日本大学松戸歯学部付属病院
(千葉県 松戸市)
内田 貴之 病院長
最終更新日:2024/10/08
「医学的歯学」を基盤に包括的な診療を実施
松戸市北西部にある「日本大学松戸歯学部付属病院」。「医学的歯学」をベースとした診療が特徴で、歯科における多様な分野で診療を行うとともに医科でも5つの診療科を開設している。訪問診療にも力を入れる地域密着型病院である点が、都市部にある日本大学歯学部付属歯科病院との大きな違いだ。歯科疾患は慢性的な健康問題であり、全身の健康と密接に関係する。医科・歯科のそれぞれで高度な医療を提供するだけでなく、双方が連携して専門的な診療を行う同院は、地域の健康寿命の延伸をサポートする存在だろう。副院長を経て2024年4月に就任した内田貴之病院長は、次世代を担う若手の教育や従業員のウェルビーイングにも注力し、自ら積極的に院内を回ってコミュニケーションの活性化をけん引する活力あふれる歯科医師だ。経営にかける思いや、めざす病院像などを聞いた。(取材日2024年9月5日)
病院の成り立ちと特徴から教えてください。
本院は、松戸歯学部の教育理念である「医学的歯学」を礎とし、安全性に配慮しかつ品質の高い医療を提供することを目的とした地域密着型の病院です。歯科の多様な専門分野に対応するとともに、内科、心臓血管外科、脳神経外科、頭頸部外科、耳鼻咽喉科の5診療科を設置し、「口腔の健康から全身の健康を支える」ことを目的とした医科・歯科連携による専門診療を行っている点が特徴ですね。以前は「日本大学松戸歯学部付属歯科病院」という名称だったのですが、医科歯科の両方に対応していることをわかりやすく伝えるため、2006年の新棟開設を機に現在の名称となりました。松戸市を含む千葉県北西部の東葛飾地域はもちろん、茨城県や埼玉県の医療機関からご紹介いただくことも多く、多方面から患者さんが来院されています。
医科・歯科の連携が有用なのはどのようなケースですか。
当院は「一口腔一単位」の理念を掲げて診療を行っています。これは、口の中を全身の一部分と診て、悪いところはすべて治療していこうという考え方です。ですから、あらゆるシーンで両科の連携がありますよ。中でも「いびき」に対する外来では、原因が睡眠時無呼吸症候群にある場合も少なくなく、内科との連携が不可欠です。高血圧や糖尿病、心筋梗塞などの原因にもなるため、医科が併設されていてすぐに全身状態を確かめられることは非常に重要なんですよ。私が取り組んできた口腔顔面痛も同様に、脳神経外科との連携が頻繁に行われます。口腔顔面痛の原因には、歯が原因の「歯原性歯痛」と、歯以外が原因の「非歯原性歯痛」があり、後者の場合は歯科以外の治療や処方薬が有用な場合があるからです。当院には、非歯原性疼痛の診療と鑑別された方のための「口・顔・頭の痛みの外来」があり、歯科医師と医師で適切に対応しています。
歯科の特徴的な領域についても教えていただきたいです。
歯科についても、「一口腔一単位」を実現するためにあらゆる領域を網羅しています。例えば、痛みがあって治療した歯で、痛みこそなくなったとしても不具合が潜んでいる歯がたくさんあったら、口腔機能としては不完全なわけです。その場合、患者さんの生活の質も上がりませんよね。ですから、あらゆる領域を高いレベルで治療できるよう、専門別の診療科や部門、外来をそろえています。親知らずの抜歯や口腔領域の腫瘍を診る歯科口腔外科、歯の根の治療や虫歯治療を行う保存部門、軽度から重度まで歯周病の治療をけん引する歯周部門、入れ歯などで咬合機能の回復を図る補綴部門を中心に、口腔インプラント部門、小児歯科、矯正歯科などが高度な治療を展開しています。障害のある方に特化した特殊歯科部門や、歯科恐怖症の方などの治療を麻酔による鎮静下で行う歯科麻酔科なども特徴的ですね。
病院長就任後、最も注力されていることを教えてください。
患者さんに適切な治療をタイムリーに提供するには、マンパワーが必要です。だからといって、医療従事者の自己犠牲的精神の上に成り立ってはならないと思うのです。若手の医師が「この病院に残って、地元の人たちに役立つ診療と研究をしたい」と思うような病院でなければ、真に患者さんにとって良い医療は実現できないでしょう。病院長の使命は、当院で働くすべての人が幸せに働ける環境をつくることに尽きます。その結果、病院として患者さんにより良い治療が行えると考えています。それぞれが抱えている問題や課題を知るために、就任後は朝7時には病院に来て何度か院内を回り、すれ違う皆に声をかけて回っているんですよ。オペ室にも見学にいきます。緊張して嫌だなと思う人もいるかもしれませんが、私が特別な存在ではなく皆と同じスタッフの一人であることを示すことによって、なんでも言い合える雰囲気を醸成できたら良いなと考えています。
病院の今後が楽しみです。最後に展望をお聞かせいただけますか。
超高齢社会に突入し、何らかの障害によって病院に通いたくても通えない人は今後ますます増えていくでしょう。加えて、障害のある方の治療は置き去りにされがちで、専門的な医療を提供できる医療機関は限られます。今後、地域になくてはならない病院として頼りにしていただくには、こうした潜在的なニーズに応えていくことが重要です。幸い当院には、障害がある方の治療や、高齢者施設で長く訪問診療を行ってきた実績がありますから、過去に当院への通院履歴がある患者さんのうち、通院が難しくなった方を対象とした訪問診療に力を入れ始めました。「摂食・嚥下リハビリテーションの外来」による摂食・嚥下指導などとも連携しながら、患者さんが住み慣れた場所で幸せに暮らし続けるための一助となって地域に貢献していきたいですね。
内田 貴之 病院長
1988年日本大学松戸歯学部卒業、同大学口腔診断学(現:歯科総合診療学)講座入局。付属病院勤務、副院長を経て2024年から現職。父の急逝で残された家業の工場と従業員を守るため、事業に携わった経験もあり、幅広い視野が現在の経営に生きているという。就任前には、診療の傍ら他大学で夜間に病院経営を学んだ。初診患者への対応と診療、顎関節症、口腔顔面痛に伴う歯原性歯痛、非歯原性歯痛の鑑別診断などを得意とする。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント初診相談料/4180円、インプラント治療(1本)/60万円〜、予防処置メインテナンス(PMTC、歯周病検査)/7700円、マウスガード/1万2000円〜