医療法人恵愛会 恵愛病院
(埼玉県 富士見市)
林 隆 理事長
最終更新日:2022/12/28


半世紀以上地域の出産や子育てを支える存在
前身となる「つるせ産婦人科」時代から約半世紀以上にわたり、この地の妊娠・出産・子育てを見守ってきた「恵愛病院」。思わずホテルと間違えてしまいそうな病院の建物、産婦人科の待合室ではピアノの生演奏も流れ、全室個室の病室、富士山を望む患者専用ダイニングで楽しめるホテルなどで修行したシェフによる食事、常に手入れされているガーデンや中庭など、リラックスしながら出産に臨める体制が整う。また、2022年には「恵愛こどもクリニック」と産後ケア施設を開設。出産したら終わりではない、妊娠・出産から子育てまで切れ目のない支援をモットーとする恵愛病院は、地域の妊婦が安心して快適に出産ができる場所として、厚い信頼が寄せられている病院だ。(取材日2022年9月29日)
この地で半世紀以上の歴史があると伺いました。

おかげさまで父の代に開院した「つるせ産婦人科」に始まった「恵愛病院」は、2021年に50周年を迎えました。開院した頃は先代の院長1人で診療を行っていましたが、医療の高度化に伴い、現在は1人の医師や単独の施設で周産期医療を完結することは難しくなっています。ですから当院では約20人以上の医師がおります。また急性期医療であり救急医療の側面もあるのが出産ですから、母体と新生児の双方に高度な医療が施せるような高度医療施設との連携も不可欠と考えています。私は医療の安全はどんなに追求しても、しすぎることはないと思っています。早めの対応を心がけ、少しでも異常が疑われれば迅速に紹介する体制を整えています。幸いにも近隣地区には大学病院なども多く恵まれています。お産の際にはご希望があれば24時間対応で無痛分娩も可能です。
不妊治療施設から妊娠中ケア、超音波検査の外来もありますね。

近年不妊に悩む方は多く、不妊治療はどうしても通院が頻回になりますので、利便性を考え「恵愛生殖医療医院」を和光市駅前にリニューアルオープンしました。体外受精を含む高度生殖医療をご希望の方はこちらへ連携しています。また恵愛病院では、妊娠中は医師による健診はもちろん、医師に相談しづらいことは助産師や看護師が対応します。先進の超音波機器を用いた胎児スクリーニングでは胎児の先天性疾患などを発見することができますので、出生前に高度医療を行える医療機関に引き継ぐことが可能です。また4D超音波では胎児の動く姿を立体的に見ることができます。当院では母親学級などのイベントも盛んですが、祖父母学級、父親学級など、お母さん以外の方に向けた学級も行っています。子育てに関する常識も昔と大きく変わりましたので、お母さんをサポートしてくれる心強い存在の祖父母の方々やご主人さまにもお知らせしておく必要があると思うのです。
専属シェフや全室個室など、入院時のサービスも人気だとか。

お母さん方は出産し自宅に帰ると子育てに24時間365日奮闘しなくてはなりません。せめて入院中ぐらいはリラックスして過ごしていただけるようにと考えて、医療の安全性は最優先ですがホテルのような快適な空間もご提供したいと思っています。出産は極めてプライベートなことですし、ご家族だけで過ごしたい時もあるでしょうから、当院は全室個室です。多くの方が楽しみにされる食事は、海外のホテルなどで修行したシェフが腕を振るい、お祝いのお食事はご家族の分もご用意できます。マッサージやエステなども受けられますし、病院からのプレゼントは実用的なものを厳選してお渡ししています。大変な子育てを支援するためにも、楽しく充実したマタニティーライフを送っていただけるよう整えています。
妊婦のメンタルケアや産後ケアについてお聞かせください。

2022年からは新たに産後ケア施設を開設しました。育児や母乳に関することから、母親のメンタル面まで幅広くサポートしています。メンタルケアにおいては妊婦健診の段階で迅速に対処することで、産後うつや育児放棄、虐待の芽を摘むことにつながります。妊婦さんの中には10代の方もいますし、精神疾患のある方もいらっしゃいます。必要に応じて自治体と連携して保健師さんに訪問をお願いしたりしています。さらに産後ケア施設では、同じような悩みを抱えるお母さん同士が交流できる場を設けているほか、希望する方には育児や生活について助産師がマンツーマンで寄り添う「パーソナル産後ケア」も実施しています。育児は想定外の連続で、まったく理想どおりにはいかないものです。とにかく、お一人で悩みを抱え込まず、何なりと相談してほしいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

出産というのは母親が命を懸けて新しい生命を生み出すとても尊いことです。ですから私は常に敬意を持って妊婦さんに接するようにしています。妊婦さんによって理想とする出産の形は違うでしょう。病院としても尊重しながらできる限り対応したいですね。スタッフにも「患者さんにとって良いことかどうか」を意識してほしいと話しています。また、よりきめ細かな新生児および小児医療の提供をめざしたいと考え、2022年8月には当院隣の敷地に小児科を独立する形で「恵愛こどもクリニック」を開設しました。さらにそのクリニックの南側には、ハンディキャップがある子もない子も同じように楽しめるユニバーサルデザインの公園も設立いたしました。子どもたちはもちろん、ご家族や妊婦さんもほっとできる場所になればと思っています。

林 隆 理事長
1996年日本医科大学卒業後、同大学付属病院産婦人科にて研修。その後、葛飾赤十字産院、東京都立墨東病院周産期センター、埼玉医科大学総合医療センターなどで主に産科周産期医療に従事。2004年恵愛病院副院長に就任。その後2014年より同院理事長・院長に就任。地域の患者が安心して快適に出産できる病院づくりに専念。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。