不登校や発達障害、摂食障害などにも幅広く対応する。2025年4月に院長に就任した菅秀(すが・しげる)先生は、小児がんや感染症、糖尿病、内分泌疾患など幅広い分野で診療・研究に携わってきた小児科医だ。「安心できる良質な医療を提供し、地域に貢献する」という理念のもと、小児医療の高度な専門性を維持しながら、変化する地域の医療ニーズへの対応を進めている。成人診療体制の強化など新たな取り組みも含め、同院の特徴や今後の展望について話を聞いた。(取材日2026年3月10日)
御院の歩みと地域における役割を教えてください。

当院の起源は1939年の傷痍軍人三重療養所にさかのぼります。国立療養所を経て、2004年に国立病院機構三重病院となりました。大きな転換点は1990年頃で、地域における小児医療の役割分担が明確化された時期です。三重子ども病院群として、三重大学医学部附属病院が血液悪性腫瘍や心疾患、三重中央医療センターが周産期・新生児医療を担う中、当院は急性の感染症や救急対応、アレルギーや神経疾患などを担う小児医療の中核拠点となりました。その後も、小児整形外科や小児外科、先天性難聴などに対応する耳鼻咽喉科、さらに小児心療内科を加え、診療体制を拡充してきました。また、1998年の国立病院・診療所の統廃合に伴い、重症心身障害児・者のケアや神経難病、成人糖尿病の診療も担うようになりました。現在脳神経内科や循環器内科なども整備し、小児医療の専門性を核としながら、地域に求められる医療を幅広く提供しています。
小児医療の特徴についてお聞かせください。

当院は小児二次救急医療の拠点として、24時間365日体制で救急患者を受け入れ、地域の小児医療を支えています。病診・病病連携の中で、小児医療の各分野を専門とする医師がそろっている点が大きな強みです。小児整形外科や小児外科、小児心療内科など小児特有の疾患に対応する体制を整え、耳鼻咽喉科でも小児診療に精通した医師が診療にあたっています。また、重症心身障害児・者の医療も重要な柱の一つです。在宅での対応が難しい場合には長期的に受け入れる体制を整えており、成人の患者さんも入院されています。また、てんかんなどの神経疾患や糖尿病、アレルギーといった小児期発症慢性疾患の患者さんも多く、医療の進歩により成人期を迎える方が増えています。中には成人診療科への移行が適切なケースもあります。こうした患者さんが生涯にわたり適切な医療を受けられるよう、地域の医療機関と連携しながら移行期医療にも積極的に取り組んでいます。
脳神経内科にも注力されているとお聞きしました。

当院は三重県の難病医療の拠点病院として、神経難病の診療に取り組んでいます。主な対象は筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病など、神経や筋肉に関わる疾患です。近年はこうした難病診療に加え、回復期を含めた長期的な支援体制の整備にも力を入れています。神経疾患の中でも患者数が多い脳卒中などの脳血管障害では、急性期治療後すぐに在宅復帰が難しいケースも少なくありません。そのため、リハビリテーションや療養を含めた継続的な医療提供が当院の重要な役割となっています。リハビリテーション科では小児から高齢者までを対象に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が連携し、日常生活動作の向上をめざした支援を行っています。今後も地域のニーズに応え、受け入れ体制のさらなる充実を図っていきます。
小児を中心としながら、成人医療にも取り組まれているのですね。

少子化により小児患者が減少する一方で、地域の高齢化に伴い成人医療のニーズは高まっています。このような背景を踏まえ、当院でも成人医療への対応を進めています。循環器領域では、三重中央医療センターで診療していた医師が国立病院機構のシニア医師制度を活用して着任し、体制を強化しました。当院では、急性期治療は行っていませんが、急性期病院からの紹介を受け、慢性期におけるリハビリテーションや療養を担っています。紹介患者が中心となるため、紹介元医療機関との連携が不可欠です。今後も患者さんのニーズに応え、地域医療全体の質向上に貢献できるよう、連携体制の強化に努めていきます。
地域にとってどのような存在であり続けたいとお考えでしょうか。

当院の理念は「安心できる良質な医療を提供し、地域に貢献すること」です。安心とは医療者が与えるものではなく、患者さんが実感するものだと考えています。だからこそ、患者さん一人ひとりと真摯に向き合い、納得して医療を受けていただける「寄り添う医療」を何より大切にしています。小児医療については地域の中で一定の認知と評価をいただいていますが成人診療の取り組みについては、まだ十分に知られているとは言えません。今後は近隣の先生方との連携をさらに深めるとともに、SNSなども活用しながら情報発信を強化していきたいと考えています。病院の雰囲気や医療者の姿が、安心して受診していただけるきっかけになれば幸いです。健康のことで困ったときに「まず相談してみよう」と思っていただける、地域に開かれた病院であり続けたいと願っています。

菅 秀 院長
1989年三重大学医学部卒業。小児科の医師として同大学医学部附属病院などで研鑽を積んだ後、同大学大学院、米国留学を経て、三重大学医学部附属病院にて主に小児がん患者を対象とした研究や臨床に従事。2008年より三重病院に勤務。臨床研究部長、副院長を歴任し、2025年4月同病院院長に就任。専門は小児科全般、特に感染症、免疫、小児糖尿病、内分泌疾患。日本小児科学会小児科専門医。





