社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院
(千葉県 柏市)
松澤 和人 病院長
最終更新日:2021/08/23
包括的かつ専門的な医療で地域を支える
1983年に医師2人からスタートして以来、地域の救急、急性期医療を担ってきた「名戸ヶ谷病院」。2019年には新柏駅から徒歩5分の場所に新築移転し、300床の病院として受け入れ体制を拡充した。2018年から同院を率いる松澤和人病院長は、「移転後は、医療の質も効率も各段に向上した」と話す。「救急患者はすべて受け入れる」という開院以来の方針はそのままに、各診療科の診療の幅は厚みを増し、より多くの疾患に高度な専門性の医療で応えられるようになった。「オールマイティーな病院として広く患者さんを受け入れる一方、各診療科の得意分野では専門性をさらに高めて、地域の患者さんの信頼につながる医療を提供していきたい」と話す松澤病院長に、各診療科の特色や強み、入退院のサポート体制、今後の展望などについて話を聞いた。(取材日2021年6月8日)
1983年の設立から移転までの流れをお聞かせください。
当病院の設立は1983年。山崎誠前理事長によって、外科を中心とした救急病院として設立されました。当初はドクターは2名のみ。山崎前理事長も毎晩当直を行っていたそうです。当時から現在に至るまで、「救急患者はすべて受け入れる」ことを基本方針として救急医療に注力してきました。その後、247床まで増床を重ね、2019年には新病院に新築移転して300床の病院となっています。新病院は新柏駅から徒歩5分というアクセスの良さなので、通院される患者さんの利便性はかなり向上したのではないでしょうか。新鋭の医療設備がそろったことで、機能性、効率性ともに高まり、より多くの患者さんの多彩なニーズに適切に対応できるようになりました。設立当初からのこだわりの一つである白を基調に清潔感のある院内をめざし、入り口のホールは吹き抜けにするなど、開放的でくつろげる雰囲気も新病院の大きな特徴の一つです。
強みである救急医療について、詳しくお聞かせいただけますか。
救急搬送では、特に脳卒中について、「脳卒中スクランブルシステム」を設定して受け入れを強化しています。当院独自のスクランブルシステムは、救急隊から脳卒中患者搬送の入電があった際、事務スタッフが救急部、救急担当医、脳外科の医師、放射線科、検査科、ICU、MEに一斉に連絡をし、到着後の迅速な検査と診断・治療につなげるもの。脳卒中は、「Time is Brain」が世界中の合言葉となるほど1秒を争うシビアな病気ですから、できる限り無駄を省いてスピーディーな治療につなげることをめざしています。地域の病院や救急隊からの要請に対して、脳卒中急性期が疑われる患者を24時間365日受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師がrt-PA静注療法を含む診療を速やかに実施することができます。今後はより一層の体制強化を図りさらにレベルの高い対応をめざしていく予定です。
各診療科の診療も強化されたそうですね。
内科は常勤のドクターが増えましたし、外科や脳神経外科、形成外科、整形外科など外科領域も強みを増しています。外科では、腹腔鏡手術や胸腔鏡下手術を早くから導入して低侵襲な手術に注力。脳神経外科では、脳血管障害の手術を得意としており、さらに安全で正確な手術が行えるよう日々研鑽を積んでいます。形成外科のリンパ浮腫の外来では、東京大学の前形成外科教授である光嶋勲先生のもとで学んだ菊池先生がマイクロサージャリー術(微小外科術)を行っているのが特徴的ですね。また、整形外科では、これまでどおりさまざまな整形外科疾患に対応するほか、関節治療センターにおいては、変形性膝関節症と診断されている方、痛みのため生活や運動が制限されている方などに向けた関節治療の選択肢を拡充しました。さらに耳鼻科でも、頭頸部外科が守備範囲となり、首や喉の腫瘍に低侵襲な内視鏡治療を実施しています。
水頭症の早期発見にも注力されていると聞きました。
「物忘れが増えた」「歩幅が小さくなり、よく転ぶようになった」「トイレが近い」といった症状は、年齢を重ねると誰にでも起こり得るもの。年だから仕方ない、と諦めてしまいがちですが、実は「特発性正常圧水頭症」という病気に特徴的な症状でもあり、早期に発見して治療すれば症状の改善が期待できます。そこで、当院では、転倒して頭を打った方の頭部CT画像を確認し、水頭症の早期発見と手術につなげる取り組みを行ってきました。CT画像のスクリーニングによって治療成果が期待できる初期の水頭症患者さんをより多く見つけることができると考えています。治療できるにも関わらず、発見が遅れて症状が進行してしまう患者さんを少しでも減らしていけるといいですね。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
当院では、急性期からリハビリテーション、在宅医療、老健施設まで、関連施設とも協力しながら、一人の患者さんの治療を私たちの目の届く範囲で完結できる体制の構築も進めてきました。在宅医療では、当院の主治医が適宜ご自宅を訪問して診療を行っています。いったん別の病院やリハビリ施設に行かれても、最終的にまた戻ってきていただけるような存在になれたらと思っています。今後は、救急をさらに拡充して包括的に患者さんを診つつ、高度専門医療をより充実させて行きたいですね。患者さんや地域のドクターたちから、難症例の治療において積極的に指名していただける病院をめざして、各診療科のレベルアップを図ってまいります。
松澤 和人 病院長
1987年東海大学医学部卒業後、東海大学医学部脳神経外科入局。その後、カナダのトロント大学に留学。帰国後、東海大学医学部付属病院、綾瀬厚生病院勤務を経て、1998年から名戸ヶ谷病院脳神経外科勤務。副院長を経て2018年4月から現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。