独立行政法人労働者健康安全機構 千葉労災病院
(千葉県 市原市)
安川 朋久 院長
最終更新日:2026/10/09


地域救急を支える基幹病院への進化をめざす
千葉県市原市で60年以上、地域医療の中核病院として機能している「千葉労災病院」。紹介や逆紹介も多い地域医療支援病院だ。がん緩和ケア病棟20床を有する地域がん診療連携拠点病院でもあり、地域災害拠点病院でもある。近年は救急機能の強化に力を入れ、2025年4月から2026年3月までの救急搬送数は5615件。ICU6床とHCU12床を備え、救急科の医師は約20人の体制だ。これらの組織づくりは、地域が抱える救急医療の問題に向き合うため。「めざすのは、地域救急を支える基幹病院です」と語る安川朋久院長に、地域救急ネットワークの構想や人材育成について話を聞いた。(取材日2026年7月24日)
まずは病院の成り立ちや特色から伺いたいと思います。

1965年2月に京葉工業地帯の勤労者の医療施設として開業し、現在は市原市を中心に周辺エリアの住民と勤労者の皆さまに利用されています。多彩な診療科と360床を備える中規模病院ですが、その分小回りが利くのが特色です。診療科の垣根なく情報共有を図りながら、地域医療支援病院として、高度で安全な医療の提供をめざしています。2024年4月から2025年3月までの紹介患者数は1万2005人、逆紹介患者数は1万3153人です。また、地域がん診療連携拠点病院として、がん緩和ケア病棟20床を有し、化学療法や放射線治療などにも対応。地域災害拠点病院でもあり、有事の際にその機能を果たせるよう体制を整えています。広く地域医療に携わっていますが、近年注力しているのは救急機能の強化です。2025年4月から2026年3月までの救急搬送数は5615件で、ICU6床とHCU12床を備え、救急科医は約20人となりました。
なぜ救急医療に力を入れているのですか?

現状として、全国的に救急医療の体制が充実しているとは言い難く、それはこの市原市でも例外ではありません。救命救急を受け入れられる病院が限られていることや、対応できる医師や設備の不足など、救急搬送がスムーズに進まない理由はいくつか考えられます。地域が抱えるこの問題に向き合うために、当院は2026年内に救命救急センターの指定をめざして動いています。2022年当時は5人ほどだった救急科医も、この4年間で約20人まで増えました。これまで以上に適切な救急医療の実践のために、ICUやHCU、病床数の見直しも随時行い、救急搬送も積極的に受け入れています。めざすのは、市原地域全体の救急医療を支える基幹病院です。当院が救命救急センターの指定を受けた際には、地域全体の救急機能の底上げにつながればと考えています。もちろん、他院との連携による地域救急ネットワークが不可欠なのは言うまでもありません。
先生が考える、地域救急ネットワークの構想をお聞かせください。

まずは救命救急センターの指定をめざし、重症度の高い患者さんも含めできるだけ多く受け入れることで、「緊急時に受け入れ先が見つからない」という問題の解消につなげたいと考えています。ここで重要なのが、診断後に適切な医療機関に送ることです。当院での手術・入院となることもあれば、応急処置をした翌朝に、当院所有の救急車で高齢者救急を担う専門病院などへ搬送するケースもあります。また、当院で急性期治療を終えた患者さんも、その後は回復期病院や療養型病院での治療・療養が必要です。このように、地域の救急体制においてはそれぞれの病院の役割があり、適切なバトンの受け渡しが多くの方の命を救うことにつながるのです。2026年6月に千葉県より県内の医療圏再編案が発表されました。それを受けて当院では、これまで同様に複数のビジネスチャットツールを活用して、市原市および隣接する町村の医療機関との連携をさらに強化しています。
病院の運営面で大切にされていることは何でしょうか?

高度で安全な医療の提供をめざし、持続させるためには、職員の活力や意欲を高く保ち、経営基盤をしっかりと築くことが大切だと考えています。先進の医療機器を取り入れ、病児保育室を院内に設置しているのもその一環です。定められた水準に基づいた労働時間の遵守は当然のこと、当院は外科医療確保特別加算の施設基準を満たしており、該当する医師には給与への反映を行っています。また、職員のモチベーション向上のための委員会が中心となり、多職種の意見をもとにした「ミッション(使命)、ビジョン(未来像)、バリュー(行動指針)」を設定。これは病院の理念とは異なり、現場の生の声から生まれたものです。現在、常勤医師は130人を超えるまでになりましたし、これからも多くの仲間が加わることでしょう。人数が増えてもお互いコミュニケーションの取りやすい環境、働きがいのある職場づくりに、今後も取り組んでいきたいと思います。
最後に、今後の展望をお願いします。

新棟の開設や、ロボット支援下手術の導入、ICT活用による受診環境の改善などを経て、私たちは今、救命救急センターの指定を視野に新たな領域に進もうとしています。それを支えるのは医師や職員一人ひとりの力です。当院は臨床研修指定病院として若い医師の育成に力を入れており、毎年数多くの応募を頂いています。救急医療も含めた当院の実績や、教育体制の整備を見て、多くの方に研修先として希望してもらえるのはうれしいことです。巣立った後に再び当院へ戻ってきてくれる医師が増えれば、診療体制に厚みを持たせることにもつながります。救命救急を志す医師や看護師にとって働きやすい環境を整え、近隣の医療機関と強固な連携体制を築き、地域救急を支える基幹病院へと進化すること。それが当院の目下の目標であり、担うべき役割だと考えています。

安川 朋久 院長
1987年千葉大学卒業。1999年より千葉労災病院の呼吸器外科で肺がん手術などに携わる。2017年からは同院副院長として、診療体制の充実や病院の運営にも関わり、地域の病院や診療所との連携強化にも努めてきた。2026年4月より現職。地域救急を支える基幹病院への進化をめざし、人材育成にも力を入れる。





