
プロフィール1987年東海大学医学部卒業後、東海大学医学部脳神経外科入局。その後、カナダのトロント大学に留学。帰国後、東海大学医学部付属病院、綾瀬厚生病院勤務を経て、1998年から名戸ヶ谷病院脳神経外科勤務。副院長を経て2018年4月から現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。
独自のシステムの発動で迅速な対応を

当病院は1983年に山崎誠前理事長によって外科を中心とした救急病院として設立されました。開設当初から「救急患者はすべて受け入れる」という基本方針を貫いています。開院当初はドクターが2人のみで山崎前理事長は毎晩当直を行っていたと聞いています。その後、新館、西棟、別館と随時増設し、現在は247床となっています。救急搬送では、特に脳卒中の受け入れについて、当院独自の「脳卒中スクランブル」というシステムを設定しています。救急隊から脳卒中患者搬送の入電が入ると、事務スタッフは、救急部、救急担当医、脳外科の医師、放射線科、検査科、ICU、MEに一斉に連絡をします。各所では必要な検査の準備をし、到着後は極めて迅速に採血、画像評価を行って、的確な治療を行っています。脳卒中の治療では「Time is Brain」が世界中の合言葉となっており、1秒でも早い治療が重要なのです。

もともと外科からスタートした病院ですので、外科や脳神経外科、形成外科、整形外科などに力を入れています。外科では腹腔鏡手術や胸腔鏡下手術を早くから導入しています。また脳神経外科では、破裂脳動脈瘤、未破裂脳動脈瘤、脳出血、脳梗塞などの脳血管障害の手術を得意としており、さらに安全で正確な手術が行えるよう研鑽を積んでいます。形成外科のリンパ浮腫の外来では、東京大学の前形成外科教授である光嶋勲先生のもとで学んだ菊池医師がマイクロサージャリー術を行っていることが特徴的です。また、当院には回復期リハビリテーション病棟もあり、急性期の早い段階からリハビリを行い、早期復帰をめざしています。在宅診療では当院の主治医が適宜、訪問診療を行っています。在宅患者さんも慣れ親しんだ医師に診てもらうほうが安心だと思います。関連施設として老健施設もありますので、急性期から回復期、在宅へと包括的な医療を提供しています。

救急は絶対断らない、という基本方針は、地域住民の方々に浸透しているようで、安心感を持っていただいているようです。柏市民へのあるインタビューで、「柏市は安心して住める街。その理由は救急患者の受け入れ体制が整っている」といった声を聞いたことがあります。当院だけの努力ではありませんが、今後も地域住民の方に安心していただけるように、医療の充実を図りたいですね。当院では急性期からリハビリ、在宅医療、老健施設と完結した医療を提供していますが、今後は「柏モデル」の推進のため、より医療機関との連携を深めていきたいと考えています。また、地域の方々に向けて、さまざまな講演会の開催を通じて、地域の皆さんの生の声をお聞きして、病院運営に反映させていきたいです。

はい。山崎前理事長は、アメリカの「メイヨークリニック」をめざすという志のもと、研究や教育にも熱心に取り組んでこられました。私立病院で研究所を持っているのはとても珍しいと思いますが、名戸ヶ谷研究所では、筋肉と他の臓器との関連性など分子生物学的な観点から研究を行っています。加えて、他の医療機関の研究室との共同研究も進めています。また、世界で貢献できる医療人の育成をめざし、若手医師や研究者の留学支援も関連のNPO法人が行っています。留学を終えた後には、特に当院で勤務する義務はなく、それぞれ留学成果を発揮できる病院や研究室に勤務でき、多くの若手医師や研究者が活躍しています。このように当院では臨床、研究、教育という大学病院のような3つの機能を持っている点も大きな特徴です。

今後は、脳神経外科においては患者さんから選ばれ、また優秀なドクターが集まってくる高い技術を誇る科をめざしていきたいと考えています。現在は救急搬送によって当院を受診される方が多いですが、難症例であっても患者さんや地域のドクターたちから、積極的に指名される病院でありたいと思っています。そして2019年には、新柏駅の近くに新鋭の医療設備や機能性を備えた300床の病院へ新築移転します。これまで以上に救急医療体制を充実させ、各診療科の拡充も図っていきます。また、入院環境でも、患者さんにしっかり療養してもらうため、新病院では温泉を引いていますので、こちらも楽しみにしていただきたいですね。今後とも柏市はじめ東葛地域の方々の安心の拠り所、そして癒しの場として機能できるよう努力してまいります。