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三浦市立病院

(神奈川県 三浦市)

小澤 幸弘 総病院長

最終更新日:2020/09/08

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三浦市民に必要な医療を提供し続ける

長い歴史と豊かな自然、さまざまな観光資源に恵まれた三浦半島。その南端に位置する三浦市は漁業や農業で栄え、横浜・東京方面へのベッドタウンとしても発展したが、近年は人口減など社会構造の変化が始まっている。そうした移りゆく同市の情勢に寄り添い、地域の医療を70年近く支えてきたのが「三浦市立病院」だ。同院は内科・外科を中心に幅広い診療科を持ち、総合的な診療を行う。小澤幸弘総病院長は「三浦市の皆さんが安心して暮らせるよう、求められる医療を提供し続けるのが当院の使命」と話す。医療界の大きな制度変更により、一時は深刻な医師不足に陥ったが、同院では「地域の身近な病院として持つべき機能」と「専門病院と連携する機能」を明確化。24時間対応の救急医療をはじめ、緊急に治療が必要な患者を診る急性期機能を維持しながら、住民の健康の維持・増進を図り、在宅療養の患者支援も行うなど、これから地域で必要になる医療も展開している。「三浦ならではの地域医療を確立し、健康で長生きできる地域づくりをめざしたい」と熱く語る小澤総病院長に、その取り組みを詳しく聞いた。
(取材日2020年8月18日)

病院の特色や地域での位置づけを教えてください。

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三浦市は三浦半島南端にある人口4万2000人ほどの都市で、三方を海に囲まれ、北部は横須賀市と接しています。車などで移動が容易なら三浦市以外の病院も受診できるかもしれませんが、それが難しい方が大勢いらっしゃいます。そうした皆さんが近くで必要な治療が受けられるよう、当院は内科、外科のほか、ひと通りの診療科を備え、地域の中核病院の役割を担っています。私は1996年に当院の外科部長に就任して以来、「この病院がなければ、地域の皆さんが安心して暮らせない」と常に感じ、自身の専門である消化器がんはもちろん、患者さんの求めに応じて外科全般を幅広く診てきました。その後、病院長になり、病院事業管理者も兼務する総病院長となって、その思いはますます強くなりました。現在は「三浦ならでは」の地域医療の確立を理念とし、さまざまな医療機関や福祉施設、さらに行政と連携して、健康で長生きできる地域づくりに取り組んでいます。

特にどのような分野に力を入れていますか?

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病床数136床と小規模な当院では、地域に必要な医療をすべて院内でまかなうことは困難です。このため「地域の身近な病院として持つべき機能」と「専門病院と連携する機能」を明確に分け、持つべき機能の充実を優先してきました。具体的には救急に24時間365日対応し、内科・外科・整形外科で緊急治療を行う急性期機能を提供。近隣のクリニックや介護施設からのご紹介にも対応します。このほか消化器がんの早期発見と治療、リハビリテーションによる病気・ケガからの回復支援、皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科などの診療と、この地域に多い症状を中心に診療科をそろえています。一方、より高度な治療が必要な患者さんは、主に横須賀市の3つの病院への紹介や移送を行い、緊急の場合は当院のヘリポートからヘリコプターで横浜市の横浜市立大学附属市民総合医療センターに運ぶことも可能です。

地域との連携について詳しく教えてください。

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近隣のクリニックや介護施設から、詳しい検査や入院治療が必要な患者さんを紹介いただき、地域の中で治療が終わることをめざしています。また三浦市にお住まいの方が他の病院で治療を受けた後、ご自宅に戻れるよう回復を支援する役割も担います。こうした連携を強化するため、地域の医療機関や介護・福祉施設のメーリングリストを作成し公開講座を開催して、地域の中で「顔の見える関係」をつくってきました。さらに医療連携の窓口として開設した地域医療科では、患者さんやご家族からの医療相談にも応えています。同科では在宅の患者さんを診る訪問診療の業務を担うほか、在宅医療を中心としたクリニックと連携し、容体急変時の入院対応などの支援にも力を入れています。当院には最長60日まで入院可能な地域包括ケア病床が40床あり、理学療法士・作業療法士による回復支援、在宅患者さんの一時入院など幅広く対応できるのも特色です。

地域の高齢化にはどのように対応されていますか?

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65歳以上の人口割合を表す高齢化率は、三浦市では約35%と高く、病気になって治療するだけでなく、健康を維持する予防医学、健康管理が重要になっています。ただ、市内はベッドタウンから漁業・農業が盛んな地域まで多様で、「この年齢ならこの対策」といった一律の対応はできません。そこで当院ではエックス線で骨密度を測定するDEXA法の検査装置を導入し、健診結果なども参考に、筋力トレーニングの指導、骨粗しょう症の進行を抑える薬の処方、転倒を防止する室内環境の整備など、一人ひとりに合った対応で寝たきりを減らすよう取り組んでいます。また、リハビリテーションでも骨密度を管理し、その方に適した回復支援を行います。さらに脳の状態を撮影したMRI画像から海馬の萎縮を読み取り、アルツハイマー型認知症の早期発見を支援するシステムを使用し、認知症の方への早期対応に努めています。

これからの地域医療での目標をお聞かせください。

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以前の当院は、病気になった方に来ていただく「受け身の医療提供」が主流でした。しかし現在は、市民の皆さんが「病気になりにくく、健康を維持・増進する」活動も重視し、積極的に地域と関わっています。これまでも各地域で出張健康講座という講演会を行ってきましたが、今後は希望される方に食生活のアドバイスも行うなど個別対応を進めたいと考えています。例えば前日の塩分摂取量を検査で数値化し、漁業・農業に従事する方に多い塩味の強い食事をコントロールできれば、生活習慣病、心筋梗塞、脳梗塞などを減らし、高齢になっても地域の産業を盛り立てていただくことも可能でしょう。また、三浦市では2019年から中学2年生に無料でピロリ菌検査を行い、当院が実施していますが、早期のピロリ菌の除菌で将来の胃がん発症率が下がることにも期待しています。地域全体の取り組みを通じて、「健康で長生きできる三浦市」をめざしたいですね。

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小澤 幸弘 総病院長

1981年新潟大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院で初期研修後、同大学医学部第一外科に入局、神奈川県内の病院を中心に消化器がんの治療に従事。神奈川県立がんセンターでは食道がんを専門とし、多数の症例を経験。1994年から横浜市立大学医学部救命救急センター(救急医学教室)講師を務め、1996年に三浦市立病院外科医長に就任。診療部長、副院長、病院長を歴任し、2010年より現職。

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