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医療法人社団清風会 富士見台病院

(神奈川県 平塚市)

遠藤 詩郎 院長

最終更新日:2023/11/27

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地域に必要な精神科の急性期医療を実現する

平塚市に数少ない精神科の専門病院で、1967年から地域に根差した診療を続けている「富士見台病院」。2020年に就任した遠藤詩郎院長は「現在の精神科医療のスタンダードを実践し、患者さんの社会復帰までをゴールとする病院」と同院のめざす姿を語る。「適切な治療によって、以前のような長期入院は少なくなりました。ご家族にも安心して患者さんを受け入れていただけるよう、必要に応じて退院前訪問や外泊など退院後も安定した生活が続けられるようなご提案も行っています」。また、薬が効きにくい統合失調症(治療抵抗性統合失調症)に有用とされる治療薬・クロザピン、数週間の効果持続が見込める持効性注射なども導入。逆に患者の希望があれば飲まなくても治療可能な方法を検討するなど、一人ひとりに適した治療の選択肢を増やしている。「早く治療を始めたほうが治療期間も短く、社会復帰が早いといわれています。お悩みのことがあれば遠慮なくご相談を」という遠藤院長に同院の特徴や今後の展望を聞いた。(取材日2023年10月26日)

精神科の専門病院としての特徴をご紹介ください。

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現在の精神科の治療は長期入院中心ではなく、患者さんが地域で暮らしながら療養し、積極的に社会参加するという形に移行しています。こうした国の方針に沿って、当院でも私が院長に就任して以降は、適切なタイミングで患者さんに退院していただける体制づくりを進めてきました。数年にわたって入院が続く方を減らし、数ヵ月で退院いただける体制をめざしています。退院後の地域での生活をサポートするため、入院中に患者さんとご家族との面談を行うほか、ソーシャルワーカーによる支援も充実させている点は当院の特徴の一つでしょう。一方で、社会生活を営まれていた方の中で、症状の急変などで精神科での入院治療が必要になる場合もあります。そのような精神科の急性期治療にも当院は力を入れ、通常の外来診療に加えて、神奈川県の精神科救急輪番病院として当番日には夜間対応するなど、地域に必要な精神科の医療を提供しています。

精神科の急性期ではどのような病状を診るのでしょうか?

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統合失調症が急変して幻覚や妄想に支配されて非常に興奮している状態、うつ病などで自傷や自死の傾向が強い方のほか、高齢の方を中心に認知症の周辺症状、例えば幻覚、妄想、徘徊などが強まり、ご自宅や施設での対応が難しくなった方などが主な対象です。受診の経緯としては、ご家族や施設の方と一緒に来院されるケース、自傷などで入院した病院から退院時に当院を紹介されるケース、救急車で搬送されたり外来の通院中に悪化したりするケースがあります。また、当院の医師が平塚市の保健福祉事務所で精神保健福祉の相談に参加しており、そこから受診につながる場合も。精神科の治療は必要なときに早く入院して集中的に治療して回復をめざし、病状が悪化した時期をなるべく短くすることが大切です。幻覚や妄想が長期間続くと脳の働きにも影響して治療期間が長引く原因になりますから、お困りごとがあれば早めに相談いただくようお勧めします。

高い効果が期待できる治療法も増えていると聞きました。

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ええ、特に薬による治療の進化はめざましく、例えば当院ではこれまでの薬が効きにくい統合失調症である治療抵抗性統合失調症に対し、有用性を示すクロザピンという治療薬も導入しています。治療を続けても症状の改善が見られない方、幻覚・妄想に悩まされる方などは、この薬での治療が適しているかもしれません。クロザピンによる治療は最初に入院が必要ですが、その後は薬を飲みながら外来診療に移行するのが一般的です。このほか統合失調症の第2世代の治療薬として、数週間にわたり効き目の持続が期待できる持効性注射剤も当院では使用しています。これは薬の飲み忘れによる症状の悪化を防ぐことが望め、症状の安定につながりやすい点がメリット。精神科の治療は薬の種類や量が多過ぎて副作用などが起きるポリファーマシーが問題でしたが、当院では適切な薬を適切な量で使い、短期間に治療を終えることをめざしています。

退院時や退院後のサポート体制を教えてください。

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精神科の治療では、以前は寛解という病気の症状が治まった状態を目標にしていました。しかし現在は症状がある程度落ち着き、家庭や仕事などに戻る社会復帰までがゴールと考えられています。当院でも患者さんに安心して社会に戻っていただくために、退院前には看護師、ソーシャルワーカー、作業療法士が必要に応じてご自宅や施設を訪問。周囲との人間関係、建物内および周辺の環境など、症状を悪化させる要因の有無を確認し、改善が必要ならご家庭や施設と相談します。さらに患者さんとご家族との面談、お試し外泊と、しっかりと準備をして退院の日を迎えていただきます。集団で行う軽いスポーツや各種の趣味、散歩や買い物・料理といった日常生活の動作をトレーニングする作業療法も、自宅での生活や社会参加につながる治療の一つです。また、ソーシャルワーカーは患者さんが利用できる社会福祉制度を積極的に提案し、退院後の経済的支援にも貢献しています。

地域の患者さんへの思いや今後の展望をお聞かせください。

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私自身は院長室に長くいるより患者さんと接していたいタイプで、受診希望の電話を受けたソーシャルワーカーから連絡があれば、すぐに担当を引き受けることが多いですね(笑)。初診の予約もあまりお待たせしないと思います。ここ数年で当院は精神科医療のスタンダードを実践する病院になり、検査機器や機械浴の設備、患者さんが散歩を楽しめる庭の整備など、療養環境の充実も図ってきました。今後はより急性期医療を強化するほか、認知症の入院治療、思春期の患者さんへの対応も検討し、地域が求める医療に向けて着実に歩を進めています。医療機関同士の連携も強く、症状や身体状況、お住まいの場所などを考慮して紹介し合うことも増え、患者さんやご家族にとって安心して治療が受けられる病院になっていると思います。精神科の受診は躊躇されるかもしれませんが、現在は短期入院の治療が中心です。心の問題や認知症で悩まれている方は遠慮なくご相談ください。

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遠藤 詩郎 院長

1992年岡山大学医学部卒業。大学病院や各地の市中病院などの精神科で診療し、2016年富士見台病院に入職。急性期の担当医師として活躍した後、2020年に同院院長および理事長に就任。日本精神神経学会精神科専門医。統合失調症の治療、認知症の治療などにも詳しい。

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