医療法人社団 春日部さくら病院
(埼玉県 春日部市)
古閑 比斗志 院長
最終更新日:2020/11/25
外来から在宅まで地域医療を総合的に担う
地域医療に携わること約40年。2015年からは療養型の病院として地域医療に貢献してきた「春日部さくら病院」は、在宅医療に豊富なノウハウを持つ「さくらライフグループ」の1つだ。グループメリットを十分に生かしつつ、地域医療を担う使命を自覚して患者ニーズに応える医療ネットワーク体制を構築し活躍している。院内は明るくわかりやすい造りで清潔感にあふれ、通院用の無料送迎バスも運行している。人工透析は約30年の歴史を持ち、同じ春日部エリアの人工透析が可能な地域基幹病院との連携も強固。昨年就任した古閑比斗志院長は、長く外務省に勤務し海外経験が豊富で危機管理にも精通した人物。春日部市医師会をはじめ、近隣の大学病院や基幹病院とのネットワークづくりに尽力し、より良い地域医療体制づくりに日々まい進する古閑院長にさまざまな話を聞いた。
(取材日2018年4月5日)
地域でのネットワークづくりに尽力されていますね。
外務省では、医療資源の比較的乏しい地域で外交業務に従事する外交官や在留邦人の方々の医療的なバックアップをするために勤務していましたが、現地で災害が起こった場合や先進国への移送手段が限られた地域で円滑に医療活動を行うための折衝活動なども行っていました。甚大なハリケーン被害に見舞われた地域にいた時は、国際緊急援助隊の受け入れ、どんな援助ができるのか、またどんな援助が現地で必要なのかなどのコーディネートも行いましたし、被害に遭われた邦人の方の行方がわからなくなり現地の方々に協力を得て捜索したこともありました。極端に移動手段が限られた地域から重症の邦人患者を移送するために他国の支援をお願いしたこともあります。そんな活動を通じてネットワークの大切さを実感しました。地域医療でも顔の見えるネットワークづくりはたいへん重要です。地元医師会はもちろん、地域の大学病院や基幹病院との連携も重要視しています。
外来、入院、退院後の在宅診療など一貫体制をされていますね。
病院というのは地域医療を守るための存在であると考えています。ですから、春日部エリアの地域医療の一翼を担うのはわれわれの使命です。春日部市医師会と協力しての病診連携はもちろんのこと、より高度な検査や専門性の高い手術などは他の大学病院や基幹病院と密な連携体制を構築して治療にあたっています。せっかく縁あって同じエリアで医療に従事しているのですから、顔の見える関係をつくりお互いに協力し合って、より良い地域医療環境を整えたいと思っています。この4月から当院にも在宅診療の経験がとても豊富な医師が来てくれました。在宅医療に豊富なノウハウを持つ「さくらライフグループ」のグループメリットも生かしつつ、さらに円滑な地域医療の輪を整えたいと思っています。
在宅診療と病院が密に関わるメリットは何でしょうか?
一番は症状が重篤化する前に適切な医療が施せるということでしょうか。病気の早期発見早期治療が有効であることは皆さんご存知かと思います。当院の医師が在宅診療を担当させていただくことで、入院加療が必要な場合にはいち早く対応し、治療後にはまたご自宅で入院前と同様の生活を送っていただけるようにしていきたいと思っています。同様に連携をとっている施設やクリニックの先生方にも早めに当院にご連絡いただけるようお願いしています。生活の質をできる限り保って、長く元気にご自宅で過ごしていただけるのが、私たちの願いです。また、当院の人工透析は約30年の歴史があります。ベッド数も60床あり、全自動透析アシストシステムを導入し経験豊富なスタッフのもと、安心して治療していただけるようにしています。もちろん人工透析を行う病院同士の連携体制も整えています。
院長として、一人の医師として心がけていることはありますか?
院長としての立場からスタッフにお願いしているのは、患者さんに優しく接してほしい、ということです。患者さんの立場に立ったものの見方をしてほしいですね。当院は療養型の病院ですから、ご高齢で寝たきりの方もいらっしゃいます。中には話しかけてもなかなか反応が返ってこない方もいらっしゃいますが、人間の機能で最期まで残るのは聴覚です。聴覚障害のある方はまた別ですが、多くの方は最期まで周囲の音や声を聞いています。そのことをきちんと認識して丁寧に優しく対応してほしいのです。また一人の医師としては「自分のしてほしいことを患者さんにしたい」と思っています。逆に言えば自分がしてほしくないことは患者さんにもしたくないですね。私はかつて脳幹梗塞を患いましたが、リハビリを行って今では後遺症をまったく感じさせないまでに回復しました。その時の患者としての経験も役に立っていますね。
今後の展望を教えてください。
地域の連携ネットワークをさらに強固なものにすること、また、在宅医療を含めた生活の質をできる限り長く保てる治療の輪を広げることに尽力していきます。さらに大学病院などの協力を得て、専門性の高い外来診療も増やしていきたいと考えています。専門性の高い治療を受けたいと思うとき、適切な医療機関を自力で探し受診するのはたいへんな労力を要します。身近ないつもの病院でそんな専門性の高い外来診療が受けられれば、患者さんに大きなメリットとなるでしょう。あとはリハビリテーションの分野も拡充したいので現在人材の確保に努めています。これからも、地域医療の確たる存在として、存在意義を示せるように努力していきます。
古閑 比斗志 院長
外務省に長く勤め、モンゴル、ホンジュラス、アフガニスタン、マイアミなど世界各地で勤務。厚生労働省検疫所、企業産業医などでの勤務後、2017年7月同院の院長に就任。自身も脳幹梗塞を患い闘病・リハビリ生活をした経験がある。東北大学大学院医学系研究科、近畿大学医学部、獨協医科大学埼玉医療センターなどの非常勤講師も務める。感染症やNBC(核・生物・科学)やBCP(事業継続計画)にも造詣が深い。