早期の手術とリハビリテーションが大切
大腿骨近位部骨折の治療
医療法人社団弘人会 中田病院
(埼玉県 加須市)
最終更新日:2024/09/26
- 保険診療
転倒などによって足の付け根の部分を骨折してしまうのが、大腿骨近位部骨折。高齢者に多く、大腿骨近位部骨折をきっかけに寝たきりや車いすでの生活となってしまうことも少なくないというから注意が必要だ。そして、「大腿骨近位部骨折を起こしてしまったら、できるだけ早くに手術を行い、リハビリテーションを開始することが重要です」と話すのが、「中田(なかだ)病院」の山中誠先生。少しでも早くから体を動かせるようにすることで、寝たきりになるのを予防し、日常生活への復帰をめざすことが大切になるという。そこで、大腿骨近位部骨折の基本的なことやその治療などについて、山中先生に詳しく教えてもらった。(取材日2024年7月20日)
目次
QOLに大きな影響を与える大腿骨近位部骨折。早期の手術とリハビリテーションで日常生活への復帰をめざす
- Q大腿骨近位部骨折とは、どのようなものなのでしょうか?
- A
足の付け根の股関節部分の骨折を大腿骨近位部骨折といいます。転子部と頸部と呼ばれる場所の骨折が多く、それぞれ治療方法も違ってきます。高齢者に多く、わずかな力がかかっただけで折れてしまういわゆる脆弱性骨折の一つで、転倒がきっかけとなることが少なくありません。その根本的な原因は、骨粗しょう症で骨がもろくなってしまっていることです。寝たきりの理由のかなり多くを占めているほか、国内では大腿骨近位部骨折を起こした人の約1割は、1年以内に亡くなっているという報告もあるので注意が必要です。
- Q大腿骨近位部骨折には、どのような治療方法がありますか?
- A
大腿骨近位部骨折を起こすと基本的に強い痛みがありますが、高齢者の場合、動けずにベッドで安静にしていると誤嚥性肺炎や尿路感染症などの合併症が起きやすくなります。また、運動機能もどんどん低下していってしまうため、動けない時間を延ばさないように、できるだけ早期に手術を行う必要があります。手術は、頸部骨折の場合は人工骨頭に置き換える人工骨頭置換術、転子部骨折では、骨折した骨を金具で止める骨接合術が基本です。ただ、ご高齢の患者さんの場合、基礎疾患があるなどの理由で手術ができないケースがあります。その場合は、痛みが落ち着くまで安静にし、その後は車いすでの生活になることもあります。
- Q手術後の流れを教えてください。
- A
手術後は、翌日からリハビリテーションを開始します。安静にしていると筋力が落ち、骨粗しょう症も進行しますから、できるだけ早期からリハビリテーションを始めることが重要です。手術後すぐのリハビリテーションは、痛いのではないかなどの不安もあるかもしれませんが、痛み止めも使用しながら、痛みの少ない起き上がり方や立ち上がり方の練習、トイレ動作など、日常生活を取り戻す練習をできることから進めます。リハビリテーションの期間は、家族の受け入れ体制など患者さんの背景や意欲などで変わりますが、おおむね3~6ヵ月です。また、骨折のリハビリテーションは、けがをした日、あるいは手術をした日から150日までとなっています。
- Qこちらの病院の大腿骨近位部骨折治療の特徴は?
- A
大腿骨近位部骨折は救急搬送されてくることが多いですが、基本的にすべて対応できるよう努めています。また、高齢者の多くは生活習慣病などの基礎疾患を持っていますから、内科の医師とも連携しながら対処しています。リハビリテーションについては、365日体制で実施しています。当院は、整形外科を専門としていることもあって、整形外科疾患のリハビリテーションに精通したスタッフが、より早期の回復をめざしています。高齢者の場合は、もとからまったく運動機能に問題がないというよりは、これまでも膝などに痛みがあって、プラスで骨折をしてしまったことが多いので、時間もかけながらしっかりとリハビリテーションをすることが大切です。
- Q二次性骨折の予防にも取り組んでいるそうですね。
- A
当院では、多職種連携でのFLS(骨折リエゾンサービス)による二次性骨折の予防に取り組んでいます。FLSでは、整形外科の医師やリハビリテーションのセラピスト、看護師、ケアマネジャーなどの多職種が退院後の患者さんの情報を共有し、骨粗しょう症が進行しないように服薬の確認や指導を行っています。自宅で再度転倒をしていないか、転倒しているのであれば、その場所や経緯なども確認して、必要なら改修などのアドバイスをしています。骨がもろくなっていることで、一度骨折をすると繰り返すのが骨粗しょう症です。そのため、今お話ししたような、二次性骨折の予防がとても重要になります。