医療法人社団 愛友会 上尾中央総合病院
(埼玉県 上尾市)
徳永 英吉 院長
最終更新日:2024/06/07
進化を続ける医科グループの中枢病院
上尾駅より徒歩約3分にある「上尾中央総合病院」。ロボット支援下手術や心臓カテーテル治療をはじめとする先進的な治療に対応する急性期医療を中心に、豊富な診療科をそろえ、救急医療からリハビリテーションまで地域住民の多彩な医療ニーズに応えている病院だ。2010年より同院を率いる徳永英吉院長は、医療に携わる者として何をなすべきかをスタッフとともに追究し続けてきた。医療の質の向上や患者満足のために導入したシステムも数多い。徳永院長が「元気な病院」だと評する同院の地域における役割や力を入れている取り組み、大切にしている理念について話を聞いた。(取材日2024年5月14日)
救急医療、急性期医療に力を入れていらっしゃいますね。
埼玉県、特に上尾・伊奈エリアは、日本でも医療のリソースが不足している地域といわれています。人口あたりの医師数、病院数、ベッド数が少ない中、当院は地域の中核病院として地域医療を支えています。年間数多くの救急車を受け入れており、心臓血管外科は24時間、緊急手術が可能な体制を整備。ハイブリット手術室を含む15の手術室はフル稼働です。また、カテーテル手術が可能な手術室を増設する他、ロボット支援下手術室を5室に増設、手術支援ロボットを3台導入するなど、引き続き地域の医療ニーズに合わせて先進的な医療を導入していく予定です。また、2021年には地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、手術・抗がん剤治療・放射線治療、セカンドオピニオンの実施、専門チームによる緩和ケア病棟での緩和ケアの提供の他、治験にも力を入れています。
患者さんはどのような方が多いのでしょうか?
当院は地域密着型の病院ですので、患者さんのほとんどが地元の方々です。地域医師会と連携しながら、急性期の患者さんを私どもで担当し、一定の治療の後は再度地元の先生方にお戻しするという病診連携体制の構築にも力を注いでいます。この他にも予約制を導入して、従来から課題であった患者数の適正化への取り組みも進め、現在は予約の方は30分の予約枠から5分差程度の範囲でお呼びすることができています。また、診療科ごとに待ち時間のデータ管理や目標設定をしており、スタッフが自律的にお待たせしない工夫をしていることも結果につながっています。この他にも患者さんに負担の少ない診療を行うため、例えば、手術前の検査や説明は入院前に外来で行い、入院日数をできる限り短くする工夫も行っています。また同院では、患者さんにアンケート調査を実施し、患者さんの声を診療の満足度向上に生かしています。
大勢の医師やスタッフが勤務していますね。
現在スタッフは、常勤医師が276人、常勤職員は約2300人にも上ります。離職率が低く、長く勤めてくれているスタッフが多いのでありがたいですね。しかし現状に甘んじることなく、今後も引き続き内科の医師を中心により層の厚い体制をつくっていく予定です。当院は医師も職員もモチベーションが高く「元気な病院」です。私は長年ガバナンスの構築に注力してきましたが、病院組織で当院ほど統治システムを徹底しているところはないと自負しています。ガバナンスで大切なのは、院内規定やマニュアルで意思決定プロセスの明確化とプロセスの可視化を行うこと。さらにフローを作成する委員会や、管理・進捗をチェックするチームも設けています。そして、業務を縦割りにせず、病院全体をワンチームとして考えているので、とにかく診療科や職種間の垣根が低いんですね。この垣根の低さが、風通しの良い環境をつくり、質の高い医療につながると考えています。
病院の理念を教えてください。
当院の理念は「愛し愛される病院」です。「愛し」が先にくるからには、まず職員自身が自分たちの病院を愛せなくてはいけません。私は、そうなるための組織づくりを常に意識してきました。こうした風土醸成は一朝一夕では無理で時間がかかります。例えば、診療科間の隙間をつくらないために、時間をかけて「総合診療部門」も設けました。ゼネラリスト育成のために後進の育成にも励んでいます。当院には若い医師も数多く在籍していますが、皆パワフルで頼もしいですよ。私は院長として、それぞれの職員が希望や目標に向かって働きやすく自己研鑽を積めるような環境を整え、「愛し愛される病院」となれるよう、これからも力を尽くしていきたいです。
今後の展望についてお聞かせください。
私たちは一貫して医療に携わる者として「あるべき姿」を追求してきました。早い時期から病棟に専任の薬剤師やリハビリテーションスタッフを配置しましたし、手術後の運動機能維持や向上のためのリハビリテーションだけでなく、言語や食事に関するリハビリテーションも積極的に取り入れてきました。医師の研究論文活動も活発で、各診療科では、論文発表数や症例発表数の年間目標を立て、互いに切磋琢磨しています。この他、診療部門では民間病院では珍しい遺伝に関する部門を設置しカウンセリングにも取り組んでいます。今後はハイブリッド手術室での外科手術と画像診断・介入的治療に加えて、救急科にハイブリッドERシステムを導入して、画像診断や薬物療法と同時に外科的処置を行い、医療資源を効率的かつ効果的に活用できるようにしたいとも考えています。患者さんに対し何をどうすべきか、それを正しく選択し、進み続けていきたいと思っています。
徳永 英吉 院長
1985年日本大学医学部卒業。同大学医学部附属板橋病院耳鼻咽喉科に勤務しながら、関連病院である上尾中央総合病院で非常勤医師として勤め、1995年に正式に入職。1999年より副院長、2010年に第3代目院長に就任。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。上尾市医師会理事。「妻への敬意と感謝とおいしいお酒」が日々を生き生きと過ごすコツと語る。