独立行政法人国立病院機構 千葉医療センター
(千葉県 千葉市中央区)
古川 勝規 院長
最終更新日:2025/01/07
総合病院の安心感を軸に特色ある医療を展開
地域医療の中核を成す国立病院として、住民の信頼に応える「千葉医療センター」。広々とした駐車場には多くの車が止まり、正面玄関に近いバス停には駅と病院をつなぐ市営バスが頻繁に停車して多くの患者を運んでくる。近隣に住む人々にとって、同院がかけがえのない存在であることがわかる光景だ。総合病院ならではの包括的で質の高さにこだわった医療をベースに、スペシャリストたちが各診療科をけん引する体制で、難度の高い症例や複数の疾患を持つ高齢者、合併症などにも迅速に対応する。「スタッフが今以上にリスペクトし合い、支え合える病院をつくりたい」と話す古川勝規先生に、同院の強みや展望について聞いた。(取材日2024年12月5日)
まずは、病院の成り立ちをお聞かせください。
当院は、1908年に千葉衛戍病院として創設された病院です。千葉陸軍病院、国立千葉病院と名称を変えながら歩みを進め、2004年4月の独立行政法人移行に伴い国立病院機構千葉医療センターとなりました。幅広い診療科がそろう急性期病院であり、総合的に診療を行える機能を生かして精力的に各領域の治療に取り組んでいます。地域を支える急性期病院の使命として、救急の患者さんも可能な限り受け入れてきました。伝統的に千葉大学医学部と関係が深く、各科に専門性の高い医師が在籍している点も特徴ですね。私も千葉大学の臓器制御外科(旧・第一外科)で17年間勤務し、准教授を経て2022年に統括診療部長として当院に着任しました。
ご専門の肝胆膵を含む消化器分野は、病院の強みの一つですね。
消化器分野は、肝胆膵はもちろん食道、胃、大腸といった領域にスペシャリストが在籍しており、ほぼすべての消化器疾患に対応できます。内科と外科の連携がよく取れており、食道・胃・十二指腸、大腸、肝胆膵疾患に対して一貫した診断・治療ができるのも特徴ですね。治療においても、外科的治療と内科的治療のどちらが患者さんにとって適切かを迅速に判断して実行することが可能です。ただ、私が専門とする肝胆膵外科で扱う膵臓がんや胆管がんは予後があまり良くないことで知られ、手術のみが根治を期待できる治療法です。高難度の症例については私自身が手術室に立って執刀するほか、優れた後進の医師たちが執刀する際は第一助手としてサポートしています。患者さんには安心して手術を受けていただきたいですね。
他の特色ある診療科についても、ぜひ教えてください。
消化器分野と同じように、呼吸器も内科・外科の密接な連携で適切な治療を行うことができる分野です。年間死亡者数が特に多い肺がんについては、呼吸器内科・呼吸器外科が一つのチームとなり、他診療科の協力も仰ぎつつ先進の治療を実施しています。呼吸器内科は常勤医が多いので、肺気腫や間質性肺炎、肺血管疾患、気管支喘息、肺気腫、アレルギー性肺疾患といった幅広い疾患を広く診ることができるのもアドバンテージですね。また、日本脳神経外科学会脳神経外科専門医が3人体制で診療する脳神経外科も、当院をけん引する領域の一つです。循環器科、消化器科の領域と並んで数多くの救急患者を受け入れており、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血をはじめ、頭部外傷や脳腫瘍の手術実績が豊富です。血管の形状や血流動態を把握できる血管造影装置も導入しており、精密な診断を行っています。
総合病院の産婦人科として、お産のニーズも多いと聞きました。
そうですね。産科病棟では、妊娠期から分娩・産褥期までをサポートします。多数の診療科がそろっており、妊娠中に起こり得るさまざまな合併症や、不測の事態に速やかに対応することができるため、「安心できる環境でお産がしたい」「万一のリスクに備えたい」という妊婦さんに選んでいただけているようです。産前はお母さんとパートナーを対象にした親身な両親学級、産後は助産師による手厚い育児指導を行い、「自分らしいお産」「自分らしい子育て」に自信を持てるようスタッフが一人ひとりに並走してくれています。最近では、プロのカメラマンが撮影する無料のニューボーンフォトのプレゼントや、看護部が中心となって運用してくれているSNSも特徴です。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
当院は116年の歴史を持つ病院ですが、その歴史にあぐらをかくことなく、患者さんに寄り添った医療、地域に求められる医療を提供し続けることが重要だと考えます。地域がん診療連携拠点病院として包括的ながん診療を行うこともその一つです。手術だけでなく、抗がん剤治療、放射線治療、緩和ケアまで対応できる体制を生かして、がんと生きる人がその人らしい人生を謳歌できるよう支えていきたいですね。まずは、医師とコメディカルスタッフがそれぞれの仕事をリスペクトし合う姿勢をさらに強化し、一枚岩となって患者さんにより親しみをもってもらえる病院をめざしたいと思います。機器の更新や、ロボット支援手術の導入といった設備的な進化と併せて、スタッフ一人ひとりの技術やホスピタリティーの進化も推進してまいりますので、当院の今後にどうぞご期待ください。
古川 勝規 院長
1990年金沢大学医学部卒業。千葉大学臓器制御外科(旧・第一外科) にて17年間勤務し、准教授を務める。2022年4月、統括診療部長として千葉医療センターに着任。2024年10月より現職。専門は肝臓・胆道・膵臓外科。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。院長職の傍ら、肝胆膵のエキスパートとして現場もけん引する。休日はのんびり庭いじりを楽しむ一面も。