無痛分娩についての知識を深め
前向きで幸せな出産を
医療法人恵愛会 恵愛病院
(埼玉県 富士見市)
最終更新日:2021/07/07
- 保険診療
- 妊娠高血圧症候群
背骨の硬膜外腔という場所にカテーテルで麻酔薬を入れることで、出産のときの痛みの緩和をめざす無痛分娩。年々希望する人は増えているといわれるが、どの程度の緩和が期待できるのかといった疑問や麻酔への不安など、無痛分娩を選択するまでに悩む人も多いのではないだろうか。そこで、長く地域に根づいた産科医療を提供し、2019年1月〜12月には1003件の無痛分娩を行った「恵愛病院」の林隆(はやし・たかし)理事長に、無痛分娩のメリットやリスクを含む概要を聞いた。 (取材日2020年12月9日)
目次
痛みの緩和や、産後の早期回復が期待できることが利点。無痛分娩に精通した医師や助産師のいる施設の受診を
- Q無痛分娩のメリットを教えてください。
- A
無痛分娩のメリットは、硬膜外麻酔で陣痛の痛みの緩和を図りリラックスしてお産に臨めることが期待できる点です。麻酔をすると分娩中の血圧が上昇しにくくなるので、もともと血圧の高い人や妊娠高血圧症候群がある方は、血圧が高くなるリスクの軽減につながることもメリットの一つでしょう。また、陣痛の痛みによる体力の消耗を抑えることも望めるので、産後の早期回復にもつながります。硬膜外麻酔は全身麻酔と違い意識ははっきりしていて、まったく感覚がなくなるわけではないので、子宮が張る感じや赤ちゃんが降りてきて生まれてくる感覚があるほか、最後のところではご自身のいきみも必要になるため、お産の経過を感じることができます。
- Q無痛分娩のリスクはどのようなことがありますか?
- A
無痛分娩がお産に与える問題としては、陣痛が弱くなってしまうため状況に応じて陣痛促進剤が必要になることです。陣痛が弱くなると最後のところで赤ちゃんが娩出されにくくなり、吸引分娩や鉗子分娩となる可能性が増えます。出産後も子宮の戻りが悪くなると出血量が多めになることもあります。また麻酔の副作用として、低血圧になったり、細かいことでは皮膚のかゆみや吐き気などの症状、産後に頭痛が起こる人もいます。そのほか、血液に凝固異常がある、麻酔薬にアレルギーがある場合は麻酔自体が危険ですし、脊椎や背骨の手術をしたことがある人や、高度肥満の人は硬膜外麻酔が困難で、十分な鎮痛作用が得られないことがあります。
- Qこちらの病院での無痛分娩の特徴を教えてください。
- A
当院では24時間365日無痛分娩に対応しています。夜間や休日はスタッフの数に限りがあるので、緊急手術などを行っているときは難しい場合もありますが、実際には希望する人のほとんどに対応しています。初めから無痛分娩をご希望される人もいれば、特に検討していなかった人でも実際に陣痛が来てみたら想像以上に痛くて、その場で無痛分娩を希望されることもあります。一方で、無痛分娩を考えていたけれども思いのほか陣痛が乗りきれて、結局麻酔をせずに出産する人もいらっしゃいます。そういった個別のニーズに応えられる体制でいることで、私たちは「いつでも無痛分娩ができるという安心感」を提供したいと考えています。
- Q富士見市だけでなく沿線の地域から来られる人も多いそうですね。
- A
近隣にお住まいの方はもちろん、富士見市全般だけではなく、西東京市、さいたま市、東武東上線沿線の和光市、東京都板橋区、練馬区、川越市など、さまざまな地域から受診されています。最初から無痛分娩で出産すると決めている人は、遠方から来られる傾向にありますね。当院では、そういった人たちも来院しやすいようにシャトルバスを運行しています。みずほ台駅経由、朝霞台駅・北朝霞駅経由、南与野駅・北浦和駅経由の3路線あり、日・祝日と年末年始を除く月〜土曜に運行しています。運行状況がリアルタイムでわかるアプリにも対応していますので、ぜひご利用ください。
- Q経験豊富なスタッフがそろっていると聞きました。
- A
当院では、産科の医師、麻酔科の医師、助産師、看護師みんなが無痛分娩に精通しています。中でも助産師の役割はとても重要です。例えば通常のお産では、痛みの具合を表情などから読み取って分娩がどれくらい進んでいるかを判断していきますが、無痛分娩ではそれがわかりづらく、最後に呼吸法に合わせていきむ際も、そのタイミングを痛みの具合が読みづらい中で正確に見極める必要があるため、経験豊富な助産師が欠かせないのです。また、当院の麻酔科の医師は女性で出産経験もあり、いろいろと妊婦さんの気持ちもわかると思います。このように、職種に関わらずすべてのスタッフが妊婦さんに寄り添い、体だけでなく心のサポートも心がけています。
林 隆 理事長
1996年日本医科大学卒業後、同大学付属病院産婦人科にて研修。その後、葛飾赤十字産院、東京都立墨東病院周産期センター、埼玉医科大学総合医療センターなどで主に周産期医療(産科)に従事。2004年副院長に就任。その後2014年より理事長・院長に就任。地域の患者が安心して快適に出産できる病院づくりに専念。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。