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医療法人社団富家会 富家病院

(埼玉県 ふじみ野市)

富家 隆樹 理事長

最終更新日:2020/11/25

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療養病院のオアシスをめざす革新的存在

30年以上の歴史を持つ「富家病院」は、重度の慢性期患者を積極的に受け入れ、医療を提供する療養型病院だ。202床を有し、広く快適な人工透析室と専門スタッフが「あきらめないリハビリ」を実践するリハビリテーション室の完備、訪問介護、隣接するメディカルホームは重度の患者ほど家賃を安く設定するなど多くの特色を持つ。療養病院をイメージするとき、人生の行き着く先と考える人も多い。その行き着く先が「最高のオアシス」でありたいと語る富家隆樹理事長。先代の母から同院を引き継いだ1999年以降、「身体抑制ゼロ」の目標を設定し、「されたい医療、されたい看護、されたい介護」を理念として実現してきた。そして患者と家族、そして病院スタッフが、入院生活という人生のひとときの「物語」をともにつくる「ナラティブホスピタル」の構想を導入し、2015年にはその取り組みが評価されグッドデザイン賞を受賞している。療養病院として革新的で多彩な機能を持つ同院について富家理事長に話を聞いた。(取材日2017年8月23日)

病院の成り立ちと理念をお聞かせください。

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1980年に、先代である僕の母親が強化型老人病棟、療養病床、昔でいう老人病院を立ち上げました。必ずしも治療や退院を前提としない長期入院、いわゆる社会的入院という言葉が浸透していた頃からの病院だったので、僕が同院を引き継いだ1999年当時は、まだ老人病院への偏見がありました。高齢化社会の始まりの頃でもありましたから、介護や老年医療というものが今のように確立できておらず、それも仕方がない部分があったと思いますが、母が経営し、僕を育ててくれたこの病院が偏見を持たれるような病院であるわけがないし、そうであってはいけないと思いました。院長就任時から、医療サービスが必要な重度の患者さんを診ていく病院を作ろうと決め、来てくれるすべての患者さんに満足してもらう、あるいは自分の親にしてあげたい医療を患者さんに提供していこうという思いから「されたい医療、されたい看護、されたい介護」という理念を立ち上げました。

こちらの一番の特色は何でしょうか。

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重度の慢性期の方を積極的に診ていることです。重度の方を診るという点では、特長的な病院だという自負があります。人工呼吸器の管理や重複した障害がある方の人工透析なども行っていて、自動喀痰吸引器など先進的なものを積極的に取り入れています。僕が院長になって最初に取り組んだ一番大きなことは、身体抑制の廃止でした。自分が作りたい、あるいは入りたい病院に身体拘束という選択肢はなかったので、それをゼロにするための取り組みでした。目標の実現に必要なのは、トップの確固たる決意だと思います。「減らせたらいいね」ぐらいでは、絶対になくならない。そのトップの考えが浸透した「病院の文化の醸成」が大事なのではないかと思います。

こちらで導入されているナラティブについて教えてください。

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たとえば患者さんが動けなくなり人とコミュニケーションが取れなくなったとしても、その人の物語はそこで終わりではなく、周りがその人の物語を紡いでいくことができる。具体的な取り組みとして、職員と患者さん、家族が自由に書き込む「ナラティブノート」や患者さんの写真を飾った「物語の階段」などの記録を通して思いを共有しています。入院時の写真って皆さん持っていらっしゃらないのですが、入院生活も人生の一部です。旅行に行ったり、みんなでご飯を食べに行ったら写真を撮るのだから、当院にいる間も写真を撮っていい、物語の1ページですよねという意味で、月に数回プロのカメラマンに撮影してもらっています。おじいちゃんが亡くなったご家族が、三回忌や七回忌で「そういえば富家病院に写真があったな」と見に来てくれたら、僕らとしてもうれしいし、何よりもおじいちゃんの物語が止まっていないというのがナラティブの取り組みだと思います。

こちらは長く地域リハケアネットワークの活動をされていますね。

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10年ぐらい前から行政と周辺の介護施設との連携を続けています。近年、地域包括ケアが提唱されはじめ、地域リハケアネットワークの意義、方向性がより強固になったと思いますね。今後は、これから増える認知症を地域の方々と支えられる活動を進めていきたいと思います。認知症の問題の一つは殴ったり暴言を吐いたりする問題行動ですが、そのほとんどに理由があるということがわかってきました。昔、警備の仕事をしていて、巡回のつもりで夕方になると帰ってこなくなるおじいちゃん。毎日、彼女の中ではまだ小学生の、55歳の息子を小学校まで迎えに行くおばあちゃん。そんな彼らに「駄目よ」「何やってるの」と叱る相手は、患者にとって怪物なんです。怪物は怒鳴らなきゃ、殴らなきゃとなる。そういうことを理解することで、問題行動は消失していくこともあります。

最後に病院としての展望と読者へのメッセージをお願いします。

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入院に関しては、今後も重度の患者さんを積極的に診ていく方針は変わりません。これからは、在宅にも目を向けて私どもが取り組むことがミッションだと思いますね。要介護者でかつ単身独居の方が、長く在宅でいられる環境がどこまで構築できるか、あるいはサービスを提供できるか。重度になればなるほど、病院がバックにある医療法人が支えていく必要があると思いますし、そこにイノベーションを探しているところです。隣接するメディカルホームでも、より重度のケアを多く必要とされている方々をサポートしていきたいため、費用設定を工夫しています。当院に入院されている方の中には、入院を30軒断られてここにたどり着いたという方もいらっしゃいます。選択肢の少ない方が多く入院されている病院ですが、「たどり着いた病院は、最高のオアシスだった」と言われる病院づくりをめざしています。そこに当院の存在価値を見出していきたいですね。

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富家 隆樹 理事長

1991年、帝京大学医学部卒業後、同大学第二外科に入局。1999年医療法人社団富家会富家病院院長、2004年同法人理事長に就任。同院をナラティブホスピタルとしてグッドデザイン賞受賞などに導く。日本慢性期医療協会常任理事、埼玉県慢性期医療協会会長、帝京大学医学部教育センター臨床准教授。

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