医療法人親和会 鳳永病院
(埼玉県 草加市)
浅野 務 院長
最終更新日:2021/07/30
親身なリハビリテーションで機能維持を支援
草加エリアで早くから回復期リハビリテーションに取り組んできた「鳳永病院」。活力あふれる約50人のリハビリスタッフによる手厚く親身なリハビリは、実際に患者が退院後に生活する空間を見て、患者が必要とする生活動作が行えるよう計画を立てて適切なリハビリを進めてくれる。また退院後も通所や訪問など継続的なリハビリで身体機能を維持できるよう患者や家族をバックアップ。住み慣れた地域でより良い暮らしができるよう、地域ぐるみで連携しながら取り組んでいる。そんな地域に根を下ろした医療を提供する「鳳永病院」を率いるのは、長年認知症治療に携わっている浅野務院長。穏やかで優しい人柄の浅野院長に話を聞いた。(取材日2021年6月4日)
開設から半世紀以上、形を変えつつ地域医療に尽くしてきました。
当病院は1968年に「草加第一病院」として誕生し、1984年に「鳳永病院」と名称を変更、2012年より回復期リハビリテーション病棟へ全面移行し、2017年に増床し50床の病院となりました。その間、英診療所や訪問看護ステーション、通所リハビリステーション施設、居宅支援事務所を開設。地域の急性期医療を担う大規模病院はもちろん、開業医の先生方や、各種医療機関などと緊密な連携を保ちながら、地域の方々が安心して住み慣れた地域でより良い暮らしを営めるよう尽力してきました。回復期リハビリテーション病棟とは、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などで、治療後に引き続き支援が必要な患者さんに対し、さまざまな専門職種がチームを組んでリハビリテーションを行い、心身ともに回復した状態で自宅や社会へ戻ることを目的とした病棟です。疾患により決められた入院期間内に起きる、食べるといった日常生活動作の改善を図ります。
実践されている「親しみのある心のこもった医療」とは?
脳卒中などの脳血管障害で後遺障害が残ってしまった場合、その後の生活への影響をまったくなくすことは難しいにしても、ある程度少なくする、最小限にとどめるということをしていかなければならないでしょう。そのためには日々の診療でも、素早く診察して薬を出してお帰りいただく、という流れ作業的な診療ではよくありません。きちんと脳などの画像を示して、ここがこうだからこのような後遺障害が起こっている、あるいは前回と比べてここが良くなっているからリハビリすれば動作がスムーズになることも期待できる、どういう行為がこういう状況につながるのかなど、患者さん本人に自分の現状を理解してもらうよう努めています。理解が進めば前向きな思考になり、日々の生活にもリハビリにも積極的に取り組めるでしょう。ひいてはそれが、患者さんご自身で自分の健康を守るという意識につながると思うのです。
退院後も通所や訪問のリハビリを継続しています。
まず当病院では、入院された患者さんに対しご自宅の調査などを行い、どんなリハビリが必要か検討し実践していきます。同時にご自宅などに戻られた際に必要となる手すりなど介護用品等のアドバイスも行います。当病院への入院期間は疾患により決められていますが、入院中に行うリハビリ以外のリハビリは不要という方は少なく、多くの場合は退院後も機能維持や向上のために何らかのリハビリが必要になります。来院できる方は通所でリハビリを、来院が難しい方へは訪問で、また訪問から通所へ切り替えたりと、状況に応じて臨機応変に対応できるのも当病院の良いところかと思います。とにかくリハビリは地道な努力を要しますので、患者さんのモチベーションの維持・向上にも気をつけています。それぞれの患者さんの趣味やこだわりポイントをよく理解して、個々に応じた声かけなどを工夫しています。
浅野院長は認知症治療で長年のご経験があるそうですね。
大学卒業後は脳神経外科で脳腫瘍について専門的に診療を行っていましたが、脳卒中などの脳血管障害の診療も行うようになりました。現在、介護を受けておられる患者さんの原因となる疾患は認知症、脳血管障害の順に多いのですが、そもそも脳外科の医師は術前の状態把握や疾患の確認のために脳や血管などの画像診断を読影依頼するばかりでなく自ら行います。認知症でも、治る認知症の除外や脳の萎縮の具合を見るために画像診断を行いますので、そういったつながりで認知症の診断・治療も行うようになりました。そして50代前後から認知症の勉強を行い、認知症サポート医の資格を取り、また地域での認知症支援のボランティア活動も行うようになりまし た。診察でも、私はご本人への声かけやご説明をまず行います。自尊心を大切にして、コミュニケーションを図り、治療にはご本人にもしっかり参加してもらうことが大切です。
読者へのメッセージをお願いします。
医療機関は基本的に市民のためにあるもの。ですから一人でも多くの市民の役に立つような手助けができる存在でありたいと思っています。そのために診療科の枠を越えた治療を実践し、ホームドクター的存在として信頼され、安心して診療を受けていただける医療機関でありたいと考えています。また病気は予防と早期発見が重要。各種がんや生活習慣病に関する検査も重視しています。急性期以降の医療を全面的に担い、型にはまった治療ではなく患者さん本人を中心に考え、地域の皆さまが自分の健康を自ら考えるということ、前向きに治そうとする意志を大切にした医療を提供したいと思っています。そのために訪問リハビリなど多彩な施策を用意していますので、気軽にご相談くださいね。
浅野 務 院長
山口大学卒業。東京医科歯科大学脳神経外科勤務、脳健クリニック院長、埼友草加病院副院長などを経て2019年より鳳永病院院長。草加八潮医師会に所属し在宅医療部門を担当。J-POP好きで、かつてはテニスや柔道などにも取り組んでいた。現在は講演会やボランティア活動などを通じて地域との交流を図り、勉強会発表などにも勤しむ日々。