日本大学松戸歯学部付属病院
(千葉県 松戸市)
内田 貴之 病院長
最終更新日:2025/10/30


高度な歯科医療と地域密着医療の両立を図る
千葉県北西部、東京都や埼玉県に隣接する松戸市で「医学的歯学」をベースに診療を行う「日本大学松戸歯学部付属病院」。「口腔の健康は全身の健康を支える」の理念のもと歯科と医科が互いに連携し、歯科では多様な分野で高度な歯科医療を行い、医科では全身の健康管理や歯科と密接に関わる5つの診療科を備える。ただ、内田貴之(うちだ・たかし)病院長は「先進的な医療はもちろん地域に根差した医療も当院の役割と考えています」と語る。「歯科医師も医師も患者さんへの説明を丁寧に行う親しみやすい病院です。皆さんのホームドクターとして気軽にご利用ください」。さらに地域で高まるニーズに安心できる高度医療で応えたいと、インプラント治療では各歯科医師がより専門的な技術の習得を図ると同時に、安全性の向上に役立つ手術支援システムも導入予定だ。一方で内田病院長は医療安全や職員の働きやすさにも注力。院内を回って各部署の困り事を拾い上げ対処するなど、コミュニケーションにも積極的に取り組む。「大学病院の6つの使命を重視しています」と語る内田病院長に、同院の特徴や地域医療への取り組みなどを詳しく聞いた。(取材日2025年8月8日)
この病院の特徴や近年の動きなどを教えてください。

当院は「医学的歯学」、歯科は医学の一分科であり「口腔の健康は全身の健康を支える」という松戸歯学部の教育理念に基づく診療が大きな特徴です。そのため歯科の多様な専門分野に対応すると同時に、内科、心臓血管外科、脳神経外科、頭頸部外科、耳鼻咽喉科の5診療科を設置。歯科と医科の連携を重視した質の高い医療をめざしています。病院名を歯学部付属歯科病院から歯学部付属病院としたのも、歯科と医科の両方への対応を広く伝えるためです。加えて2025年にはMRI、CTを新たな機種に更新し、検査の精度向上を図りました。MRIは炎症や腫瘍の状態を詳しく知るだけでなく、顎関節症の診断など医科・歯科の両方において幅広く活用することができ、より適切な治療に貢献します。さらに地域医療にも力を尽くし、医科では一般の患者さんも受け入れています。患者さんは近隣地域だけでなく、県外の医療機関からのご紹介も多く来院されています。
歯科と医科の連携にはどのようなメリットがありますか?

まず口腔内だけでなく体全体の健康まで一貫して診られる点です。歯科で血圧が高い患者さんがいれば内科の受診を勧めますし、虫歯などが原因で副鼻腔炎になったら耳鼻咽喉科で診療でき、いずれも必要なら当日に対応可能です。さらに歯科と医科の協力が必要な症状をトータルに診られるのもメリットでしょう。例えば「いびき」に対する外来は、睡眠時無呼吸症候群が原因の場合もあるため内科との連携は不可欠。睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病、心筋梗塞などを引き起こすため、医科ですぐに全身状態を確認できることは非常に重要です。私が取り組んできた口腔顔面痛では、歯が原因の「歯原性歯痛」と歯以外が原因の「非歯原性歯痛」があり、後者は歯科以外の治療が有用な場合があります。そこで当院では非歯原性歯痛にも対応する「口・顔・頭の痛みの外来」を設け、歯科医師と脳神経外科や頭頸部外科、耳鼻咽喉科などの医師が協力して適切に診療します。
歯科の診療面での強みなどをお聞かせください。

医療安全に十分に注意し、「地域医療の最後の砦」となるよう多様な分野で高度な治療を展開しています。例えば、親知らずの抜歯や口腔領域の腫瘍を診る歯科口腔外科、歯の根の治療や虫歯治療を行う保存部門、歯周病治療を行う歯周部門、入れ歯などで咬合機能の回復を図る補綴部門などがあり、インプラント治療、小児歯科、矯正歯科などにも力を入れています。障害のある方に特化した特殊歯科部門、歯科恐怖症の方などを麻酔による鎮静下で治療する歯科麻酔科なども特徴的。矯正ではマウスピース型装置を用いた矯正から外科的矯正まで広く対応します。ニーズが高いインプラント治療では、多様な症例に対応するため専門技術の習得を図る一方、担当する歯科医師によって治療レベルに差が出ないよう、コンピューターシミュレーションをもとに手術を行う支援システムも導入します。また歯科口腔外科などの手術を超音波で安全に行うための超音波手術器も導入予定です。
病院長としてどんな想いで病院を運営されていますか?

私は「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」を前提に、当院の職員全員が幸せに働ける環境づくりが、患者さんへのより良い治療につながると考えています。そのため現場の課題を早く拾い上げようと朝7時には病院に来て各部署の様子を確認し、すれ違う皆に声をかけています。最近は職員から「こんな困り事が」と相談されることも増え、改善への手がかりになっています。また以下の6つを大学病院の使命とし、院内でも共有を図るよう努力しています。まず、大学の付属病院ですのでより良い「医療者の育成」そして「地域医療の最後の砦」であることに加え、「先進的な医療の提供」「医学研究の発信」のほか、今の時代は「医療安全」の観点も不可欠。超音波手術器や手術支援システムを用いたインプラント治療なども安全性の向上に役立つ取り組みの一つです。そしてこれらの基盤となる「健全な経営」も重視し、運営の効率化や省力化も進めてきました。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。

大学病院は受診のハードルが高そうに思われますが、当院なら歯科も医科も地域のホームドクターのような感覚でご利用いただけます。地域に必要な歯科・医科の医療は自由診療、保険診療を問わず対応を拡充し、予防から治療後のアフターフォローまで幅広く提供できる体制です。また担当する歯科医師・医師が患者さんに丁寧に説明する気風も特徴で、とても親しみやすい病院だと思います。さらに当院に通われていた患者さんが在宅療養になられた場合は訪問診療も行い、「摂食・嚥下リハビリテーションの外来」による摂食・嚥下指導と連携して、患者さんが住み慣れた場所で幸せに暮らせるようなサポートをめざしています。障害がある方も通院が難しければ訪問診療が可能です。こうした病院と施設・ご自宅での歯科医療をスムーズにつなげるため地域医療連携統括センターも設置し、患者さんのかかりつけ医とも相談しながら地域医療にさらに貢献したいですね。

内田 貴之 病院長
1988年日本大学松戸歯学部卒業、同大学口腔診断学(現・歯科総合診療学)講座入局。付属病院勤務、副院長を経て2024年から現職。父の急逝で残された家業の工場と従業員を守るため事業に携わった経験もあり、幅広い視野が現在の経営に生きているという。就任前には、診療の傍ら他大学で夜間に病院経営を学んだ。初診患者への対応と診療、顎関節症、口腔顔面痛に伴う歯原性歯痛、非歯原性歯痛の鑑別診断などを得意とする。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療(1本)/35万円〜、一般矯正/85万円〜、歯の裏側を使った矯正・マウスピース型装置を用いた矯正/120万円〜





